前回はHIITについてお話しをしましたが、
今回は、他の興味深い運動についての情報を
いくつかお伝えしたいと思います。

まずは一般的な話からです。
10年前に「脳を鍛えるには運動しかない!」
(ジョン・J・レイティ著、NHK出版)
という名著が出版され話題になりました。

この本では、
運動は身体を鍛えるだけではなく、
脳の様々な機能を高めるとともに、
うつの改善や認知症の予防にもなることが、
多くの研究データを基に示されています。

さらに最近では、運動は、
身体に及ぼす効果よりも、
脳にもたらす効果の方が、
はるかに重要だとも言われるようになりました。

そのあたりのことが
コンパクトにまとめられているのが、
重森健太著の「走れば脳は強くなる」
(クロスメディア・パブリッシング)です。

われわれは、動かない毎日を送っていると
脳は徐々に退化していきます。
またパソコンやスマホの「画面」など、
代わり映えのないものばかりを見ていると
脳に多様な刺激が伝えられず、
使わない部分がどんどん萎縮していきます。

一方、普段から早歩きや
ランニングなどの運動をしている人は、
脳の萎縮が進まず、脳の老化を遅らせることが
実証されています。

これらの有酸素運動は、
BDNF(脳由来神経栄養因子)を増やし、
脳内で新たな神経細胞が生まれ、
毛細血管も増加するため、
脳内ネットワークを強化します。

それにより記憶力や集中力、発想力、
思考力、判断力が高まります。

もちろん、高血圧や糖尿病、骨粗鬆症といった
生活習慣病の予防になることは
言うまでもありません。

また、東京都健康長寿医療センター研究所の
靑栁幸利先生は、
65歳以上の住民5000人を17年間、
調査、解析した結果を発表し、
1日8000歩を歩き、
そのうちの20分を早歩きにすることが、
がんや生活習慣病の予防に
有効であることを突き止め
世界中から注目を集めました。

そのことについては
「あらゆる病気は歩くだけで治る!」(SB新書)
に詳しく書かれています。

靑柳先生が強調していたのは
運動は、量ではなく質ということです。
よく、毎日1万歩歩きましょうと言われますが、
これには根拠がないと言います。

さらに1万2000歩、40分の早歩きまでで、
病気の予防効果は頭打ちになり、
それ以上やっても疲れるだけとも
書いてありました。

また、運動生理学の専門家である
田中宏暁著の「ランニングする前に読む本」
(ブルーバックス)も興味深いものがありました。

この本では、スロージョギングを薦めています。
スロージョギングとは、
笑顔を保っておしゃべりできる上限のスピード、
つまり「にこにこペース」を維持しながら、
フォアフット(足の指に付け根当たり)で
着地する走り方のことです。

「にこにこペース」で走るスロージョギングは
ゆっくり走るので楽ですが、
それでいて全身筋肉を鍛えることができます。

ですから、スロージョギングを続けていると、
次第に「にこにこペース」の速さが速くなり、
最終的にはフルマラソンでも
十分に走れるようになるというわけです。

現に、著者自身もスロージョギングを
取り入れたトレーニングをすることで、
50歳の時にはフルマラソンを
2時間38分48秒で走り、
70歳を越えた現在でも毎年フルマラソンに
出ていると言うから驚きです。

さらには抗圧効果もあるため、
世界の高血圧治療のガイドラインには
「にこにこペース」運動が治療法として
有効であることが記載されるようになりました。

これらの運動本を読んで思ったことは、
著者によって言っていることが異なり、
時には正反対のことを言っている場合も
あるんだなということです。

例えば、運動のダイエット効果についても、
「ある」と言い人もいれば、
「ない」と言う人もいます。

また、歩くこと、ジョギング、
ランニングについても、
その有効性については意見が分かれます。

一方で、共通することもいくつかありました。
それは、適度な運動強度を
取り入れることが大切なこと
高血圧や糖尿病といった生活習慣病の予防や、
脳機能の改善に有効だということ等です。

ただ、どの本も、身体に関する
科学的データを基に話をしているのですが、
心理、社会的要因との関連性が
運動効果に及ぼす影響については
明確には書かれていませんでした。

でも、実際にはそのような
心理、社会的要因も、
運動への取り組み姿勢や継続への意欲に、
影響を及ぼしてくるので、
そのあたりも考慮した上で、
自分に合ったやり方で
運動に取り組めばよいのではと思いました。

運動をされていない方は、
これを機に第一歩を踏み出してみては
いかがでしょうか。