私はセミナーで、
クライエントの悩みや問題を解決するための
考え方や具体的なアプローチについて
長年教えてきました。

ところが最近、
自分が教えていることに
矛盾を感じるようになってきました。

それは何かというと、
私は問題を解決すると言いながら、
実は問題解決を目指してはいません。
何をしているのかというと、
問題解決のきっかけとなる希望や可能性に
やんわりと目を向けてもらうことを
しているだけなのです。

実際の問題解決は
クライエント自身がするわけであり、
私はそれがしやすくなるように
「心の治癒力」を輝かせるスイッチのいくつかを
ONにするという作業をしているだけであり、
あとはただクライエントを見守っているだけです。

ですから問題解決を
目的としているわけではありませんし、
問題を解決しようとも思っていません。
逆に、問題を解決しようと思うと、
かえってうまくいかないことも知っていますし、
それはしてはいけないとセミナーの中でも
よく言っています。

にもかかわらず普段は
あたかも問題解決のための
コミュニケーションスキルを
教えているかのようなことを言っています。

そのように言った方が
一般の人には伝わりやすいし、
間接的には問題解決につながるアプローチなので
全くウソを言っているわけでもありません。

でも、問題解決のための
コミュニケーションを教えると謳っておきながら、
実際には問題解決を目的としていないというのは、
明らかに矛盾です。

もっとも心療内科時代は、
まさに問題解決のための
アプローチをしていました。

問題の背後には、問題を問題としてしまう
クライエントの思い込みがあります。
例えば「自分にもっと自信を持つべき」とか
「主人はもっと優しくなるべきだ」
といった具合です。

このような思い込みがネックとなり、
悩みや問題が生じるため、
いかにして、これらの思い込みを
うまく緩めたり、変えたりするかが
腕の見せ所でした。

さらに、行動に変化をもたらすような
仕組みをうまく設定することで行動を変え、
さらにその行動を通して、
思い込みを変えるという試みもしてきました。

最も基本的なやり方は
これならできるかもしれないという、
ほんの小さな行動を促すというやり方ですが、
他にも「敢えてパニックを起こした方がよい」
といったような
逆説的アプローチもよく使いました。

昔はそのような治療的テクニックを駆使して
患者さんが劇的に変わるためには、
どんなことをしたらよいかということばかりを
考えていた気がします。

しかし実際には、
このようなテクニックで
劇的な変化をもたらすというのは、
めったにありません。

たまには一回のアプローチで
長年の問題が解決したり、
状況が一気に変わることもありましたが、
これは様々な条件がたまたまそろって
うまくいっただけのことなのです。

現実のケースでは
緩やかによくなっていく患者さんの方が、
圧倒的に多かったです。

今やっていることは、
テクニックを使って
その人の行動や思い込みを変え、
一気に問題を解決しようとするのではなく、
問題解決につながるであろう
思いや行動のヒントを
さりげなく無意識レベルに落と込んでおく、
そんな感じでしょうか。

ですから、クライエント自身も
ほとんどの場合、
こうすれば問題が解決するといった
明確な解決策を手にするわけではありませんし、
がらっと思い込みが変わり、
問題が解決したと感じることもありません。

なんか知らないけども、
少し気持ちが楽になったと
いった程度の変化ですし、
日常に戻っても
さほど大きな変化を感じることもないと思います。

でもそれでよいのです。
無意識レベルへの働きかけをしたことで、
意識することなく
今の問題に変化をもたらすような思いや行動を
クライエントが自ずと取るようになるからです。

その結果、知らず知らずのうちに
少しずつ気持ちが楽になり、
いつの間にか問題が問題では
なくなっていくというわけです。

こんな考え方に基づいてやっているのが、
ホリスティックコミュニケーションなのです。

決して問題解決などという
大それたことを目指してるのではなく、
あくまでも「心の治癒力」のスイッチを
ちょっと押すということをしているだけなのです。