先日、「専門家のデモンストレーションに学ぶ」
という講座で講演と
デモンストレーションをしてきました。

私は、自分のセミナーでも
毎回デモンストレーションをしているので、
全く抵抗は無いのですが、
主催者の方が言うには、
デモンストレーションを
見せてくれる先生を見つけるのが
大変だと言うのです。

高名な先生でも
実際にデモンストレーションをするとなると、
あまり自信がないせいか、
断られることもしばしばだと言っていました。

私も、以前ある講座を受けに行ったとき、
そのことを実感したことがありました。

とある有名な大学教授が講師だったのですが、
話しはまあまあでしたが、
いざワークとなると、いきなりペアをつくらされ、
何の手本やデモンストレーションをすることなく、
ひたすら私たちにワークをさせるだけでした。
多分、この教授は自分でやることには
自信がないんだろうなと思ったのを覚えています。

逆に、その正反対の人もいました。
普通の会社員から、
いきなり心理療法を勉強しようと思い立ち、
しばらく勉強したのち、カウンセラーとして開業、
その後自分で講座も開くようになりました。

彼女には全く学問的背景がありませんでしたが、
実践となると、とにかく上手でした。
私も彼女の講座に1年間通いましたが、
講義をしたあとのワークでは、
毎回必ずデモンストレーションを
見せてくれましたし、
ワークに対しても色々とアドバイスをくれました。
先程の教授とは正反対でした。

しかし、ある意味これは当たり前のことなのです。
学者は研究することが仕事であり、
実践は専門ではないので
苦手だという人は以外と多いものです。
それはどのような分野でもそうであり、
心理や医療の世界でも一緒です。

例えばポジティブ心理学の創始者である
セリグマン教授は、
幸福と健康を研究していますが、
あまり朗らかな感じではありません。

心療内科の創始者である池見酉次郎先生も
心と体のつながりの重要性を研究していましたが、
当の本人は笑顔がなく、とても神経質で、
心や人間関係の重要性を説いている割には、
人との関わりは下手でした。

でも二人とも世界的権威であり、
心理や医療の世界に
大きな革命を起こしたといっても
過言ではない程の人物です。

そんな高名な先生でも、
自分の研究分野で言っていることを
必ずしも実践できるとは限らないのです。
それは研究と実践とは
全く次元の違うものであるからに他なりません。

もちろん中には、
学者であり実践家という先生もいます。
このような先生は二刀流であり、
とても優れた才能に恵まれた人だと思います。

しかし、たいていの人は程度の差こそあれ、
研究と実践のどちらか一方は優れていても、
どちらかはあまり得意ではないという場合が
ほとんどではないでしょうか。

でもそれでよいのです。
一人ですべてができるわけではなく、
自分の得意分野で協力し合いながら、
一つの学問や体系が作り上げられていくのですから。

ただ、有名になるのは明らかに学者の方です。
論文をたくさん書くので、
それで名前は知られます。

一方、実践家の人は
学者ほど論文を書かない傾向にあるので、
名前が知られる機会が明らかに少なくなります。

そのため有名な先生であるにもかかわらず、
実践となるとあまり上手ではないという現象が
起こってしまうのだと思います。

あらためて、学者と実践家の関係性について
考えさせられてしまいました。