ブログ:安楽死と尊厳死
大学での緩和ケアの授業(前期)は
「安楽死と尊厳死」の話で
締めくくりました。
一般の人でも安楽死と尊厳死の区別が
よくわからなかったり、
リビング・ウィルや鎮静という言葉を
知らない人も多いのではないでしょうか。
簡単に言うと、
安楽死は致死的な薬物を投与して
患者さんを死なせることです。
ただし安楽死を認めている国でも
医者が直接薬物を投与して死なせる安楽死は
違法としているところが多いようです。
一般的な安楽死の方法は、
致死的な薬物を患者さんに手渡しておき、
自分が好きなときに
いつでも飲んでいいとするやり方です。
ですからこの場合は
必ずしも医者が立ち会う必要はありません。
一方、尊厳死は
苦痛を可能な限り軽減し、
無用な延命治療はせずに、
自然の流れの中で穏やかに
死の訪れを待つというものです。
授業では先ず、
こんな質問をしました。
自分の親が回復困難な末期がんになり、
苦しいから早く死せて欲しいと
懇願している場合、
あなたは主治医と相談した上で、
意識を低下させる薬物を投与し、
そのまま亡くなるのを待つことは
認められると思いますか?
この質問に対して
認められると答えた学生は45%、
認められないと答えたのは55%という
結果でした。
これは「鎮静」という方法であり、
眠りが深くなれば昏睡となり、
その先には当然死が待っています。
鎮静は安楽死ではなく、
苦痛を緩和する手段のひとつであり
あくまでも尊厳死なのです。
苦しんでいた患者さんが
穏やかに眠ることになるので、
見ている家族のほとんどは、
楽そうになってよかったと言います。
もちろん、むやみやたらと
鎮静ができるわけではなく、
実行するためには
いくつかの要件があります。
1,耐えがたい身体的苦痛がある
2,死が切迫している
3,苦痛の除去・緩和する他の手段がない
4,患者の意思にかなっている
ですから何もしなくても
数日~1週間程度で亡くなることが
予想される人が対象になります。
通常の対応では
緩和できない身体的苦痛で多いのは、
身の置き所がないだるさです。
死に近づけば近づくほど
身体のだるさは強くなりますが、
意識レベルが下がらない限り、
この苦痛を軽減させることは
通常できません。
そんなときには鎮静が必要になることがあり
緩和ケア病棟でも時々しています。
また、余計な延命措置は望まないという場合
そのことを意思表示する手段もあります。
それがリビング・ウィルです。
これは「生前発効の遺言書」であり、
以下の内容のことが書かれています。
1,不治かつ末期になった場合、
無意味な延命措置を拒否する
2,苦痛を和らげる措置は
最大限に実施してほしい
3,数カ月以上にわたり
植物状態に陥った場合、
生命維持措置をとりやめてほしい
私の財布にも常に
リビング・ウィルは入っています。
これを持っていれば、
たとえ昏睡状態になり、
意思表示ができなくなっても
ほとんどの医者は延命措置を
中止してくれると思います。
ただし法的な拘束力がないため、
尊厳死のことをよくわかっていない医者が
無用な延命措置を続けてしまう可能性は
否定できません。
