ブログ:「人は見た目が9割」のウソ
皆さんは
「人は見た目が9割」という言葉を
聞いたことがありますか?
ベストセラー本のタイトルでもあるので
知っている人は多いかと思います。
ただし、この言葉を
外見の良し悪しや第一印象で
人の評価が決ると誤解している人も
少なくないようです。
外見についての話は
今月のブログで色々書いたので
ここでは繰り返しません。
そうではなく、今回私が言いたいのは
「人は見た目が9割」の著者が
どうもメラビアンの法則を
誤解している可能性があるということです。
著者が、
「人は見た目が9割」だと主張する根拠は
有名なメラビアンの法則に基づいています。
まずはメラビアンの法則について
簡単に説明します。
メラビアン教授は、
コミュニケーションで
相手に感情が伝わるさい、
言語、聴覚、視覚のうちの
どの要素が大きな影響力をもっているかを
調べました。
その結果、
言語は7%、聴覚は38%、視覚は55%
だったのです。
つまり、言葉の内容よりも
声の大きさやトーンといった聴覚要因、
その人の表情といった視覚要因の方が
影響力が大きいということであり、
これがメラビアンの法則と
言われるものです。
どうも世の中には
この数字だけが一人歩きしてしまい、
相手から受け取る情報は
言語的コミュニケーションよりも
視覚や聴覚に働きかける
非言語的コミュニケーションの方が
影響力が大きいと
誤解されるようになってしまったのです。
もちろんそういう側面もありますが、
もともとの研究を見てみると
この結果はごく限られた範囲で
なり立つものであり、
一般的なコミュニケーション全体に
当てはまるわけではないことがわかります。
研究内容についての
詳しい説明は省略しますが、
これは感情や態度について
矛盾したメッセージが発せられた場合、
視覚、聴覚、言語のうち、
どの情報が優先されたかを
調べたものなのです。
例えば、嫌な表情をしながら
嫌そうな口調で「ありがとう」と言った場合
明らかに表情や口調と
言葉の内容が矛盾します。
この場合、多くの人は
口では「ありがとう」と言いながらも、
実際には不満を持っているんだろうなと
感じてしまいます。
逆に、笑顔を見せながらも
怒った口調で「怒っている」と言った場合、
相手は本気では怒っていないと思うことが
多いのではないでしょうか。
このように視覚、聴覚、言語で
矛盾するメッセージを送った場合、
どの情報が優先されるかを調べたのです。
その結果、もっとも優先されたのは
表情(55%)であり、次は声の質(38%)、
最後は言葉(7%)だという結果に
なったのです。
つまり、言語情報が7%だというのは
表情や声質、言葉の内容のイメージが
矛盾した場合にのみ成り立つことであり、
どんな場合のコミュニケーションでも
視覚情報が最も重要だという意味では
ありません。
だからこそコミュニケーションにおいて、
「見た目が9割」だとか
「第一印象が大切」というのは、
全くの間違いではないにせよ、
あたかも言語情報は
それほど重要ではないという誤解を
生じさせてしまう可能性があるのです。
極端な言い方をするならば、
頼りなさそうな人が弱々しい口調で
プレゼンテーションをした場合でも、
話している内容が衝撃的で
興味や関心を大いに引くものであれば
当然、言わんとするメッセージは
十分に伝わります。
もちろん、自信ありげな表情や口調で
同じ内容のことをプレゼンした方が、
より一層伝わるのは明らかです。
その意味では表情やボディランゲージ、
身なりといった視覚的情報も重要ですし、
声の大きさやテンポ、言葉の強弱のつけ方で
相手に与える印象は大きく変わります。
ですから、プレゼンのテクニックとして
これらの点を学ぶことは意味があります。
だからと言って、
相手にメッセージを伝える場合、
話の内容はあまり関係ないというのは
言い過ぎのような気がします。
特にプレゼンや講演といった
話の内容に重きが置かれるようなものは
当然、言語的なメッセージが
最も重要になることくらいは
誰でも分かると思います。
一方で通常のコミュニケーションでは
メラビアンの法則が成り立つ場面も
しばしば経験します。
例えば私なんかも、
態度の悪い患者さんや、
自分勝手なことばかり言う患者さんには
内心「いい加減にせんか、こらー!」
…とまでは思いませんが、
イラッとくることは普通にあります。
こんな時は、気持ちを抑え、
「わかりました」などと言っても、
つい不満が表情に出てしまうため、
納得していないことは
患者さんにバレバレだと思います。
だからこそ、内心はムッとしていても、
表情や口調、言葉には気をつけないと
いけないということなのです。
丁寧に書いていただいてありがとうございます。
わたしも疑問でしたので、すっきりしました。
ありがとうございます。