前回は、「巻き込まれる」ということについて
お話しをさせて頂きました。
その際、セラピストが怒りや不快感といった
悪感情を抱いてしまったならば、
これは巻き込まれそうになっているサインだと
言いましたが、逆のパターンもあります。

「このクライエントを何とかしてあげたい!」
「自分だったら彼女のことを助けてあげられる!」
といった強い使命感のような思いを
クライエントに抱いた場合、
これも「巻き込まれ」のサインなのです。

これは、怒りや不快感とは
正反対の感情なのですが、
自分自身の感情がうまくコントロール
できなくなっているという意味では同じです。

もちろん、クライエントに対してセラピストが
「何とかしてあげたい!」と思うのは
ごく自然なことなので、
その思いを持ってはいけなと
言っているわけではありません。

クライエントに対する思いが強すぎて、
客観的な視点でクライエントを
見られなくなることが問題なのです。

ときには、クライエントに対する
不憫さや愛おしさが極まり、
恋愛感情に発展することもしばしばです。

事実、セラピストが患者さんと恋愛関係になり、
結婚に至るということも少なからずあります。
それで幸せな家庭が築けたのであれば、
ハッピーエンドとなり問題はありませんが、
現実はそう単純ではありません。

何とかしてあげたい!という思いから、
セラピストはクライエントに
何時間も話を聴いてあげたりして
あれこれと一生懸命尽くすようになるのですが、
その一生懸命さがクライエントの依存性を
生むことになります。

セラピストも最初のうちは
頼られていることに喜びを感じますが、
依存心が強くなってくると、
次第にセラピストが
負担を感じるようになってきます。

そうなると今度は、
少し距離を持とうと思うようになり、
多少突っぱねるような対応をするようになります。

そのような対応の変化は、
当然クライエントは敏感に感じ取り、
以前にも増して、より依存的になってきたり
自分に目を向けてもらうために、
ちょっとしたトラブルを起こし、
セラピストを困らせることで
気を引こうとしたりするようになります。

するとセラピストは
よりクライエントから
離れたいと思うようになるため、
ときには怒ったり、
冷たい態度を取ったりするようになります。

ある程度、自分のことを
客観的にみられるクライエントであれば、
このあたりで、そのセラピストから
離れていこうとするのですが、
依存性の強いクライエントの場合は、
次第にトラブルの頻度や程度が
増していきます。

こうなると、もう収拾がつかなくなり、
セラピストもかなり苦労することになります。

だからこそ、最初の段階から、
客観的な視点を忘れずに、
適度な距離間をもって関わることが重要なのです。

共感については先週のブログでも話をしましたが、
共感に重きを置きすぎると
ときに巻き込まれてしまうことになるので、
その意味でも共感は要注意と言うことになります。

この「巻き込まれる」状態というのは、
何も異性間だけに起こることではなく、
同性間でも当然起こります。
「何とかしてあげたい!」という思いが
強くなりすぎると、
異性であろうが同性であろうが、
どんな年齢であろうが関係なく起こるものです。

以前、私の患者さんが
他のセラピストのところに
行ったことがありました。

そのセラピストから私のところにメールがあり、
少し情報が欲しいと言ってきました。
彼女は一般のセラピストが対応できるような
柔な患者さんではなかったので、
「巻き込まれることになるので、
かかわるのはやめた方がいいですよ」と
アドバイスしました。

するとそのセラピストから
「バカにしないで下さい!私もプロです!」と
怒りの返信が来ました。

それでしばらく音信不通になりましたが、
その一年後、謝罪のメールが来ました。
彼女にさんざん振り回され、
どうにもこうにもならなくなり、
仕事も私生活も
メチャクチャになってしまったというのです。

クライエントにもよりますが、
一生懸命になりすぎるとこうなってしまうのです。

クライエントとかかわるときは
信頼関係を築くことを大切にするとともに、
適度な距離間と客観的な視点を
忘れてはいけないと私はいつも思っています。