ブログ:「心の治癒力」物語③~心が大切と言うが…

「心の治癒力」の視点から、
私がしている治療を振り返ってみると、
新たな視点が見えてきました。

例えば患者さんが私のところを訪れ、
いろいろな話をしたところ、
ホッとして楽になったとしましょう。

一般的には、私とのコミュニケーションで
患者さんが安心したと理解されがちですが、
私はそうは考えませんでした。

患者さんは、
私とのコミュニケーションが引き金となり、
心の治癒力、つまり、
安心感や信頼感を持つ力を
十分に発揮することができたので、
自分の心が穏やかなったと理解したのです。

この理解の違いはとても重要です。
なぜならば、医者や治療者が治すという視点と
患者さんが持ってる治癒力を発揮することで
治るという視点では、
結果は同じでも、
治療者のかかわり方が全く違ってくるからです。

西洋医学の考え方は、
言うまでもなく機械論が中心であり、
そのため「医者が患者を治す」という
構造になっています。

その前提には、
人間は精巧にできた機械であり、
病気は機械の故障なのだから、
医者が薬や手術という道具を使って、
修理しなければ病気は治らないというイメージが
刷り込まれています。

だからこそ西洋医学では、
自己治癒力などという言葉は
通常は使われないのです。

一方、西洋医学以外の治療法、
つまり代替療法を治療や癒しの中心とした
治療家やセラピストの人たちはどうでしょうか。

彼ら彼女らは、
自然治癒力の存在を大切にし、
それを高めることを治療の中心に据えています。

しかし、ここにもまた
同様の問題が存在しています。
それは、様々な療法により
自然治癒力を高めて
病気や症状を治すという考え方は、
結局は西洋医学の機械論の考え方と
同じになってしまうのです。

つまり、患者さんの持っている
自然治癒力(身体の治癒力)を高めるために
様々な手技や治療を施したり、
サプリメントを飲んでもらうというのは、
医者が薬や手術で体の修理をして
病気を治すという考え方と
構造的には同じなのです。

せっかく、自然治癒力の存在を
大切にしているのに
なぜこのようなことが
起こってしまうのでしょうか。

それは心の視点が
あまり重視されていないからです。
つまり、「心の治癒力」の視点が
欠けているからだと私は思うのです。

もっとも、治療家や西洋医学の医者も
「心は大切だ」と言います。

しかし、心の大切さを頭では理解しているものの、
それを臨床や実際の治療に取り入れ
うまく落とし込んで治療に臨んでいる治療家は
そう多くはないように思います。

例えば、以下のようなことはよく言われます。
「心の持ち方が大切です」
「ポジティブな思いが病気を改善します」
「できるだけストレスをためないようにしましょう」

このようなことを患者さんに
しっかりと伝えることで、
自分は心の大切さを十分に意識して
治療に取り組んでいると言うのであれば、
それは大きな誤解です。

なぜならば、患者さんに対して
「心の持ち方が大切です」などと言っても、
それで患者さんの心の持ち方や考え方が
変わるわけではないからです。

このような言葉で、
いかに心の持ち方が大切かということを
教えたとしても、
たいていの場合は、
「言っていることはわかるけど、
実際どうしていいのがわからない」というのが
本音だと思います。

結局、心は大切だということを
「言った」「教えた」というだけでは、
何ら治療には反映されず、
結局、心に関しては何もしていないのと
同じことになってしまうのです。

私がここで言っている心の大切さとは、
患者さんの心の状態や態度が自ずと変わるような
かかわりやコミュニケーションを意識しつつ、
治療を行っているのかということです。

もしそれを意識しながら治療しているのであれば、
これは「心の治癒力」を大切にした
かかわりをしているということができます。

しかし実際は、
患者さんの心に変化をもたらすことを意識しながら
治療をするというのは
そうたやすいことではありません。
(続く)

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