ブログ:安楽死と尊厳死の狭間

日本では「安楽死」は
認められていないことは
皆さんもご存じのことと思います。

ですから、余命幾ばくもない
末期がんの患者さんから
どんなに懇願されてもしても、
薬を打ってストンと死なせてあげることは
できません。

もしそんなことをしたら
殺人罪で起訴されます。

実際、1991年に東海大学病院で
末期がん患者さんに
薬物を注射して死なせた医師は
有罪になりました。

では、もう回復の見込みがない
末期がんの患者さんに
「眠らせてそのまま逝かせてください」
と言われたため、
深く眠らせる鎮静薬を使って昏睡状態にし、
そのまま亡くなった場合は
どうでしょうか。

実は、これは安楽死ではなく、
緩和ケアでは一般的に行なわれている
「鎮静」という処置です。

薬を使って昏睡状態になれば
近い将来確実に亡くなることは
誰の目から見ても明らかです。

ましてや「鎮静」により
すぐさま亡くなってしまったならば、
安楽死と変わらないではないかと
言われかねません。

にもかかわらず
「鎮静」が認められているのは
なぜでしょうか。

実は、ここには
グレーゾーンの部分が存在しています。

実際、「鎮静」を正当化するような
法律はありませんし、
もし訴えられたら有罪になる可能性も
完全にゼロではありません。

もちろん「鎮静」をかけるときは、
患者さんが余命幾ばくもなく、
かつ通常の処置では苦痛が取れず、
本人や家族も「鎮静」を希望し、
医療スタッフもそれが妥当だと
判断した場合に行なわれるものです。

ですから、ほとんどの場合、
すぐに亡くなったとしても
問題になることはありません。

もっとも、
絶縁状態になっていた息子が突然現れ、
俺は鎮静なんて絶対に認めない!
訴えてやるというケースも
ないとは言えません。

そんなことが実際に起こると
厄介なことになります。

そういう意味でも
「鎮静」にはグレーゾーンの部分があり、
そう単純な問題ではないのです。

もうひとつ問題になるのが
延命治療の中止です。

例えば脳出血を起こし、
なんとか命を救うことはできたものの
意識が戻ることなく
何ヶ月も点滴と人工呼吸器に
つながれた状態で延命治療が
続けられていた場合、
これを中止することが
できるのかという問題です。

例えば、栄養の点滴を中止すれば
数週間で亡くなります。

また人工呼吸器を外せば
数分後には亡くなります。

これらの対応は可能なのでしょうか。

実はこのような延命治療の中止は可能です。
日本ではこれを一般に
「尊厳死」と言っています。

点滴を中止するというのは、
まだ理解しやすいかと思います。

点滴をやめたからといって
すぐに亡くなるわけではなく、
数週間にわたり少しずつ悪化していくので
家族も、患者さんの死を
まだ受け入れやすいのではと
思われるからです。

一方、人工呼吸器を外すというのは
どうでしょうか。

これはなかなか抵抗があります。

実際、主治医に外してくれと言っても
一度つけた人工呼吸器を外したら
殺人罪になってしまうのでできないと
断る医者も少なからずいます。

それは多分、
末期がんの患者さんの
人工呼吸器を外した医者が訴えられ、
逮捕されたというニュースなどを
目にしているからではないでしょうか。

このような事例は過去に何回かありますが、
いずれも不起訴処分になっており、
未だかつて人工呼吸器を外して
有罪になった事例はありません。

ニュースも逮捕されたときは
大々的に取り上げておきながら
実際には不起訴だったというニュースは
まず流しませんので、
みんな勘違いしてしまうのです。

人工呼吸器を外すというのも
延命治療の中止であり、
栄養を入れるのをやめるのと同じです。

心肺停止の患者さんの心臓マッサージは、
回復の見込みがないと判断されたら
30分程度で中止します。

同じように、
回復の見込みがない患者さんであれば
人工呼吸器で無理に延命していても
意味がないので、これを外すのは
心臓マッサージをやめるとの同じであり
延命治療の中止なのです。

ですから患者さんからの事前の同意、
もしくは家族の同意があれば、
やめることは可能なのです。

実際、
日本医師会のホームページにも
そのことが記されています。

ただし、延命治療の中止にかかわる法律が
あるわけではありません。

その意味ではここにも
グレーゾーンが存在すると言えます。

ただ緩和ケア病棟では、
延命治療の中止や鎮静は
日常的にしている行為です。

法律はありませんが、
指針などは示されているので、
それに則って行なっている限り
まず問題になることはないのです。

内閣府の
『平成29年版高齢社会白書』によると
65歳以上の91.6%の人が
延命治療は希望していません。

さらに終末期医療の最後の1ヶ月に
かかる費用は平均112万円であり、
1年間にかかる終末期医療は
合計で9,000億円と言われています。

このような無駄遣いを少なくするためにも
また患者さんや家族の思いを
大切にするためにも、
延命治療の中止に関しては
もう少し積極的に取り組んでもよいのではと
私は考えています。

ブログ:安楽死と尊厳死の狭間” に対して2件のコメントがあります。

  1. 遠藤玲子 より:

    延命治療の中止をしてほしくても家族がいなくて、自分に意識が無い時にどうなるのか、時々とても心配になります。
    ポックリ逝くことを願うばかりですが、なかなかそうは行かないですね。

  2. holicommu より:

    遠藤さんへ
     そういうときは、リヴィング・ウィルを書いておけばいいかと思います。
     私は書いています。
     尊厳死協会が推し進めていますよ。

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