ブログ:なごみの道
今回は茂木健一郎著、
「なごみの道」(早川書房)の内容について
紹介させて頂きます。
この本は、
茂木さんが英語で出版した2冊目の本を
日本語にして出版した逆輸入本です。
ですから対象は外国人であり、
日本人のアイデンティティの根底にある
「なごみ」という概念を
様々な視点から説明しています。
私たちは「なごみ」と聞くと
安らぎや落ち着きといった
心の状態を表す言葉だと受け取ります。
しかし茂木さんは
この言葉をもっと深掘りし、
たくさんの日本文化や日本人の特性を
例を挙げながら説明しています。
もともと「なごみ」には異なるものを調和させ、
バランスを取るという意味合いが含まれており、
これが日本人の創造性の源にもなっています。
例えば「ごはん」こそ、
日本料理の「なごみ」の精神の
神髄だと言います。
日本のほとんどの料理は
「ごはん」にあう「おかず」があります。
旅館の朝食は、
漬物、海苔、焼き魚、納豆、卵など
様々なものが並びますが、
これらはごはんと一緒に食べることで
その真価を発揮し、
おいしくなるように工夫されています。
ここにはまさに、
最高のハーモニーがあり、
「なごみ」の精神が見事に
体現されているというのです。
「日本酒」と「あて」も同様であり、
酒は自分を主張せず、
他の様々な食材の味とうまく調和する
卓越した能力を特徴としています。
まさに「なごみの道」そのものです。
さらに「腹八分目」の精神は
「健康のなごみ」とも言えます。
つまり、「腹八分目」の精神で
食事をするということは、
もっと食べたいという欲求との「なごみ」を
確立することなのです。
一方、「自己のなごみ」というものもあり、
その精神は「匿名性」に表れています。
個人の創造性を重視し、
作者の永遠の名誉を
志向する傾向のある欧米に対して、
日本では匿名こそが社会的に受け入れられ、
ときに創造性の最高の形ですらありました。
その最たる例が国歌である「君が代」です。
「君が代」の歌詞は、
古今和歌集に収められた
「よみひとしらず」の歌に基づいています。
すなわち作者不明の和歌が、
国歌「君が代」の歌詞になるという流れが
生まれうるのです。
この匿名性は、
社会における「自己のなごみ」の
美しい例であり、
創造の結果としての社会的な評価や名声が、
必ずしも特定の個人と結びつかないという
奥ゆかしさをここに見ることができます。
また森林浴は、森林の中に身を置き、
それと一体化することで
自分自身と周囲との「なごみ」を
達成するという生き方に通じます。
このような周囲と一体化するという
価値観や倫理観は、
日本において大切だとされる様々なことの
根底にあるものなのです。
さらに日本人のユニークな宗教観も
「なごみ」そのものです。
元旦には神社に初詣に行き、
キリスト教式の結婚式を挙げ、
葬式は仏教式で行なうというのは
日本ではごく一般的な振る舞いです。
日本の多くの人々にとって
異なる宗教の伝統を取入れることに
問題はなく、
むしろ「なごみ」そのものだと
考えられているのです。
このような「なごみ」という考え方を
生活の中に定着させるような学びや努力が
まさに「なごみの道」なのです。
興味のある方は是非
「なごみの道」をお読み下さい。
