今回は、最近興味を持った
ポリヴェーガル(多重迷走神経)理論という
自律神経の働きに関する新しい学説について
その一端を簡単に紹介させて頂きます。

これを知ったきっかけは、
コミュニケーション医学について
仲間の医師と話をしていたときに、
「それって、ポリヴェーガル理論だよね」
と言われたことです。

その時は、ポリヴェーガル理論については
よく知らなかったので、
早速、「ポリヴェーガル理論入門」
(ステファン・W・ポージェス著、春秋社)を
読んでみました(少々固めです)。

皆さんもご存じのように、
自律神経には、交感神経と副交感神経があり、
お互いが反対の働きをしながら
体の調整をしています。

例えば交感神経が優位になっているときは、
活動しているときや
いわゆる「闘争/逃走」反応の時のように
心拍数が早くなり血圧も上がり、
呼吸数も多くなりますが、
その一方で消化管の働きは抑えられます。

逆に副交感神経が優位になっているときは、
リラックスしているときのように、
心拍数や血圧は下がり、
呼吸数も少なくなりますが、
逆に、胃腸の動きは促進されます。

このように交感神経と副交感神経は、
車のアクセルとブレーキのような役割をしながら
体の働きを調整しているというわけです。

なお、ここで言う副交感神経は、
主に迷走神経から成り立っていますが、
この迷走神経がポリヴェーガル理論の主役です。

ポリヴェーガル理論では、
迷走神経には、
副交感神経本来の働きをする迷走神経の他に、
進化の過程で生まれた、
社会的な振る舞いと関連のある
「新しい迷走神経」の二種類があるというのです。

この「新しい迷走神経」の働きは、
社会の中で色々な人と交流していく上で、
とても重要な働きをしています。

例えば、ある人と出会った場合、
人はその人を見て安全か否かを察知します。
これは意識的に判断されるものではなく、
無意識レベルで感じ取る反応です。

もしも安全だと感じられたならば、
「新しい迷走神経」のスイッチが入ります。

この神経は顔の筋肉を調整する神経にも
つながっているので、
相手が安全だと感じると、
自分の表情も緩みます。

同時に、従来の迷走神経や交感神経は
人の体が健康的に機能するように
働いてくれます。

これが「新しい迷走神経」が持つ、
「社会交流システム」という働きです。

この「社会交流システム」が働いていると、
交感神経は「闘争/逃走」反応としてではなく、
ワクワクを感じながら、
楽しむという行動ができるようになるのです。

コミュニケーションやカウンセリングの場でも、
クライエントの持っている「心の治癒力」を
うまく発揮させてあげるためには、
防衛反応的緊張をもたらす交感神経ではなく、
ワクワクをもたらす交感神経として
機能してもらうことが必要になります。

そのためにも、先ずは
クライエントがセラピストに対して、
「安全」だと感じられること、
つまり「この人だったら安心だ」と
思ってもらえるような
かかわりが重要になってきます。

ポリヴェーガル理論を学ぶと、
社会的な営みの中では、
安心感というものがベースにあって、
初めて本来の力を発揮できるのだということが
よくわかります。

ホリスティックコミュニケーションでは、
傾聴力や反応力が
問題解決のためのベースとして
とても重要だと言っています。

こればまさに「新しい迷走神経」の
スイッチを入れることを意味しています。

実は、ポリヴェーガル理論は
トラウマの治療に革命を起こしたと
言われていますが、
このへんの理解に関して
私はまだ十分だとは言えません。

このあたりも含め、もう少し勉強して、
ポリヴェーガル理論の考え方を
ホリスティックコミュニケーションにも
取り入れながら、
よりよいコミュニケーションのあり方を
これからも模索していきたいと思います。