ブログ:数字にまつわる認知バイアス
先日も大学で
認知バイアス(思考のクセ)に関する
話をしました。
今回は前回の続きですが、
おもに数字にまつわる認知バイアスについて
まとめてお話しをしました。
これは表現や数字の見せ方いかんで、
判断が正反対になってしまうという
認知バイアスのことです。
現在、二つのクラスを持っており、
前半は大学院生の心身医学のクラス、
後半は学部生の緩和ケアのクラスです。
前半は特に問題なく終わったのですが、
後半のクラスでは、
プロジェクターがうまく機能せず、
スライドを映すことができませんでした。
係の人に来てもらって
あれこれ対応しましたが動かずじまいであり
最終的には今日の授業はできないと判断し、
中止としました。
機械相手の場合、
こういうことがあるんですよね。
仕方ないですが…
ここでグチを言っても仕方ないので
前半のクラスでお話しした内容を
少しだけお話しさせて頂きます。
まずはフレーミング効果についてです。
これについてはこのブログでも
何度も取り上げています。
例えば、術後の生存率が90%と言うと
82%の人がその手術を受けると言いますが、
術後の死亡率が10%と言うと、
その手術を受ける人が54%に
減ってしまうのです。
このように同じ内容のことを言っても、
生存率と死亡率の
どちらに重きを置いた表現をするかによって
判断が変わってしまうのです。
これがフレーミング効果です。
なおここには、
損失回避バイアスも関係しています。
これは利益よりも損失の方を大きく感じ、
その損失を避けるために
リスクを冒す傾向のことです。
死亡率が10%と言われると、
それを避けるために
手術は受けないという判断をするのは
必要な手術を受けないというリスクを冒す
可能性が高くなることを意味しています。
ギャンプルで負けていると、
それを取り戻そうと思って(損失回避)、
さらにギャンブルを続けるというのも
損失回避バイアスによるものです。
そうすることで、
さらに負けが込むというリスクを
冒す可能性が高くなるのです。
このように損失回避バイアスには
リスクを冒す傾向があるのです。
フレーミング効果に戻ります。
同じことでも
違った表現の仕方をすることで
判断が変わってしまうものは
他にもたくさんあります。
例えば、全国で肺がんの患者は
13万人いますと聞くと、
それなりに多いと思ってしまいます。
しかし、全国の0.1%の人が
肺がんになっていますと聞くと、
そんなもんかと感じてしまいます。
これがまさにリフレーミング効果です。
このように同じことでも
表現の仕方いかんで、
正反対の印象を与えることができるのです。
なおここには「確率無視」という
認知バイアスも関係しています。
人は確率的に物事を考えるのが苦手です。
ですから、
印象的な言い方をしたいならば実数で言い、
少ないという印象を与えるには
パーセントで言えばよいのです。
コロナの感染者と死亡者の人数が
毎日発表されていたときは、
すべて実数で報道されていました。
例えば、
全国ですでに1万3000人が
亡くなりましたと表現されますが、
これは人口の0.01%のことであり、
1万人に1人ということです。
薬の添付文書を見ると、
必ず副作用が起こる頻度が書いてあります。
その中で「まれ」に起こるものとして
たくさんの項目が並んでいますが、
このときの「まれ」というのは
0.1%未満のことを言います。
つまり、コロナで1万3000人の人が
亡くなったというのは、
全体からすると
「まれ」の10分の1程度のことと
いうことになります。
しかしそんな表現をしてしまったら
コロナによる不安や恐怖を
煽ることなどできません。
ですから、必ず実数で表現していたのです。
またグラフも、
認知バイアスによる判断を
引き起こしやすい表現法の
ひとつだと言えます。
例えば、喫煙者は非喫煙者よりも
肺がんになる率が
2~3倍高くなりますと言うと、
タバコを吸い続けることに
少し抵抗がでてきます。
ところが、喫煙者も非喫煙者も
肺がんに「ならない」率は、
99.8%~99.9%ですなどと言ってしまったら
身もふたもありません。
でもこれが事実です。
そのことは下のグラフを見て頂ければ
わかります。
他にも、全く同じデータを使って
マンモグラフィーを受けることで
乳がんの死亡率は
「20%減る」とも「0.1%も減らない」とも
表現できます。
これについては以前のブログにも書いたので
興味のある方はそちらを参照してください。
→ブログ:数字の見せ方で判断が正反対になる!
他にも、帰省するので、
念のためコロナの検査(PCR検査)を受けたら
「陽性」と判断された場合、
本当に陽性である確率は
実は9%程度であるという
「基準率の無視」という
認知バイアスの話もしました。
最後はコロナ報道は
認知バイアスの宝庫ですといって、
実際の報道とその背後に隠れている
認知バイアスの話をしました。
これに関しては
このブログでもさんざん書いたの
ここでは省略させて頂きます。
プロジェクターが動かないという
ハプニングはありましたが
今回のこんな感じて授業をすすめました。