ブログ:イメージは言葉にできない

前回は「言語化」の話しをしましたが、
今回は頭の中のイメージは、
言葉にはできないという話を
させてもらいます。

私たちは誰かに何かを伝えようとする場合、
それを言葉にします。

自分の考えていることや
目の前の風景の美しさを
誰かに伝えようとした場合、
話をするか文章に書くといった
作業をしない限り、
頭の中にあることを人に伝えることは
できません。

ところが頭の中にあることを
言語化することには限界があります。

もっとはっきり言うならば、
頭の中にあることを
正確に言語化することは不可能であり、
かりに言語化したとしても、
その瞬間、頭の中のものとは
別物になってしまうのです。

特に五感に関わることはほぼ不可能です。

フナ寿司を食べたことのない人に
その味を伝えることは不可能です。

また自分の持っている車の色を
赤とかワインレッドとか言っても、
正確には伝わりません。

なぜならば、
赤と言っても朱色や茜色など、
名前がある赤だけでも30種類以上あり、
名前のついていない赤を含めれば
理論上無限にあるからです。

そもそも、自分の伝えたいことを
言い表す言葉が存在していなければ
伝えようがありません。

ですから、五感で感じられることを
言語化するのは、
何となくイメージを伝えることはできても、
それを正確に伝えることなど
できないのです。

では、技術やテクニックについては
どうでしょうか。

私は一般の人を対象に
悩みや問題を解決するための
コミュニケーションスキルについて
教えています。

この際、コミュニケーションの
コツやテクニックについて教えるのですが、
これがなかなかうまくいきません。

もう20年以上前の話ですが、
コミュニケーションスキルの中で
最も簡単だと思われるテクニックを
私がデモンストレーションを見せ、
参加者にも実際にやってもらいまいた。

ところが、みなさんうまくできないのです。

このときの私の思いは、
どうしてこんな簡単なことが
できないんだろうという、
極めて単純な疑問でした。

でも、今ならその理由はわかります。

私は知らず知らずのうちに
知識や経験に照らし合わせながら、
質問や言葉を微調整しながら
やっていたのです。

ところが、経験のない人たちは
教えられたままの言葉や質問を
ただ単に言うだけなので、
必ずしもその場にフィットした言い方には
ならない場合がしばしばです。

それがわかるようになったのは、
セミナーを開催してから
何年も経ってからのことです。

そんな初心者の人たちでも、
同じワークを何度もやるうちに
体験を通して
少しずつコツがつかめるようになり、
上手にできるようになっていきます。

ただし、そのときのコツについては
なかなか言語化できるものではなく、
何度が体験することで
初めてその感覚がわかってくるという
ものなのです。

これはまさに、
フナ寿司の味をほどよい酸味と
独特の香りと言っても、
全くその味が伝わりませんが、
一口食べれば「なるほど」と
すぐにわかるのと同じです。

もちろん、そのコツも、
なるほどと思えるような表現を用いて
伝えることは可能かもしれません。

例えば人の話を傾聴するさいには、
積極的に聴こうとする姿勢が
大切などと言われても、
実際にはそう簡単にはできません。

なぜならば、人の話を聴いていると、
つい自分の思いや判断、考えがあれこれ
浮かんできてしまうからです。

そんなときに、
自分の思いが浮かんできたときには、
その「お節介虫」をつまみ上げ、
心の中で「邪魔しないで」とつぶやきながら
それを脇に置くという作業を
頭の中でイメージすると、
じっくりと話が聴けますよと説明すると、
そういうことかと理解して、
できるようになる人はいます。

コツをそのまま言語化することは
難しいかもしれませんが、
コツを習得、理解するための
比喩やイメージ、メタファーを
上手に使って説明すれば、
ある程度のことは
伝えることが可能な場合があります。

要するに、
相手に実感を
持ってもらえるような説明をすれば
理解してもらうことは可能なのです。

こう考えてみると、
頭の中のことを
正確に言語化することはできませんが、
同じ体験を通して、
ある程度の共通認識を持つことは
可能かもしれません。

さらに、コツを伝えるときのように、
相手と共通のイメージが持てるものを通して
自分が言いたいことを
伝えることもある程度は可能です。

逆に言うと、
相手が自分と同様の体験、
もしくは一部でも共通するような経験を
持っていなければ、
頭の中のイメージを言葉で伝えるというのは
難しいのではと思いました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


This site uses Akismet to reduce spam. Learn how your comment data is processed.