ブログ:ジェネリックは効かない!?
医療関係の会議の席上で、
ある医師がおもむろに発言をしました。
皆さんは、ジェネリックが効かないという
経験はありませんか?
ジェネリックとは
特許の切れた医薬品(後発品)のことです。
例えばロキソニンという
鎮痛剤のジェネリック医薬品は
ロキソプロフェンナトリウム錠や
ロブ錠といったものが存在し、
同様のものが色々なメーカーから
30数種類以上も出ています。
当然のことながら
ジェネリックは先発品よりも安く買うことができます。
先程のロキソニンは1錠が17.5円であるのに対して
ジェネリックでは5.6円~9.6円という具合です。
国の働きかけもあり、今、病院では
ジェネリックへの変更を積極的に行っています。
先発品よりも安い薬を使うことで、
少しでも医療費を軽減しようという狙いがあるため、
盛んにジェネリックへの変更を促しています。
ジェネリック発言をしたその医師は、
ある患者さんに
「このジェネリック医薬品が全く効かない」と言われたので、
病院の薬剤部に言って、
他のメーカーのものに変えてもらったと言うのです。
さらに「皆さんもこれは効かないと思った
ジェネリックがあったら、
薬剤部に言ってください、変更してもらいますから」と
自信満々に言っていました。
ジェネリックの有効成分は先発品のものと同一なので
本来ならば同じ効果が出るはずだと考えられていますが、
実際には異なります。
それは、薬を製造する過程で
使用する添加物が異なっていたり、
企業による製造方法や技術力の違いがあるため、
全く同じものを作るというわけには
いかないことが多いようです。
そのため薬の溶け方や効果の出方が
異なるということは十分に考えられます。
実際、効果に関しては先発品に比べ
統計学的には±20%の範囲であれば
差がないと判断されます。
これは、8割程度しか効き目がなかったとしても
その程度ならば有効性は同じと判断されるということです。
ただ実際には、薬効にもっと
大きな影響を与えるものがあります。
それがプラシーボ反応(効果)です。
プラシーボ反応とは、
例えばデンプンの粉を
痛み止めだと説明し飲んでもらうと、
半分程度の人は痛みが軽減します。
このときに使うデンプンの粉のような
薬効が全くないもののことを
プラシーボ(プラセボ)と言い、
その結果による症状の改善を
プラシーボ反応と言います。
つまり薬を飲むことによる
安心感や期待感という心の状態が
体の治癒力(自然治癒力)に影響を及ぼし、
症状を改善させる反応だと言うことができます。
逆に不安や緊張といった心の状態は
体の治癒力の働きを抑制するため、
症状を悪化させる可能性があります。
この薬は効かないのではないかという不安や猜疑心は
薬の効果を帳消しにしてしまったり
吐き気や眠気などの副作用を
引き起こしたりする可能性もあるということです。
このプラシーボ反応による影響は
30~60%と言われており、
薬効にもかなりの影響があることがわかっています。
特に痛みやうつ、不安、不眠といった症状には
顕著に影響が現れます。
簡単に言うと、
ある痛み止めを飲んで
痛みが治まったという人が80%だったとすると、
そのうちの最大60%分、
つまり3/4がプラシーボによる効果であり、
残り1/4の20%が実際の薬の効果ということになります。
つまり、薬の効果に関しては
プラシーボ反応による改善効果を
無視することができないのです。
これは薬全般に言えることであり、
ジェネリックであろうが、
ジェネリックでなかろうが同じことです。
要するに、プラシーボ反応を考慮することなく
ジェネリックが効くの効かないのという議論は
あまり意味がないということです。
プラシーボ反応による効果が30~60%もある限り、
ジェネリックを飲む患者さんが
それを肯定的に受けとめているのか
否定的に受けとめているのかによって、
結果は大きく違ってきます。
安いワインでも高いワインだと思って飲むと
おいしく感じるのと一緒です。
ジェネリックが効かないと
患者さんが言っていたからといって、
この薬は効かないと考えるのは
あまりにも短絡的過ぎるのです。
もっとも、
人には自分に都合のよい意見ばかりに目が向き
都合の悪い意見は無視するという思考のクセがあります。
これを「確証バイアス」と言います。
この医者も、
ジェネリックは効かないと思っている派だったので、
自分の意見と一致した患者さんの発言に接すると
「ほら、やっぱりそうだ」と思ってしまったのでしょう。
私からすれば、この先生の発言は、
プラシーボ反応の影響力のことを無視し、
「確証バイアス」にどっぷり浸かった
何の説得力もない発言に聞こえたのですが、
皆さんはいかがでしょうか。