今回は映画「三島由紀夫VS東大全共闘」の
流れや内容にも触れながら
私なりに感じたことや考えたことを
書きたいと思います。

この頃の三島由紀夫は、
川端康成とノーベル文学賞を争うほどの
世界的にも有名な文豪であると同時に、
剣道を10年もの間続け、
また自衛隊に何度も体験入隊をし、
身体を鍛え上げた肉体派でもあるという
文武両道のスーパースターでした。

また当時は、社会制度に反逆した学生たちが
全世界で革命活動を活発化させており、
その流れで日本も学生運動が
激化していた時代でした。

この討論会が行われたのは昭和44年5月でしたが、
その年の1月には全共闘の学生が
東大の安田講堂を占拠し、
機動隊が出動するという事件も起きています。
ちなみにこの年の東大入試は中止となりました。

東大全共闘は旧体制変革のためには
暴力も辞さない左翼集団であり、
かたや三島は
右翼的天皇主義者として知られており、
両者の思想は真っ向から対立していました。

学生たちは、
「三島を論破し立ち往生させ、
舞台の上で切腹させる」と息巻いていました。

そんな緊張感みなぎる危険極まりない敵地に、
警察が申し出た警護も断り、
単身で乗り込んでいったのです。

討論会は先ず、
三島の10分程の短いスピーチで幕を開けました。

誰もが三島は、
自分の思想や行動の正当性を主張し、
全共闘の考えの問題点を指摘してくると思いきや、
実際はそうではありませんでした。

三島は自分と全共闘の共通項について述べ始め、
その点に関して彼らを褒め称えたのでした。

つまり、暴力と思想を結び付けている点や、
反知性主義である点は自分と同じであり、
全共闘が知識人の自惚れの鼻を
叩き割った功績を称賛したのでした。

このあたりは、
三島の議論の進め方のうまさを
感じずにはいられません。

この最初のスピーチは、
喧嘩腰の議論をふっかけ、
三島を完膚なきまでに打ち負かそうと目論んでいた
全共闘のメンバーの出鼻をくじいた形に
なったのではないでしょうか。

その後、全共闘のメンバーとの討論は、
自己にとっての他者をどうとらえるのか、
時間と空間に対する認識の違いがもたらす
学生運動の意味など、
かなり深い議論が続きます。

この映画を三回も見たにもかかわらず、
このあたりの議論は未だにピンときません。

特に当時から演劇に打ち込んでいた
芥正彦氏(赤ちゃんを抱いて登場した人)は、
芸術至上主義者ならではの感性の持ち主であり、
そのためか話の内容が概念的かつ抽象的で、
言っていることがよく理解できません。

そんな難解な内容の話であるにもかかわらず、
三島はじっくり聴き、理解し、受け止め、
それに対して、誰もがわかる言葉で
現実に即した例えを用いながら、
ユーモアも交えて意見を返しているのです。

このやり取りを見て、
改めて三島の理解力の高さと、
自分の意見をわかりやすく人に伝える能力に
感服しました。

さらに、芥氏は三島の発言を遮って、
反論をする場面も何度かありましたが、
その際も三島は、さっと自分のマイクを差し出し、
相手に話をさせ、
それに対してもしっかりと意見を言うのです。
まさに神対応と言うべき姿勢です。

その後、討論は天皇論に及びます。
そこで特に印象に残っているのが、
内田樹氏が言っていた、三島にとっての天皇とは
「無意識的エネルギーの源泉」というコメントです。

実は、映画だけでは十分に理解できなかったので、
内田樹の著書、
「街場の天皇論」(東洋経済)を読んで、
そういう意味だったのかと、
今はなんとなくわかった気になっていますが、
ここでは詳細は省略します。

最後は、三島の言葉で討論会は終了しますが、
これがまたインパクトがありました。
「私は諸君の熱情は信じます、これだけは信じます」
と言ったのです。

そして「他のものは一切信じないとしても、
これだけは信じるということは
分かっていただきたい」という言葉で
話を締めくくっています。

三島は、この討論会で、
相手を非難したり否定したりすることは
一切していません。

あくまでも、相手の主張に敬意を払いつつ
自分の考えも真っすぐに伝えながら
言葉と言葉を真摯にぶつけ合って
討論しているのです。

おまけに、導入のスピーチと
最後の締めの言葉では、
全共闘の人たちに賛辞を贈っているのです。

この場で、こんなことが言えるというのが
すごいと思いました。
全共闘のメンバーの挑発に乗ることなく、
最後まで自分軸をしっかり持っていました。

また、当時の学生の熱量もすごいと思いました。
あそこまで真剣に討論をしようと思う人が、
現代の学生にはどれくらいいるでしょうか。

こういう映画を見ると、
私の心はいつもざわつくのです。

いつもはマイペースでOKと言いながらも、
本当にそれでいいの?という思いが
心のどこかでくすぶっているのだと思います。

まあ、それはそうと、
結構、感じるものがある映画ですので、
是非一度、「三島由紀夫VS東大全共闘」を
見てみてください。