ブログ:些細だけど重要なこと

最近、病棟で、
患者さんの退院に関する方針につてい
私とナースの意見が対立し、
なかなか話しがまとまらない
ということがありました。

ナースは病棟の現実を
十分に理解していないと思われたので、
過去10年間の入退院のデータを出し、
いくつかのシミュレーションの結果を
数字にまとめたりして、
資料を作って説明したのですが、
全く理解してもらえませんでした。

特に、口の悪いあるベテランナースからは、
「先生とは絶対にわかり合えませんね」
と言い放たれてしまいました。

私としては話し合うことで
溝は埋まると思っていたのに、
突然、断交状態になったような気分で、
その後しばらく
悶々とした日々を送っていました。

その話し合いから数日後、全く別のことで
例のベテランナースが、
私と短いやり取りをする機会がありました。

それは、たまたま病棟に、
病院広報誌の最新号が届き、
そこに私の記事が写真入りで載っていました。

すると彼女は、その写真を見ながら
「一体、いつの写真使っているのよ!」
「二年前や!」
「うそ~修正入れてるんじゃないの」
そんなやり取りが二、三回続いた後、
最後は、「先生は、写真写りだけはいいわよね」
という言葉を吐いて立ち去っていきました。

「だけ」という言葉には、
ややトゲを感じたものの、
それでも、こんな形であれ、
彼女と会話を交わしたことは事実です。

たったそれだけの会話だったのですが、
なぜか、今までの彼女に対するモヤモヤが
一気に引いていくのを感じました。

あまり好きではないと思っている人がいると、
その人も自分のことを
好きではないにちがいないと
思ってしまうクセが、人にはあります。

ちょっとしたもめ事やトラブルがあると、
ついそう感じてしまうのは
誰でも経験していることだと思います。

そんな時に、その相手から、
たわいもないことでも、話しかけられたりすると、
「自分は嫌われているわけではなかったんだ」と
ふと、気持ちが楽になるものです。

嫌いな人には、必要なこと以外は
敢えて話しかけたりはしませんので、
逆に話しかけられたということは、
それ程気にしているわけではないという
メッセージでもあると理解できます。

「先生とはわかり合えない」と
断言していたナースでしたが、
それ以来、彼女へのわだかまりの感情は
ほとんどなくなり、とても楽になりました。

同時に、棚上げになっていた退院問題の件も、
なぜか「しばらくはナースの思い通りに、
やってもらってもいいか」という
気になってしまったから不思議なものです。

感情が緩むと、思い込みも緩むものなんだと
今さらながら実感できた瞬間でした。

実は、逆の立場の経験もありました。
以前、私の誤解からあるナースを、
強く批判をしてしまったことがありました。
後日、それが私の
誤解によるものだとわかりました。

そんなことがあってからというもの、
彼女は一切私を無視するようになったのです。
とても居心地の悪い日々が
一週間ほど続きましたが、
私の誤解だったとわかったので、
私は彼女に謝りました。

すると、その後からは、
彼女の態度はガラッと変わりました。
きっと、彼女の心のわだかまりが
一気に氷解したのだと思います。

あれほど無視を決めつけ、無表情だった彼女が
いきなり笑顔で話しかけてくれるように
なったではありませんか。
この変わりようには、私もびっくりしました。

その事件があってから、
彼女とは、それまで以上に親しくなり、
よく酒を飲みに行くようにもなりました。

今回の事件を通して、
ちょっとしたことでもよいので、
話しかけたり声かけをしたりすることの大切さを
あらためて感じました。

誰かと嫌なことがあり、
悶々とした気分が続く場合、
その人に対して、どんなことでもいいので、
ちょっとした声かけをしてみる、
そんな些細なことで、
その人とのわだかまりは一気に
うすれるものです。

ぜひ、皆さんも試してみて下さい。

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