人は誰でも自分が属しているグループは
他のグループとは異なり、
いろいろな面で優れているところがあると感じ、
無意識にひいき、優遇するクセがあります。
これを「内集団バイアス」と言います。

例えば学校では、
自分のクラスは個性豊かな人がそろっているが、
隣のクラスは平凡な人が多いと
感じてしまうような傾向のことです。

これは、自分のクラスのメンバーは
よく知っているので、
個性が豊かであることがわかるという
意味ではありません。

実際、よく見知った仲間同士を
ランダムに二つのグループに分けても、
自分の属するグループの方が
個性豊かだと感じてしまうことが
多くの研究でわかっています。

つまり、人は無意識のうちに
自分が属している集団をひいきし、
高く評価するクセがあるのです。

これは国や地域、文化の違いでも
ごく普通に見られます。

例えば関東と関西ではお互いが
自分らの方を好意的に評価しますし、
同じ関西でも、京都と大阪では
お互いが自分らの方がよいと
感じていると思います。

内集団バイアスは、
自分が直接属していなくても、
その集団と関係やつながりがあると
感じているだけでも機能します。

高校野球で自分の出身校が甲子園に出れば
当然応援しますし、
出身校でなくても、
自分が今住んでいる県の代表校を
応援したくなるものです。

もちろんこれが、
オリンピックなどの国際試合になれば、
東京の人も京都の人も
同じ日本を応援するようになります。

ですから、自分がどの集団に属していると
認識するかにより、
相手への対応や態度が変わるのです。

このことに関して、
新日本プロレスの社長兼CEOである
ハロルド・ジョージ・メイ氏は
著書「百戦錬磨」(時事通信社)で
面白いことを書いています。

メイ社長はオランダ生まれで、
8歳から13歳までは日本で育ち、
その後、中学、高校はインドネシアで、
大学時代はアメリカで過ごしました。

日本が大好きで、社会人になってからは
主に日本の会社で働いているため、
メイ社長の母国語は
英語と日本語とオランダ語の三つだと言います。

面白いのは、
日本語で話をしているときは、
調和を考え婉曲的な表現になり、
謙虚な態度で接するというのです。

ところが、英語を話しているときは
もう少し押しが強く自信家で
ダイレクトでドライになり、
オランダ語を話しているときは
その中間のような感じになるというのです。

また電話で商談をして会話を終えるとき、
日本語なら「よろしくお願いします」と言いながら
見えない相手に笑顔でお辞儀をしていますが、
英語での電話の場合は、
お辞儀をすることはありません。

このように、自分が今、
何人として振る舞っているのか、
つまり日本人なのかアメリカ人なのか
オランダ人なのかにより、
考え方や態度が変わるのです。

内集団バイアスが、
その人にいかに大きな影響を及ぼすということが、
このことからもよくわかります。

また、内集団バイアスには、
自分ら以外の集団は
大したことはないとか劣っているという評価を
下す傾向があるという側面もあります。

巨人ファンと阪神ファンがそうですし、
マクドナルドとロッテイリアやモスバーガー、
マッキントッシュとウインドウズなど、
自分が好きな方は高く評価し、
一方、相手の方は低く見積もる傾向にあります。

外部の人間が犯した過ちは
遠慮なく責めたてるのに、
内部の人間が犯した過ちは大目に見たり、
なんとかかばおうとするのも同じ心理です。

この内集団バイアスがエスカレートすると、
ときに大きな問題を起こすことになります。

ナチスドイツのユダヤ人迫害や
オウム真理教の地下鉄サリン事件などは、
自分らだけが優れており、
それ以外はダメだという
極端な内集団バイアスによる行動の結果です。

ここまで極端な行動でなくても、
実はわれわれの日常でも
同様のことがごく普通に行われています。

その代表例が差別です。
人種差別や部落問題をはじめ、
男尊女卑、障碍者差別、
最近ではLGBT(性的マイノリティ)など、
ありとあらゆるところで人は無意識のうちに
差別をしています。

自分らには差別をしているという意識は
ないかもしれませんが、
無意識レベルでは多くの人が
差別をしているということが、
多くの研究でわかっています。

私たちは頭では、
誰にでも平等でなくてはいけないと
思っていますが、
無意識がそれを許してくれません。
それが現実なのです。

その事実に気づくためにも、
意見の対立や相手を劣っていると感じた場合、
自分は内集団バイアスに陥っていないか、
一度、振り返ってみてはいかがでしょうか。