私がホリスティック医学協会に
かかわり始めてから、
はや30年が経ちました。

まだ協会が正式に設立される前から、
ホリスティック医学の考え方に興味があり、
たまたまホリスティック医学協会が
正式に立ち上げられるという情報を知り、
その時から関与し始めました。

ホリスティック医学の定義は以下の通りです。
1,ホリスティック(全的)な健康観に立脚する
2,自然治癒力を癒しの原点におく
3,患者は自らを癒し、治療者は援助する
4,様々な治療法を選択・統合し、
最も適切な治療を行う
5,病の深い意味に気づき、自己実現をめざす

文章としてはとてもシンプルですが、
意味するところはかなり深いものがあります。
また、人によって解釈の仕方は大きく変わります。

ホリスティック医学はつながりや全体性を
大切にしており、従来の発想である
部分の寄せ集めが全体となるという視点に
疑問を呈しています。

つまり、人間を臓器、組織、細胞、分子と、
いくら細かくして見ていっても、
全体を理解することはできないという考え方です。

さらには言えば、心と体を切り離して
考えることもできなければ、
自分を取り巻く環境や人間関係を無視して、
健康や病気を語ることもできないということです。

なぜならば、それらはすべて、
心や体に大きな影響を及ぼしているからです。

要するに、ホリスティック医学とは、
このようなつながりや全体性の視点を
大切にしつつ、
個々の問題や健康、病気といったものを
考えていこうとする医学です。

ところが、今はホリスティック医学というと、
なぜか自然治癒力や代替療法の
ことばかりが注目され、
あたかも代替療法で自然治癒力を高め、
それで病気を治すのが
ホリスティック医学であるかのような
言い方をされることも少なくありません。

これでは単なる「寄せ集め医療」であり、
今盛んに言われている統合医療も
その意味では似たり寄ったりの状態に
陥っています。

私が今、最も懸念しているのが、
治療偏重の傾向と関係性の軽視です。

西洋医学的治療にせよ代替療法にせよ、
医者や治療者が患者さんを治療するという
ことばかりに目が向けられている限り
それはホリスティックな視点ではないと
私は思っています。

これでは風邪をひいた患者さんに
風邪薬を処方する普通の医者と
何ら変わりありません。

自然治癒力に注目するのはよいのですが、
第三者的治療により
自然治癒力を高めるという視点は
本来的ではありません。

あくまでも、第三者的なかかわりは
補助的なものであり、きっかけに過ぎないことは、
定義3でもしっかりと述べられています。

あくまでも、患者自らが何かに取り組むことで、
自己治癒力を高めていく方向に進むように、
治療者がかかわっていくのが
本来のホリスティックな視点なのです。

もちろん、最初から患者さんに
自主的に食事や運動、生活習慣に気をつけ、
それらに取り組んでもらうことを
期待しても無理です。

だからこそ治療者が患者さんに
そのような方向に目が向くよう、
またそのようなことに取り組めるように
かかわっていく必要があるのです。

そのためには医者患者関係、
つまり治療者と患者さんとの関係性は
極めて重要になってきます。

治療者とのよい関係性があるからこそ、
患者さんも治療者を信じ、言われたことに
取り組んでみようという気持ちにも
なるのだと思います。

さらには運動や食事、ストレスといったことにも
取り組んでみようという気にさせるような
治療者のかかわり方や説明の仕方も
必要になってきます。

そのような視点を持ちながら、
患者さんの治療に携わっている
治療者がいたとしたならば、
その人は西洋医学の医者であろうが、
代替療法家であろうが、
十分ホリスティックな視点を持った
治療者であると言えます。