先週は新型コロナウィルス(以下CV)と
認知バイアスのお話をしましたが、
今回はもう少し医学的な側面に焦点をあてた
お話をさせて頂きます。

2月25日に政府がCVに対する
感染症対策の基本方針を出しました。
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000599698.pdf

現在全国で感染者は200名以上に、
死者も10人を超え、
全国どこでもCV感染者が出ても
おかしくない状況になっています。
つまり一般の風邪やインフルエンザと
同じような広がりを見せているということです。

今回は、この政府の出した基本方針をもとに、
お話をさせて頂きます。

まず、感染症対策の重要事項ですが、
その中に「手洗い、せきエチケット等の
一般感染対策の徹底」という文言があります。

ここには「マスクの着用」という言葉は
入っていません。
なぜでしょう?

多分、一般のマスクには
ほとんど予防効果はないことが
わかっているからではないかと思われます。

医療用のN95規格のマスクであればいざ知らず、
一般のマスクでは、網目の大きさが
5㎛(1㎛=1㎜の1000分の1)であり、
ウイルスの大きさは0.1㎛なので、
マスクの網目の大きさの方が50倍も大きいのです。
当然、くしゃみなどによる飛沫感染などを
防ぐことはできません。

さらに言うならば、
目からもウイルスは感染するので、
本来ならばゴーグルも着用する必要があります。

マスクだけしてゴーグルをしないのは
「頭隠して尻隠さず」状態です。
つまり、マスクだけをするのでは、
気休めにしかならないということです。

しかし、外を歩いていると
多くの人がマスクをしているので、
多分、ほとんどの人はマスクをすることで
感染予防ができると
勘違いしているのではないでしょうか。

もっとも、CV感染者やその可能性のある人、
つまり風邪症状のある人は
マスクをすることは必要です。

それは、CVを含んだ唾液の飛沫は
マスクの網目の大きさでも引っかかるので
感染した本人が飛沫を飛ばさないためにも
マスクをすることは、ある程度有用だからです。

そのため政府の基本方針には
「風邪症状のある人が
やむを得ず外出される場合には、
マスクを着用して頂くよう、お願いする」と、
「マスクの着用」が明記されています。

とにかく、感染している可能性がある人は
ウイルスを周囲の人にばら撒かないというのが
大原則です。

また、CVは「季節性インフルエンザと比べて
高いリスクがある」とは言うものの、
「重症度としては、致死率が極めて高い
感染症ほどではない」とも述べられています。

実際、8割以上が軽症であり、
理屈上、亡くなる人以外は
すべて自然治癒するということです。

最終的にどれくらいの死者が出るか
わかりませんが、
季節性インフルエンザによる死者が
毎年1,000~3,000人程度であることを考えると、
現在は国内での死亡者数は10人ちょっとなので
もう少し冷静になってもよいのではと思います。

ちなみに、あれだけ騒ぎ、病院を大混乱に陥れた
平成21年の新型インフルエンザによる死者は
198名でした。(私も対応に大変でした!)

死亡者数で見ると、
それほど神経質になる必要はないのですが、
しかし感染への不安から、
ちょっとした症状だけで
医療機関を受診する人が多くいます。

これはかえって
「感染するリスクを高めることになる」と
政府は注意を促しています。

さらに「風邪症状が軽度である場合は、
自宅での安静・療養を原則」とするとも
書かれています。

ところが多くの人は、
症状が出たら早めに受診した方がいいと
勘違いしています。

ただ、こんなことを言うと
“病院に行かずに、もし本当にCVに感染していて、
重症化して死んだりしたらどうする気だ!“などと、
怒る人が必ずいます。

実際、2月28日のニュースで、
和歌山県の仁坂知事が「軽症者は自宅療養でという
政府の方針はおかしい、従わない!」と
発言したという記事が載っていました。

仁坂知事は、体調に異変があれば
通常通りクリニックなどを受診し、
症状が改善しなければ肺炎を疑って
検査をしてもらうべきだと主張しています。

もちろん症状が持続、悪化した場合は
当然医療機関を受診すべきですが、
症状が軽度の場合は話が別です。

その点に関して仁坂知事は、
どうも根本的な誤解をしているように思います。
つまり早めに医者に行き、適切な治療を受ければ
CV感染はよくなると
思っているのではないでしょうか。

しかしクリニックや病院に行って、
CV感染だとわかったとしても、
今は治療法がないのですから、
どうすることもできないのです。

やれることは解熱剤や咳止めといった
対症療法だけであり(必要性には賛否両論)、
あとは自然治癒力(この場合は主に免疫力)が
ウイルスをやっつけてくれるのを
自宅で静かにして待つしかないのです。

でもそれで、軽症のCV感染のほとんどは
よくなるのですからよいのではないでしょうか。

さらに、感染拡大の面から考えても、
軽度の風邪症状の人が病院に行くよりも
自宅で安静にしている方が、
感染を広げるリスクは少なくなります。

病院は、人が集まる場所の中で、
最もCVに感染するリスクが
高い場所だと言えます。

かつ、自分が感染者であったら、
他の患者さんに
うつしてしまう可能性も高く、
それを考えれば当然、家で安静にして
自然治癒力がウイルスを駆逐してくれるのを
待つのがベストなのです。

もしもCV感染を心配してくる患者さんの多くが
病院を受診するようなことにでもなれば、
新型インフルエンザの時のように、
病院は大混乱となり、
本当に治療が必要な人への医療の提供が
できなくなる可能性が十分にあります。

そのため、不安だからという理由だけで、
症状が軽いにもかかわらず、
安易に病院を受診することには、
慎重であってもらいたいものです。

ただし、これはあくまでも、
一般の人に対する話であり、
「高齢者・基礎疾患を有する人は
重症化するリスクが高い」ので、
この人たちは早めの対応が必要であることは
言うまでもありません。
(続く)