ブログ:無意識を活性化する

前回は、
人の性格や態度が原因で問題が生じている場合、
その原因を探しても、
結局は考え方を変えろとか、
もう少し優しくなりなさいといった、
有害援助となるアドバイスをする羽目になるため
原因探しは全く意味がないという話をしました。

では、心が原因となるような問題の場合、
どのように対応したらよいのでしょうか。

それは原因探しとは正反対の対応です。
つまり、問題が起きているにもかかわらず、
「うまくできていること」や
「うまくできそうなこと」に注目するのです。

この際、重要になってくるのが「質問力」です。
実は、どのような質問をするかによって、
人は目を向ける方向が全く異なってきます。

例えば、普通の会話がしたいのに、
喧嘩ばかりしてしまう夫婦がいたならば、
「なぜ喧嘩になってしまうのですか」と
質問するのと、
「どんな時には普通の会話ができましたか」と
質問するのとでは、
当然のことながら、答えは正反対になります。

前者は、原因探しを前提とした質問なので、
これを進めていっても
夫婦の悪い点やネガティブなことばかりを
聞き出すことになり、
最後は有害援助をして
相手を落ち込ませるという結果になります。

一方、後者の質問は
「孫の話をしているときはましです」
「外で一緒にお酒を飲むときは大丈夫です」
といった、肯定的な返事が返ってきます。

人は、ネガティブなことを語るよりも、
現実のポジティブなことを語っているときの方が
希望や可能性を感じるのです。

喧嘩ばかりしている夫婦の場合、
相手の悪い点や問題点で
頭の中がいっぱいになっています。

そのため、日常の様々な刺激で、
不快になったり、カチンときたりと、
ネガティブな思いが容易に出てきやすい状態に
なっています。

逆に、ポジティブなこと、
例えば、孫の話で盛り上がったといったことは、
例外的な出来事としてスルーされてしまうため、
あまり意識に上がってくることはありません。

人は自分の都合の良いように考える生き物です。
気が合わない夫婦であれば、
相手のネガティブな部分にはすぐに目が向き、
ポジティブな部分なスルーしてしまうという、
そんな反応を無意識に取ってしまうのです。

これは、好きな人であれば、
相手の良い面ばかりが見えてしまい、
ちょっと気になる悪い点はスルーされてしまうのと
同じことです。

だからこそ「質問力」が重要になってくるのです。
人は第三者から質問されると、
それには答えないといけないと
思ってしまう心の癖があります。

だからこそ、
喧嘩ばかりしている夫婦だとしても
「どんな時には普通の会話ができましたか」と
質問されてしまうと、
そんなことってあったかなと思いながらも、
「その時のこと」を見つけるため
無意識に隠れているポジティブな経験を
探そうとしてしまうのです。

その結果、
「孫の話をしているとき」という出来事が
ふと思い出されたりするのです。

これが「気づき」であり、
無意識にある情報の意識化です。

それが言語化されること、
つまり、質問に答えて、
「孫の話をしているときですかねえ」と
言葉にして答えるという行為が、
無意識にあったポジティブな情報を
活性化させることになります。

活性化するとは、
日常生活の何気ない刺激に対して、
その情報が活用されやすくなるということです。

例えば、ふと、
「誰誰さんのところに子どもが生まれたんだって」
「つかまり立ちができるのもそろそろかなあ」
といったことをご主人に
つい話しかけたりしてしまうということです。

ところが、当の本人は
そのようなことをなぜご主人に話しかけたのか、
その理由には気づいていません。

たとえその理由をたずねられたとしても、
ふと思いついたからとか、
なんか知らないけど話したくなったから
といった答えしか返ってきません。

これが無意識の持っている問題解決力なのです。
孫の話をしているときは
夫婦で普通の会話ができるということを
無意識は知っているのです。

だからこそ、意識することなく、
ちょっとした日常の刺激に対して
「関連づけ」や「連想」、「感情反応」といった
無意識の働きにより、
そのようなポジティブな話を
ポロっとしてしまうのです。

問題解決とは、
このような日常のちょっとした
ポジティブな反応の積み重ねの結果なのです。

意識して何とか頑張ろうとか、
なんとか自分を変えようと思っても
そんなことはなかなかできるものではありません。

それよりも無意識が持っている力を
上手に使う方が、
ずっと効率よく問題解決に向かって
歩み始められるのです。

つまり、ここで言う「質問力」とは、
「心の治癒力」という無意識の畑に
種や水を撒く行為に他なりません。

あとは日常生活という環境刺激が
太陽の光や栄養となり、
どこかで芽を出しそれが育つのを待っていれば
それでよいのです。

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