ブログ:がんと共存する力
ほとんどの人は
がんと診断されれば
手術や抗癌剤治療を受けます。
しかしそれでも再発し
抗癌剤ももう効かないと言われたら
たいていの場合、治療は終了し
あとは緩和ケアに行ってくださいと
言われることになります。
もちろん、諦めたくないという思いから
代替療法などに希望を託す人もいますが
それでがんが治るというのはまれです。
そうなると多くの人は治ることをあきらめ、
自然の流れに任すことになります。
実際、緩和ケアに来る患者さんの多くは、
そんな状態で紹介されてきます。
多くの患者さんは落ち込んでおり、
あとは死ぬのを待つだけですねといった
悲観的な言葉を口にする患者さんも
少なくありません。
そんなときには
患者さんにこんな話をします。
治療ができないからといって
もう終わりと考えるのは時期尚早です。
中には全く治療をしなくても、
何年もがんが大きくならず、
そのままの状態でいる人もいます。
これは自然寛解(かんかい)と
言われる現象であり、
私も3,000人くらい看取った患者さんのうち
20人くらいそのような患者さんを
経験しています。
そんな話をしてあげると
皆さん目を輝かせ、
「そうなんですか」と驚きの表情を
見せることがしばしばです。
私の印象に残っている一人に
上顎がんの肺転移の患者さんがいます。
もう80歳を越えた女性でしたが
とても明るく、
いつもケラケラ笑っているような人でした。
娘さんが言うには、
少々認知症が入っているせいか、
同じことをいつも
言っているとのことでしたが
それ自体は特に問題にはなりませんでした。
肺転移に対しては
放射線療法を施しましたがすぐに再発、
そのため余命は半年くらいでしょうと
前主治医からの紹介状には
書いてありました。
初診時はまだ元気そうだったので、
月1回の簡単な外来診察のみで
様子を見ていくことにしました。
通常は落ち着いていても
現状把握目的で
ときどきレントゲンの1枚くらいは
撮るのが普通です。
しかし症状が変わらないのであれば
その必要はないと思い、
結局何もしないままに
いつの間にか5年が経ってしまったのです。
そんなある日、発熱し、
急きょ外来受診をしました。
もしかしたら
これが最後かもしれないと思い、
とりあえず入院してもらい、
その際に5年ぶりとなる
レントゲンと採血をしました。
すると驚いたことに、
肺への転移は5年前と大きさが
ほとんど変わっていなかったのです!
結局、発熱の原因も
インフルエンザだとわかり、
1週間ほどで元気になり退院していきました。
最終的に亡くなったのはそれから3年後、
初診から8年後のことでした。
この患者さんは薬もサプリメント類も
いっさい飲んでいません。
それでもあと半年と言われながら
8年も生き続けていたのですから
これはまさにがんと共存していたと
言ってもよいのではないでしょうか。
こんな患者さんを何人も診ているので、
私は抗癌剤ができなくなり
落ち込んでいる患者さんには、
何もしなくても
何年も生き続ける患者さんもいますよと
自信をもって伝えるようにしています。
なんで末期がんなのに
こんなに長生きできたのかはわかりません。
もしかしたら天性の明るさと、
認知症により自分ががんだということも
半分忘れていたことが、
長生きできた要因のひとつではないかと
密かに思っています。

やはり人の命など誰も決めることはできないのですね。
生きている限り、心身に秘められた可能性は未知数なんだなと思いました。
明るく生きようと思います!
もう抗がん剤が効かないと言われたご主人のケアをしている女性に教えてあげたくなりました。