ご存じのように、
プラシーボ(プラセボ)とは、
薬効が全くない物質のことであり、
医療現場では乳糖などがよく使われます。

通常、プラシーボは偽薬と訳されますが、
これは本質を言い表しておらず、
誤解を生む表現のため私は使いません。

中国語では「安慰剤」と訳されており、
こちらの方が意味としては正確です。

さて、プラシーボに関しては、
かなりの数の研究がありますが、
多くの論文で、プラシーボでも
痛みなどの症状や、アレルギー反応、
うつや不安、不眠といった精神症状は
十分に改善するということがわかっています。

これは、いわゆる「気のせい」といった
レベルの話ではありません。

今は、脳の中で
どのような変化が起こっているのかを
f-MRIという医療機器を使えば
視覚的に捉えることができます。

それで調べてみると、
例えば、痛みに対して
モルヒネを注射した場合と、
生理食塩水(プラシーボ)を注射した場合とでは、
脳の中で同じような変化が起こり、
痛みが軽減するということがわかっています。

つまり、プラシーボで
痛みが軽減したということは、
実際の薬を使ったのと同じように
身体的レベルでの変化が起こり、
痛みが軽減するということなのです。

この際、大切になってくるのが
「きっかけ」の存在です。

プラシーボを飲んだり注射したりすると
30~60%程度の人に痛みの軽減を認めますが、
実はその詳しいメカニズムについては
まだよくわかっていません。

ただし、そこには
安心感や期待感といった心の状態が
関与していることだけは確かです。
つまり「心の治癒力」の存在です。

そうであれば、
プラシーボという「もの」を使わなくても
「思い込み」だけで
痛みを軽減させることが
できるのではないかと思うかもしれませんが、
それではうまくいきません。

なぜならば
「意識」だけで安心感や期待感を持つことは
できないからです。

具体的な「行為」があって初めて
「無意識」にスイッチが入り、
その結果として安心感や期待感が
生じるのです。

要するに、何でもいいので、
何かしら外部からの
かかわりが必要だということです。

さらに言うならば、
今から飲む錠剤が
プラシーボだとわかっていても、
「プラシーボでも効く人がいる」という
説明を受けた上で飲むと、
痛みが軽減することが知られています。

そんなバカなと思うかもしれませんが、
多くの研究でその事実が確かめられています。
そのため、今では
プラシーボはネットでも堂々と売られています。
(「プラセプラス」として買えます)

ここで大切になってくるのが、
「意識」している情報よりも
「無意識」にある情報の方が、
身体は反応しやすいということです。

プラシーボには薬効がないのだから、
効くわけがないと「意識」では考えますが、
効く人もいるという説明を聞いてしまうと、
たいていの人は、まさかと思いながらも、
もしかしてという半信半疑の気持ちに
なる人も少なからずいます。

この僅かな可能性を感じる気持ち、
たとえそれが1割程度であったとしても、
「無意識」にはその情報が
しっかりと蓄えられます。

あとは、実際に飲むという「行為」があれば、
それが引き金になって
「無意識」に蓄えられた情報をもとに
心の治癒力は動き始め、
自律神経系やホルモン系、免疫系に
変化をもたらすことで、
痛みの軽減をもたらすのです。

それくらい「無意識」には、
「意識」と比べものにならないくらいの
力があるということです。

無意識の力(心の治癒力)の奥深さ、
少しはわかって頂けたでしょうか。