(前半から続く)
三日目の朝も4時半に起き、
いつものように散歩に出かけようと
ホテルの玄関を一歩出ると、
なんと、先日まで全く姿を
見せてくれなかった利尻富士が、
眼前にそびえ立っているではないですか!

散歩を終え、ホテルに戻るやいなや、
利尻富士を生まれて初めて見た感動を、
妻にも味わってもらいたいと思い、
「今日は利尻富士が見事に見えるから、
見てきてみ」と言うと、
「ん~あとで行くわ」とつれない返事。

てっきり喜び勇んで見に行き
感動してくれるであろうという思いは、
またもやあっさりと裏切られてしまいました。

でもすぐさま気を取り直し、
とりあえず朝食をすませ、
朝一番のフェリーで礼文島へ。

礼文島での午前中は、
トレッキングをしながら
高山植物を見てまわりました。

この日はとても天気がよく、
真っ青な海に浮かぶ雄大な利尻富士を眺めつつ、
色鮮やかな高山植物のお花畑を
存分に味わわせてもらいました。

心地よい汗をかいた
3時間のトレッキングを終え、
とりあえず一休み。

ちょうど12時を過ぎた頃だったので、
空腹を満たすために、
フェリー乗り場の近くにある食堂に入りました。

小さな食堂だったせいか
ラーメンや丼ものといった
ごくありきたりのメニューしか
ありませんでした。

でも3時間も歩き続けたあとであり、
空腹も手伝ってか、
どれも美味しそうに思えました。
結局、私はカツカレーを、
妻はカツ丼を注文しました。

実は、カツカレーにするか
カツ丼にするか迷っていたのですが、
幸い妻がカツ丼を頼んでくれたので、
ならば、一切れずつでもカツを交換したら、
2つの味が楽しめるなと思い、
ウキウキしていました。

注文した食事が運ばれ、
早速、私は妻に
「カツを1つだけトレードしようか」と言うと、
「同じカツなんだから、
そんなことしなくてもいいし!」

その一言で、食事の楽しみは一気に半減、
カツカレーとカツ丼のカツは
絶対に違う味なのにと思いながらも、
カツ丼に未練を感じつつも、
黙々とカツカレーを食べていました。

でも、これでお腹は満たされたので、
再びエネルギーは充電されました。

後半はレンタカーを借りて島巡りをしました。
高山植物園に寄ったあと、
礼文島で唯一の湖、久種湖(くしゅこ)を眺め、
澄海(すかい)岬を経て、
そのまま最北端の地、スコトン岬まで
一気に車を走らせました。

スコトン岬の絶景を満喫したあと、
まだ時間がたっぷりあったので、
当初の予定になかったゴロタ岬まで
足を伸ばすことにしました。

ガイドブックを頼りに車を走らせ、
少々わかりにくい道を上って行きました。

ほとんど車も人も
通らないような道だったせいか、
妻は少々不安混じりのむくれた口調で、
「どこへ行くつもり?」とたずねてきました。

どこへ行くつもりって、
ゴロタ岬に行ってみようと言って、
ゴロタ岬をめざして走っているのですから、
ゴロタ岬に決まってるし!!

今考えると、このあたりから
妻の機嫌はやや斜めに傾いてきた気がします。

何とかゴロタ岬の登り口まで辿り着き、
そこで車を置き、
あとはひたすら岬をめざし
歩き続けるだけでした。

ここは島の西側にせり出した断崖絶壁の岬で、
海抜176mのところにあります。
結構急な山道ですが、
高山植物を眺めながら15分程登っていくと、
ようやく岬の先端に辿り着きました。

途中、何度か振り返り、妻の様子に目をやると、
足取りは重く、眉間に皺は寄り、
まるで、やる気のない子供が
無理矢理塾に行かされているような、
そんな光景が目に入ってきました。

嫌々オーラ全開であることが
手に取るようにわかりましたが、
それでも何とか岬の先端まで
辿り着いてくれました。

ここは利尻富士や礼文岳、青い海が一望でき、
雄大な大自然を360度の大パノラマで見られる
まさに絶景スポットです。

登ってきた妻に、無駄とはわかりつつも、
「まさに絶景だね」と語りかけ、
あわよくば感動を共にしようとしたのですが、
案の定、無言でした。

その後もずっと無言でしたが、
でも、私にはちゃんと聞こえました。
「何でこんなしんどい思いをして、
こんなところまで来なくちゃいけないの!」
という心の声が。

ここはあまり刺激してはいけないと思い、
しゃべることもせず、
来た道をゆっくり下っていきました。

途中、1人だけすれ違った人がいたのですが、
道を譲ってくれたその人に妻は、
満面の笑みで「ありがとうございます!」と
明るくお礼を言っているではないですか。

まあ、人間、こんなもんです。
対応の仕方や態度は、
相手によって全く異なるものです。
それが当たり前なのです。
自分にそう言いきかせながら、
下り道をひたすら歩き続けました。

その後、再び車を走らせ、
出発地点まで戻ってきました。
そこでレンタカーを返却、
礼文島の旅を終えました。

ホテルにチェックインした後、
まずは温泉につかって一日の疲れを癒しました。
妻も温泉につかって癒されたせいか、
機嫌も次第に回復してきました。

しかしそれと入れ替わるかのように、
部屋の窓から一望できるはずの利尻富士が、
再び雲に覆われ、
せっかくの雄姿が
全く見えなくなってしまったのです。

どうも、
妻の機嫌がよいときは利尻富士は見えず、
利尻富士がその雄姿を見せているときは、
妻の機嫌が悪いという法則があるようです。

ふと、部屋のテーブルの上にある
「ガイド付き高山植物を楽しむ朝の散歩」
というお知らせが目にとまりました。

明朝6時から1時間程であり、
これは面白そうだと思い、
申し込むことにしました。

妻も少し機嫌がよくなってきたこともあり、
今ならいけると直観し、
「明日朝、一緒に行かない?」と誘ってみました。
しかし「行かない」と即答でした。
せめて多少のためらいくらいは欲しかったなあ…

「三度目の正直」という言葉がありますが、
「二度あることは三度ある」という
言葉もあることを、
私はすっかり忘れていました。

最終日は礼文島からフェリーで稚内まで戻り、
その後は飛行機と新幹線を乗り継いで、
夕方には無事帰宅。

とても楽しみにしていた利尻・礼文4日間の旅は
こうして幕を閉じました。

本当にお疲れ様でした。

なお、表バージョン?のブログ、
「もうひとつの利尻・礼文の旅」もあります。
同じ旅行を全く異なる視点から書いたものです。
暇な方は、是非こちらもお読み下さい。

なお今回のブログの主役であった妻は、
こちらのブログには登場しません。
あしからず。