ブログ:「心の治癒力」物語⑥~医者の問題点

(前回の続き)
代替療法を用いて、
クライエントの症状の改善に努めている
療法家やセラピストの人たちは、
代替療法そのものの効果により
症状が改善したと勘違いしている人が
少なくありません。

しかし実際には、
代替療法そのものの効果よりも、
療法家とクライエントのつながり、
つまり安心感や信頼感、期待感といった
「心の治癒力」の要因の方が、
ずっと症状の改善に寄与していることは、
前回述べた通りです。

実は、このことは医者の治療においても
全く同じことが言えます。

多くの医者は、
薬や手術といった治療により
病気がよくなっていると思っています。

しかし実際は、
過去のブログでも何度も書いているように
薬や手術そのものによる効果は、
限定的なものです。

交通事故による腹腔内出血や、
外科的に治癒切除可能ながんなど、
一部の救急や外科疾患に関しては、
西洋医学の治療による貢献度は
かなり大きいと思われます。

また肺炎をはじめとする感染症に対する
抗菌剤(抗生剤)の役割も、
それなりにあると思われます。

ただし、症状や病気、けがを治すのは
最終的には自然治癒力であり、
これなくしては、
どんな病気も治すことはできません。

その意味では、
薬や手術はあくまでも、
自然治癒力が最大限に発揮できるようになるための
手助けや援助であり、
病気の改善や治癒は最終的には
自然治癒力が十分に働いてくれるか否かに
かかっていると言っても過言ではありません。

さらに、一般的な病気の場合、
「心の治癒力」の働きが
自然治癒力を高めているという事実を
無視するわけにはいきません。

このことは、
術前の麻酔科医の説明や
術後の医者やナースのかかわり方いかんで、
鎮痛剤の使用量や必要入院日数に
有意な違いが生じることからもわかります。

つまり、安心感を与えるような説明や、
信頼感や期待感、希望を
もたらすようなかかわりも、
症状の軽減や病気の治癒に
大きな影響を及ぼしているのです。

さらに、内服や注射、手術という行為が
引き金となり「心の治癒力」が働き、
それが病気や症状の改善につながっていることも
様々な研究で知られています。

最も有名なのがプラシーボ反応です。
これは、全く薬効のない乳糖を飲んでも、
痛みなどの症状が軽減する現象のことです。

これなどは、薬(実際は乳糖)を飲んだという
安心感や期待感が症状を軽減させていると
推測されていますが、
西洋医学でも未だにはっきりとしたメカニズムは
解明はされていません。

また、プラシーボ手術というのもあります。
有名なところでは、
変形性膝関節症やメニエル病(めまい)、
狭心症、パーキンソン病の手術です。

例えば、実際の変形性膝関節症の手術の場合は、
膝のところを切開し、そこから関節鏡を入れ、
変形した軟骨などの処理等をします。

しかし、プラシーボ手術の場合は、
切開を加えるだけで、
関節鏡は入れた「ふり」だけをして、
患者さんにはあたかも手術をしたかのように
思い込ませるだけの手術?です。
(あくまで研究の一環としてやります)

それでも、実際の関節鏡で手術をした人と
同じくらい膝の痛みが改善します。

このような研究から、
「手術という行為」により
症状が改善することへの期待感が大いに高まり、
それが実際に症状の改善を
もたらす可能性が示唆されています。

これらのことからもわかるように、
「心の治癒力」は症状や病気の改善に
大きく関与しているのです。

もっとも、
薬効が認められている実薬でも
同様のことが起こります。

例えば、ある抗うつ剤を服用したら
70%の効果があったとしましょう。
一方、プラシーボを飲んだ場合は
50%の効果にとどまったとしましょう。
(多くは、このような結果になります)

この場合、単純に考えるのであれば、
実薬の70%の効果のうち、
50%分はプラシーボによる効果、
つまり薬が効くかもしれないという期待感とった
「心の治癒力」による効果です。

つまり、実薬そのものの効果は、
差し引き分の20%だということになります。

しかし実際には、
実薬と「心の治癒力」の効果を
区別して考えることはできず、
その両者の働きが相まった結果として
効果が表れたとしか言えないのです。

ただし、どんな症状であれ、
プラシーボで30~60%程度の効果があることから、
実薬を服用したとしても、
かなりの部分、「心の治癒力」により、
症状の改善がもとらされていると
言えるのではないでしょうか。

また、患者さんの
主治医の雰囲気や態度、コミュニケーション、
説明のわかりやすさといったものが、
「心の治癒力」を高める大きな要因として
関与していることは、
代替療法家や心理療法家と同じです。

要するに、医者の治療であっても、
薬や手術そのものの効果に勝るとも劣らず、
「心の治癒力」の働きが自然治癒力を高め、
それが症状や病気の改善に、
大きく貢献しているということです。

決して、薬や手術だけの効果ではなく、
こういった「心の治癒力」の働きが
大きな影響を及ぼしているということを、
十分に認識したうえで、
治療にあたってもらいたいものです。
(続く)

    コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

    CAPTCHA


    このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください