前回、お話しさせて頂いたように
私たちの日常における判断や行動は
無意識からの情報によって
決められていると言っても過言ではありません。

その無意識の情報は
過去の経験や知識、
文化や環境、周囲からの影響など、
様々なものから収集され、
蓄積されています。

もちろんすべてを取り込んでいるわけではなく、
自分にとって都合のよいものや心地よいもの、
逆に避けるべきものなど、
自分が生きていく上において必要だと
判断したものを脳は取り込んでいます。

その際の判断基準は何なのでしょうか。
実はそこには、正しいとか間違っているという
客観的な判断基準は何もなく、
あくまでも本人自身の
勝手な解釈があるだけなのです。

つまり脳の無意識に蓄えられている
すべての情報には、
自分の「思い込み」という色が
しっかりとつけられているのです。

例えば、犬に噛まれたという経験がある人は
犬は人を噛む怖い動物だという
自分の解釈に基づく情報がインプットされるため、
道端で犬に出くわしたりすると、
無意識は瞬時に
「怖い!逃げろ!」という判断をするため、
すぐさま逃げるという反応を
してしまうのです。

その一方で、小さい頃から家で犬を飼っていた人は
犬は可愛い動物だという「思い込み」が
神経回路に織り込まれているため、
右端で犬に出くわすと、つい可愛いと思い、
傍によりたくなってしまうのです。

このように、無意識に蓄えられている情報には
すべて自分の解釈や思い込みも一緒に
保存されています。
そうであれば、過去の知識や経験と
セットになっているその思い込みを
書き換えることができれば
過去をも変えることができるというわけです。

もちろん、過去の事実は変えられませんが、
それに伴う解釈や思い込みを
今現在の自分が変えることは可能です。

ではどうやって書き換えればよいのでしょうか。
そこで大切なのは
ネガティブな思考や感情を
直接なくそうとしないということです。

そうではなく、
ネガティブな思考や感情はそのままにしておき
その一方でポジティブな思考や感情を
少しずつ取り込み、それを強化、吸収することで
脳の神経回路を新たに作っていくという作業を
していけばよいのです。

これは日々の日常において、
ほんの小さな「心地よいこと」や
ちょっとした「うれしかったこと」、
「よかったこと」や「ありがたかったこと」を
自分の中でじっくりと味わう練習を
していけばよいのです。

このような体験の繰り返しにより、
ポジティブな視点や感覚につながる
脳の神経回路が次第に発達してくるため、
ポジティブな視点で
物事を見たり考えたりすることが
容易にできるようになるというわけです。

そうなれば、過去の嫌な体験や
トラウマになっている出来事に対しても
違った見方や解釈ができるようになり、
自ずと過去は変わっていくというわけです。

実は、このような考え方は
日本では以前から知られていました。
日本発祥の心理療法である森田療法や内観療法は、
まさにこの視点に基づいた心理療法ですし、
禅の考え方や、
そのつながりで現れたマインドフルネスも
同じような視点を持っています。

つまり、問題となるネガティブなものに
直接働きかけ、
それを追い出そうとするのではなく、
ポジティブな感覚を膨らましていくことで
相対的にネガティブなものを
少なくしていこうという視点が
これらの心理療法の根底にははあります。

私はこの考え方が昔から大好きでしたし
そのような視点に基づいて
患者さんの治療もしていました。

そうすることで、無理なく患者さんの思いに
変化をもたらすことができるし、
問題に直接アプローチするような
強引なやり方よりも
ずっと自然でマイルドなので
その方がよりスムーズに、より効果的に
治療をすることができました。

皆さも、この方法を使って
過去を変えてみませんか。