ブログ:新型コロナウイルスと認知バイアス①

最近は連日、
新型コロナウィルス(以下CV)のニュースが
テレビや新聞のトップで報道されています。

感染者が新たに何人出たとか、
死んだ人が何人になったという話です。
そのためマスクはどこも売り切れ、
イベントの中止も相次いでおり、
世の中はだいぶピリピリしているように思います。

今回は、これを題材にして
認知バイアス(ゆがみ)のワナについて
考えてみたいと思います。

認知バイアスとは、
人が無意識にしてしまう
ゆがめられた思考や判断のことです。

例えば、私は雨女だと言う人がいますが、
これは確証バイアスという認知のゆがみです。
出かけて雨が降ってきたら、
やっぱり私は雨女だと思い、
それは記憶にも残りますが、
逆に晴れていたら、その事実はスルーされ、
記憶から忘れ去られます。

つまり自分の都合のよい事実だけに目を向け、
都合の悪い事実は無視してしまうという
無意識のゆがんだ判断のことを
確証バイアスと呼んでいます。

さて、CVの話に入りましょう。
今回、最も根底にある認知バイアスは、
「確率の無視」というバイアスです。

私たちは、ある出来事の予測される結果、
例えばCVに感染して
死ぬかもしれないということには
大いに反応しますが、
それがどれくらいの確率で
起こるのかという確からさに関しては、
あまり考慮しない傾向にあります。

このように、起こる確率は考えずに、
事実だけに反応してしまう認知のゆがみが
「確率の無視」という認知バイアスです。

今回のCVに対する不安も
「確率の無視」が根底にあります。

例えば、飛行機事故に遭遇する確率は
ゼロではありません。
ある程度のリスクはありますが、
だからと言って飛行機には
乗らない方が言いと言われたら
どう思いますか?

飛行機事故が起こる確率は
0.0009%と言われています。
日本でCVに感染した人は、
100人程度(クルーズ船での感染を除く)ですので、
今のところ感染の確率は
1億分の100とすると1/1,000,000=0.0001%です。
要するに飛行機事故に出くわす確率よりも
低いということになります。

もちろん、感染対策をしなくてもよいとか、
全く気にする必要はないなどと
能天気なことを言うつもりはありません。

ただ、感染や死という結果ばかりに目が奪われ、
現実の可能性を考慮しなければ
正しい判断ができないのではないでしょうかと
言っているのです。

また、今回のCV騒動の背景には
「ゼロリスクバイアス」もあります。

この認知バイアスは、
少しでもリスクがあると、
大きなリスクがあるのと同程度に
不安を感じてしまうという無意識のクセです。

特にリスクの内容が深刻で、
不安感を駆り立てるものであればある程、
リスクが下がっても
安心できないという傾向が強くなります。

例えばシカゴ大学の研究では、
化学物質のよる汚染の危険性が99%ある場合と、
1%しかない場合でも、
どちらも同じだけの恐怖を感じることが
わかっています。

つまり人は、
リスクがゼロの状態だけにしか、
安心感が持てず、
少しでもリスクがあると
もしそれに自分が当たったら
どうしようという思いを抱き、
過剰に反応してしまうクセがあるのです。

そのためリスクゼロを得るために、
大金を使ってしまったり、
行き過ぎた行動を取ってしまったりするのです。

無農薬野菜しか食べないとか、
薬は副作用があるので絶対に飲まないというのは
その典型的な例です。

今回の場合、各種イベントの中止などは
ゼロリスクバイアスによる行動だと思われます。

その人たちは、
もしもそのイベントにCV感染者がいて、
感染が広がったらどうするつもりだ!
という感染者ありきの前提で
その危険性を主張します。

1万人が集まるイベントであれば、
その中に1人CV感染者が
紛れ込む確率は0.01、つまり1%です。

100か所で1万人規模のイベントをすれば
どこか一か所ではCV感染者が紛れ込む
可能性があるということなので、
これは中止にするのが妥当だと思います。

ところが100人規模であったり、
ましてや数十名規模の集まりまでもが
結構中止になっています。

100名の集まりにCV感染者が
紛れ込む確率は0.01%です。
しかし、たとえ0.01%であったとしても、
もし何かあったらどうするんだ!
という思いを抱く人が、
このリスクゼロバイアスに
どっぷりはまり込んでいる人です。

自動車事故での死亡率は0.003%ですので、
30人程度の集まりであれば、
そこにCV感染者が紛れ込んでいる可能性と
自動車事故で死ぬ確率とは同じ程度になります。

ただ実際は、その集まりにいたとしても、
自分が確実に感染するわけではなく、
また感染しても8割の人は
軽症ですむわけですから、
死ぬ確率はさらにその1/100に下がります。

自動車事故で死ぬことはほとんど考えないのに
CVに感染して死んだらどうしようと
つい考えてしまい、
過敏に反応してしまうのが
認知バイアスの仕業なのです。

しかし、イベント開催の危険性を言いながらも
その一方では地下鉄や電車、飛行機には乗り、
見たい映画があれば映画館にも行く、
もちろん会社は学校、ましてや大学入試は
休むわけにはいかないと思うので、
当然のごとく出かけていきます。
(ちなみに2/22に乗った新大阪~博多間の新幹線は
3連休ということもありすべて満席でした)

この場合は「やむを得ない」と自分に言い聞かせ
数百人規模で集まるところに
何度も足を運び、そこで時間を過ごすのです。

CVに感染する可能性を考えると
電車の中や映画館、職場、
人が集まるショッピングモール、
さらには新宿駅や東京駅、大阪駅といった
大都市の駅などに行くことの方が、
数十名のイベントに参加することよりも
明らかに感染のリスクは高くなります。

しかし、ここには、
ブログの最初に紹介した
確証バイアスが働くのです。

自分の都合の悪い情報はスルーされ、
「そんなこと言っていたら何もできない!」
と言って、普通に人ごみの中に入っていくのです。

このように人は認知バイアスという、
無意識に働く思いや判断のクセにより、
しばしば不合理で矛盾した行動を取るのです。
(続く)

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