ブログ:10年に一度の大事件!?
10年に一度くらい
他院や一般病棟から緩和ケア病棟に
転棟してきたにもかかわらず
納得がいかず再びもとのところに
戻ってしまう患者さんがいます。
そんな患者さんが先日、
久しぶりにいました。
他病院から紹介された患者さんでしたが
緩和ケア病棟に入ってから
内服していた薬の件で
食い違いが生じました。
その患者さんは抗生剤を飲んでいたのですが
今は全く飲む必要はない状態でした。
実際、前主治医も「おまじない」ですと言って
通常は食後に1錠ずつを
1日3回飲む抗生剤を
1日1回半錠、
それも1日おきに飲むという形で
処方されていました。
当然、意味も効果もありませんし、
飲む必要もなかったので、
その説明をしたうえで内服を中止しました。
本人はそれでいいですとのことでしたが、
どうも家族が納得できなかったようです。
結局、イメージと違っていたので
はやり元の病院に戻りますと言って
翌日、戻ることになりました。
患者さんの家族は
私の「緩和医療と心の治癒力」という本を
持っており、付箋もついていました。
きっと大いに期待を抱きながら
うちの緩和ケア病棟に来られたのでしょうが、
私の話を聞いて書いてあることと違う!と
思ったに違いありません。
なぜならば本には、
患者さんの思いに寄り添った対応をすると
書いているにもかかわらず、
今回の対応は患者さん(家族)の思いに
全く添った対応ではなかったからです。
今回のことを通して
いろいろと考えさせられました。
緩和ケア病棟に入院する患者さんは
すべて末期がんであり、
半分の人は2週間以内に亡くなり、
4分の3は1ヶ月以内に亡くなります。
そんな状態ですので、
薬を飲むのも負担になるため
コレステロールや痛風の薬など、
今は飲む必要が全くないものは
できるだけ切るようにしていました。
今回の患者さんの抗生剤もそうです。
全く飲む必要がない薬でしたが、
患者さんや家族にしてみれば
「おまじない」としての役割が
あったのです。
以前であれば本人や家族に確認し、
内服を希望した場合は
その思いを尊重していました。
しかし少しずつ考えが変ってきました。
医者から処方された薬は
ちゃんと飲まなければいけないと思い込み、
食事も食べられないのに、
不要な薬だけは飲み続ける患者さんを
たくさん見ているうちに、
不憫にさえ思うようになったのです。
そのため、
あるときから不要と思われる薬は
積極的に切る方向で話をするように
なりました。
そのうち、
患者さんにとっては
プラシーボとしての意味がある薬でも
不要だと思われる薬は多少強引でも
切るようになってしまいました。
そのような対応が当たり前になり、
また、それで問題になることもなかったため
今ではそれが当然のことになっていたのです。
ところが今回、
それが問題になってしまいました。
今考えると配慮がなかったと思えますが、
人は慣れてしまうとその行為に
何ら疑問を感じなくなってしまうのが
恐いところです。
一日おきに半錠のむ抗生剤など
飲んでも飲まなくても
全く問題にはならないので、
そうであれば本人の希望どおり
「おまじない」を処方し続けていれば
よかったと今さらながら反省しています。
今回の経験を機に、
もう一度、不要な薬の切り方を
考え直そうと思いました。

末期ガンだった父が、食事も摂れないのに多量の薬を「ドクターの指示だから」と律儀に服用していたのを思い出しました。痴呆もあったので、水なしでバリバリ噛んで…娘として、何とも切なかった思いでした。
末期がんなのに不要な薬を飲み続けているケースは
非常に多く見られます。
医者は薬を増やすのは得意ですが、
薬を減らすのはどうも苦手なようです。