ブログ:人は非合理的に考える

以前は、私たちは日常生活において
合理的に物事を考えながら
生活をしていると考えられていました。

お金がなければ無駄遣いはせず、
将来のことを考え貯金をし、
同じ商品なら一番安く買えるところで
買うと思われていました。

しかし、実際には
人はそんな合理的な考え方をしません。

ダイエット中だというのに
コンビニでお菓子を買い、
試食コーナーで食べたチーズを
買うつもりもなかったのに買い、
松竹梅の区別があると、
真ん中の「竹」の商品を買うのです。

このように人は、
非合理的な意思決定をしてしまうものであり
そのメカニズムを解明しようとするのが
行動経済学という学問です。

私は行動経済学にとても関心があります。
なぜならば、人の意思決定や行動に
影響を及ぼす様々な要因を解明し、
人の行動や意思決定を変えるための
アイデアや方法を
たくさん教えてくれるからです。

これらはまさに人の心の本質であり、
私が主催している
コミュニケーションのセミナーでも
大いに利用させてもらっています。

今回、この分野における
面白い本をみつけました。

相良奈美香著、
行動経済学が最強の学問である
(SBクリエイティブ株式会社)です。

今回はこの本をもとに、
皆さんにも役立つ視点や考え方を
お伝えしたいと思います。

私たちの意思決定は
直感的な意思決定(システム1)と、
熟考した上での意思決定(システム2)に
大きく分れます。

もちろん日常における実際の意思決定は
この両者とも使いながら行われます。

ただし、非合理な意思決定は主に
システム1の直感的な方で行われます。

例えば次の問題に
素早く答えてみて下さい。

問題
野球のバットとボールの
合計金額は1,100円であり、
バットはボールより1,000円高い。
バットとボールの各々の値段はいくらか?

直感的に答えを出すと、
多くの人はバットが1,000円で
ボールが100円と答えます。

皆さんはいかがでしたか?

正解は、
バットが1,050円でボールは50円です。

このようなことからも、
直感がいかに間違った答えを
導いてしまうかがわかります。

また人には、
メンタル・アカウンティング(心の会計)
という、認知のクセがあります。

これはなかなか面白い心のクセです。
まずは、以下の質問に答えてみて下さい。

「あなたは劇場で
5,000円のチケットを買おうとして
財布を開くと5,000円札をなくしたことに
気づきました。
それでもあなたは財布から5,000円を出し
チケットを買いますか?」

「はい」でしょうか、
それとも「いいえ」でしょうか?

この問いには、
88%の人が「はい」と答え、
チケットを買います。

では次の質問はどうでしょうか。

「あなたは事前に5,000円のチケットを
買っていましたが、劇場に着いたら
チケットがないことに気づきました。
それでもあなたは財布から5,000円を出し
新たにチケットを買いますか?」

さあ、今度はいかがでしょうか。

この質問に対しては、
半分以上の人が「いいえ」と答えます。

どちらの場合も、
なくしたお金の価値は5,000円であり、
変わりありません。

にもかかわらず、
チケットを買うか買わないかという行動には
大きな違いが出てきてしまうのです。

これは、同じ5,000円であっても、
お札を落とした場合と、
チケットを落とした場合とでは
5,000円に対する「心の会計」が
異なっているからです。

前者の質問の場合、
なくした5,000円は所持金の一部であり、
劇とは関係のないものですが、
後者の場合は、
劇を見るために
使おうとした5,000円というふうに、
心の中では「別会計」になっているのです。

ですから、後者の場合、
「劇を見るために使う5,000円」以外に、
さらに「劇を見るための追加の5,000円」を
出すことには、心理的な抵抗が生まれるため、
購入を控える人が多くなるのです。

合理的に考えれば、
損をしたのはどちらも5,000円ですから、
行動が変わるというのはおかしなことです。

しかし実際は、
このように非合理な行動を
取ってしまうのです。

また「サンクコストの誤謬(ごびゅう)」も
有名な認知バイアスの一つです。

まずは簡単な質問に答えてみて下さい。
スキーに行く計画を立て、
スキー旅行Aに5千円の予約金を、
スキー旅行Bに1万円の予約金を支払いました。

どちらもスキー客に人気ですが
雪質といい設備といい、
Aの方が楽しめます。

ところが予約日が
同じ日であることに気づき、
どちらかをキャンセルしなければ
ならなくなりました。

ただし予約金は戻ってきません。

あなたはAとB、
どちらをキャンセルしますか?

Aをキャンセルすると
損失は少くてすみますが、
スキーそのものの楽しさは減ります。

Bをキャンセルすると
損失は大きいものの、
スキーそのものは楽しめます。

あなたはどちらを
キャンセルしますか?
(次回のブログに続く)

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