ブログ:医者の思いが治療効果を左右する

今までは、患者さんの期待感や信頼感が
病気や症状の改善には重要だという話を
してきましたが、
実は、医者の信念や思いも、
それに勝るとも劣らず
治療効果に大きな影響力を及ぼすということを
ご存じでしょうか。

これは、薬を処方する際に、
その薬の効果を医者が信じている場合と、
信じていない場合とでは、
患者さんに表れる薬の効果に
大きな違いが出てくるということです。

そのことについて、
ランセットというとても有名な医学雑誌に
論文が掲載されていたので
紹介させて頂きます。

これは、抜歯後の患者さん60名を対象とし、
薬を注射した後の痛みの程度が
どうなるのかを評価してもらうという研究です。

患者さんに投与される薬は、
痛みを軽減させる薬(F:フェンタニル)、
痛みを増強させる薬(N:ナロキソン)、
痛みとは無関係の薬(P:プラシーボ)の
いずれかですが、
患者さんには、どの薬が投与されるかは
わからないという状況で行われます。

先ず60名の患者さんを二つのブループに分け、
一方にはPかNのどちらかのみを投与します。
つまり、こちらは痛みを軽減する薬であるFが
投与されないグループ(PN群)です。

もう一方は、
3種類の薬(P、N、F)のどれかを
投与するグループ(PNF群)であり、
こちらは本当の痛み止めFが
いずれかの患者さんには
注射されることになります。

各々のグループの患者さんに対して、
投与前の痛みの程度と比べ、
薬を投与した10分後と60分後の痛みの程度は
どのように変化したかを
点数化してもらうことで評価しました。

すると、PN群とPNF群の中で
P(プラシーボ)を注射された患者さんの
痛みの点数を比較すると、
PN群では痛みは増強し、
PNF群では痛みは軽減し、
その差は統計的にも
明らかな差があったという結果でした。

これはどのようなことを
意味しているのでしょうか。

実は、薬を投与する医者は、
患者さんがPN群なのかPNF群なのかが
わかっている状態で注射をしています。

つまり、PN群に割り振られた患者さんの場合、
本当の痛み止めFが入っていないと
医者はわかっているので、
「効かないだろう」と漠然と感じながら
注射をしていると推測されます。

一方、PMF群に割り振られた患者さんの場合は、
うまくFの注射に当たれば
効くだろうという期待感を持ちながら
医者は注射をしていると予想されます。

この研究はプラシーボを投与された患者さんで
痛みの程度を比較しているため、
本来ならPN群でもPNF群でも
同じような結果になるはずです。
ところが実際には
全く異なる結果が出ました。

なぜこのような結果になったのかと言うと、
薬を投与する医者は、
全ての患者さんに同じように接するのですが、
実際には、「効くかも知れない」と思っているか、
「効かないだろう」と思っているかで、
医者の雰囲気や態度、口調、表情に、
微妙な違いが表れ、
それが患者さんに伝わったと考えられます。

つまり医者や治療者が、
この治療は効くと思ってするのか、
効かないかも知れないと思ってするのとでは、
その思いが患者さんに伝わってしまうため、
治療効果にも大きな差として
表れてしまうということです。

もしあなたが医者や治療者であったならば、
自信をもって治療しましょう。
もしあなたが患者さんであったらならば、
自信ありげな治療者から治療を受けましょう。

それが治療効果を高めるためのコツです。
いかがでしょうか。

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