よく、辛い状況に直面し、
どうしてよいのかわからず途方に暮れている人に、
何とかその人を勇気づけようと、
「大丈夫、あなたなら絶対に乗り越えられる」
「困難はあなたを成長させるもの」
「神様は乗り越えられない苦悩は与えない」
などと言う人がよくいます。

私は、この言葉が嫌いなのです。
もう少し正確に言うならば、
言葉の意味するところは好きないのですが、
これを、困難な状況の真っ只中にいる人に、
どうして言ってしまうの?!
と思ってしまうのです。

つまり、苦しんでいる人に
このような「きれい事」を言うことが
私は嫌いだという意味です。

最近はやりの言葉に、
心的外傷後成長(PTG)というものがあります。
これはがんになったり、愛する人を亡くしたり、
大きな困難に直面し辛い思いをした人は、
その後、様々な気づきを経験し、
以前よりもより成長するという概念です。

人は辛い経験を通して
多くのことを学び成長するということは
よくわかります。

しかし、それは困難を乗り越えた人が、
自分の辛かった経験を振り返ったときに
初めてわかることであり、
辛い経験の中でもがき苦しんでいるときは、
学びや成長なんてどうでもいいから、
とにかく一時も早くこの苦しみから
抜け出たいと思うのが
普通なのではないでしょうか。

ところが、普通の日常を送っている人からすると、
「困難が人を成長させる」という言葉は、
気の利いた「いい言葉」に聞こえるので、
これを苦難逆境のど真ん中で、
今、まさに苦しんでいる人に教えてあげれば、
きっと元気が出るに違いないと
大きな錯覚をしている人が少なくありません。

言われた方にしてみれば、
頭では理解できるかもしれませんが、
気持ちがついていきません。

ましてや、困難もないごく平凡な日常を
過ごしている人から言われると、
「私の苦しみなんかわからないくせに、
そんな無責任なこと言って欲しくない!」と
心の中で叫びたくなるのも
無理からぬことでしょう。

深い意味が込められた言葉はたくさんありますが、
それを伝えるときの
タイミングというもを間違えると、
かえって相手を傷つけてしまう
ことがあるという事実を
私たちは肝に銘じておく必要があります。

往々にして理想論的な言葉は
知識としては役立ちますが、
実際には使えないこともしばしばです。
そんなこともあり私は、
きれいすぎる言葉を
あまり好きにはなれないのです。