前回は、ポリヴェーガル理論という、
自律神経に関する新しい考え方について
紹介させて頂きました。

今回は、ポリヴェーガル理論で言われている、
「ニューロセプション」に触れながら、
私なりの考えを述べたいと思います。

「ニューロセプション」とは、
環境や人間関係に見られる、
潜在的な安全性や危険性を察する
無意識の力のことです。

例えば、ある人(Aさん)と初めて会ったとき、
人は第一印象で、
瞬時に相手を判断することができます。

その際、Aさんの表情や口調、態度、雰囲気
といった情報をもとに
「無意識」に相手がどんな人かを判断します。

ポリヴェーガル理論では、
この無意識に判断する過程を
「ニューロセプション」と言い、
「いい人だ」「怖い人だ」だというような、
認知的評価に先立って起こる
反応だとされています。

「ニューロセプション」により
「安全」か「危険」かが判断されると、
それに対処するための神経回路のスイッチが
押されることになります。

例えば、
これは「危険かもしれない」と察したときには、
防衛的反応に備えてスイッチが押され、
いつでも反応できるように身構えながら、
緊張感をもってかかわることになります。

一方、これは「安全だ」と判断すれば、
防衛的反応を抑制するスイッチが入ります。
このときは、「身構えた緊張感」は、
「ワクワク感のあるかかわり」へと変わります。

私たちの日常でも、
ごく普通に「ニューロセプション」が機能し、
「安全」や「危険」といった
極端な判断だけではなく、
「何となく安心する」「何となく嫌」
といった曖昧なレベルでの判断も
行っていると思われます。

安心感や信頼感がある人に対しては、
ときに冗談を言ったり、
つっこみを入れたりしますが、
そうでない人には、
ありきたりのまじめな話に終始します。

私などはよく、
「あなたの、人を油断させる、
その『とろさ』がいい」とか、
「写真写り『だけ』は抜群だね」とか、
平気で言います。

もちろん、そのようなことを言っても、
笑って楽しんでもらえるだろうと、
つまり「安全」だと「ニューロセプション」が
感じ取っているからこそ、
そのようなことが言えるのだと思います。

一方で、同様のことを言ったら、
気を悪くするか、怒り出すかもしれないと
思われる人には、当然言いません。

そのような判断は、
意識的にしているわけではなく、
無意識の反応なのです。

その瞬時の判断により
「防衛的」に振る舞うか、
「ワクワク」して振る舞うかという
その後の行動の違いに現れてきます。

これが「ニューロセプション」の
日常における働きなのかなと思いました。

それから、
もうひとつ思い出したことがあります。
それはポジティブなストレス反応のことです。

ストレス反応と言うと、
「闘争/逃走」反応が一般的です。
今にも飛びかかってきそうな大型犬が
目の前にいきなり現れたときの反応です。

このストレス反応は、
ポリヴェーガル理論で言うところの、
無意識が「危険」と判断したときの反応で、
その際、瞬時に交感神経にスイッチが入り、
闘うか、逃げるかに体を備えることになります。

一方、ストレス反応には
ポジティブなものもあり、
その代表が「チャレンジ反応」です。

「チャレンジ反応」というのは、
試験や講演、パフォーマンス、
外科手術など、
何かに挑むときに生じるストレス反応です。

その際、当然、強い緊張を強いられますが、
これはよい意味でのストレス反応なのです。
なぜならば、この緊張感があるからこそ、
最大限の集中力と最高の能力を発揮することが
できるからです。

このときのストレス反応は、
「ニューロセプション」が「安全」だと
判断したときに生じる反応に
似ている気がします。

なぜならば「チャレンジ反応」は、
闘ったり逃げたりするような状況ではなく、
自らがチャレンジしようとする状況のときに
生じる反応なので、
よい意味で交感神経が活発に
機能していると考えられるからです。

実は、よいストレス反応には
もうひとつ「思いやり・絆反応」があります。
これは、家族や自分にとって大切な仲間が
辛い状況や危機的状態に陥ったときなどに
起こる反応です。

このストレス反応が生じると、
勇気がわき、恐怖心が弱まり、
その人たちを守り、応援したいという気持ちが
強くなります。

これは「安全」ではないにもかかわらず、
交感神経がよい意味で機能します。
これはポリヴェーガル理論の考えと
矛盾するようにも思われますが、
実際のところはよくわかりません。

私もまだポリヴェーガル理論が
十分に理解できているわけではないので、
今後、もう少し理解を深める中で、
この問題はもう一度考えてみたいと思います。

以上、病み上がりである私の独り言でした。
お付き合い頂きありがとうございました。