ブログ:余命告知のウソ
医者から「あと3ヶ月くらい」とか
「サクラは見られないかもしれない」と
言われたという人の話はよく聞きます。
これが余命告知です。
有効な治療法がなくなり
あとは緩和ケアに行くしかありませんと
突っぱねられるような末期がんの患者さんは
本人や家族に余命告知がされることは
よくあります。
では、この余命とは
どのように決められるのか
皆さんはご存じでしょうか。
中には、全国のがん患者の
統計データをもとにして、
この状態の人の余命はこれくらいだと
割り出されていると思っている人も
いるかもしれません。
しかしそれは違います。
ではどうしているかというと
「当てずっぽう」です。
言ってしまえば、
その医者の主観や印象であり、
なんら根拠などありません。
もちろん、がんのステージ別の
5年生存率という統計はあります。
例えば、膵臓がんですでに転移がある
ステージ4の患者さんが、
5年生きられる確率(5生率)は
3%程度だと言われています。
しかし、
ステージ4の膵臓がんの患者さんが、
「97%の人は5年以内に亡くなります」
と言われても、
自分は97%に入るのか3%の入るのかなんて
わかるわけがありません。
ましてや5年以内で亡くなると言われても、
4ヶ月も4年もどちらも5年以内ですから
これではどれくらい生きられるかについては
何も言っていないのと同じです。
そんなこともあって、
とりあえず余命告知をする場合には、
目の前の患者さんの病状からみて、
あとこれくらいかな~と、
そのときの思いつきや印象で
答えるのが普通なのです。
実際には、3ヶ月とか半年といった
はっきりした数字で言う場合もあれば、
3~6ヶ月くらいと、
幅を持たせて言う医者もいます。
もちろん、実際にはわからないので
「わかりません」と
そのまま言う先生もいます。
一方、余命告知を望まない患者さんも
少なくありません。
人は最後まで希望を持ち続けたいものです。
「あと3ヶ月」とか言われてしまうと、
どうしてもその数字が頭に残ってしまい、
3ヶ月後から逆算して、
俺の命はあと○日かと考え、
それが頭から離れなくなってしまう人が
少なくないのです。
いずれにせよ、
確かな根拠のない数字に
残りの人生を振り回されないためにも、
私ははっきりと数字を言うのは
あまり好みません。
ただし、はっきり言ってあげた方が
よい場合もあります。
以前、50代の肝臓がん末期の患者さんで、
一人暮らしの男性がいました。
彼から何度か、
自分は後どれくらい生きられるかを
たずねられましたが、
わからないとしか言いませんでした。
ところが、再びたずねてきたときに、
どうしてそんなに聞きたいのか
その理由をたずねてみたのです。
すると、こんな答えが返ってきました。
あとどれくらい生きられるのかがわかれば、
残っているお金を計画的に
使うことができるからです。
そう、彼は貯金を
今はどれくらいまでなら使っていいのかが、
わからなくて悩んでいたのです。
あと1ヶ月ならば心配なく使えますが、
あと6ヶ月と言われたら、
家賃のことなども考えながら
大切に使わないといけなくなると
思っていたようです。
そのため彼には、
自分の予想をはっきりと伝えました。
私は3ヶ月くらいかなと思っています、と。
すると彼はホッとした表情をして、
「それを聞いてお金の心配をせずに、
残された時間を過ごすことができます。
ありがとうございました」
と言ってくれました。
この経験から、
余命がどれくらいかを聞いてくる人には
なんで聞きたいのか、
その理由についてたずねるようになりました。
ただし、大半の人は明確な理由はなく、
何となく知りたいだけです。
そんな人には
こんなふうに言うようにしています。
いつということは
個人差もあるのでわかりませんが、
でもほとんどの人は段々悪くなり、
食事が全くはいらなくなると
それから1~2週間で亡くなります。
このような説明をすると
自分が段々と食事がとれなくなると、
後どれくらいなのか察しをつけてくれます。
いずれにせよ、
余命告知は当たらないことが多いので、
自分から積極的に伝えることはありません。
なお、家族から聞かれた場合は、
この1~2週間くらいかなと思った場合は、
心の準備や親戚への連絡などもあるので、
伝えるようにしています。
しかし、あと1週間くらいだと思い、
そう伝えたにもかかわらず、
実際は1ヶ月近く
頑張っていた患者さんもいました。
これくらい予後告知は
不確実で当てにならないものなのです。

先生のお話は論理的思考と感情的思考の調和が絶頂でいつも本当に心に残ります。
同じ世代のせいか共感できることも多く、「先生もそう感じるんだ」と安心したり、先生のご活躍に励まされたりもしています。
どうでもいい(すみません笑)旅行のお話も好きです。これからも長く続けていただけると嬉しいです。
役に立てて何よりです。ありがとうございました。