ブログ:なぜ自分は正しいと思ってしまうのか

人は誰でも、
自分の考え方は常識的であり、
多くの人も同じように思ってると
考えがちです。

これが、
「フォールスコンセンサス効果」です。

この心理が働くと、
他人の気持ちを狭い範囲でしか考えられず、
その隠れた心理を想像できません。

それを証明するこんな研究があります。

学生104人に広告をぶら下げながら
30分間歩くように依頼します。

もちろん了承される場合と
断られる場合があります。

どちらにせよ、その際に
同じことをべつの学生に依頼したら
引き受けてくれると思うかと質問します。

すると、依頼を引き受けた学生は
6割くらいは引き受けてくれると思うと
答えていました。

ところが、依頼を断った学生は
7割くらいは断ると思うと答えたのです。

両者の答えは正反対になったのですが、
これは多くの学生は
他の学生も自分と同じような選択をすると
判断したからだと考えられます。

つまり、自分の考えが常識であり
多数派だろうと考えたわけです。

このように、自分の考えは
他人も同じように思っていると
思い込んでしまうクセが
私たちにはあるのです。

また、家事を夫婦で
分担してやろうと決めた場合、
たいていの場合は自分の方が
多く家事をしていると思うものです。

ここには
「利用可能性ヒューリスティック」という
心のクセが働いています。

これは、
自分の記憶や印象に強く残っていることや
思い出しやすいことは
頻度や確率が高いと判断してしまう
傾向のことです。

夫婦で家事を分担する場合は、
当然、自分のしていることしか見えず、
相手のしていることの多くは見えません。

そのため自分の方が家事をしていると
過大評価してしまうのです。

他にもこんな例があります。

みなさんは、
日本とニュージーランドでは
どちらの方が
国民の平均年収が高いと思いますか?

たいていの人は日本だと思います。

しかし2023年のOECDのデータによると、
日本は日本円で約500万円であるのに対し
ニュージーランドは850万円です。
(Ⅰドル=155円として換算)

つまり平均年収は日本よりも
ニュージーランドの方が
1.5倍以上多いのです。

なぜこのようなことが起こるかと言うと、
私たちは日本のことはよく知っていますが、
ニュージーランドに対しては
羊と草原といったイメージしかない人が多く
そのためこのような錯覚を起こすのです。

コロナが流行しはじめ、
志村けんがコロナで亡くなるなど、
連日、コロナに感染した、
コロナで死んだという報道が
流され続けました。

そのため、
たくさんの人がコロナで亡くなったと
思われがちですが実際は3,429人でした。
(大半が関連死ですが)

ちなみに同じ年に
転倒や転落で亡くなった人は9,581人であり
コロナによる死者よりも
2.8倍も多いのです。

それにもかかわらず、
コロナで死んだ人の方が多く感じてしまうのは
利用可能性ヒューリスティックによる
錯覚が関与しているからです。

また、こんな心のクセもあります。

能力や知識が低い人ほど、
自分自身を高く評価してしまう傾向があり、
これが「ダニング=クルーガー効果」と
言われるものです。

これは45人の大学生を対象にテストを行ない、
自分は何点くらい取れたかを
自己評価してもらうという研究が
基になっています。

それによると、
実際の点数と予想点数のギャップが
最も大きかったのは
最下位グループでした。

つまり点数が低い学生ほど、
自分を過大評価していたのです。

反対に最上位グループは
自分たちを過小評価していました。

このように、
知識や経験が浅い人は
自分は多くのことを知っていると思い、
それが深い人ほど、
自分は何も知らないということを
認識しているのです。

この事実は昔から知られており
多くの偉人が名言を残しています。

「自分が知っていることは、
自分は何も知らないと言うことだけ」
(ソクラテス)

「自信とは知識から生まれるよりも、
無知から生まれることの方が多い」
(ダーウィン)

「真の知識は自分の無知を知ること」
(孔子)

「愚か者は自分を賢者だと思うが
賢者は自分が愚か者であることを
知っている」(シェイクスピア)

ダニング=クルーガー効果を
「知識や経験の深さ」と「自信」との
関係を示したグラフは面白いと思いました。

一部の知識を得ただけで、
すべてを理解したと思い込み、
知識や経験がほとんどないのに
自信が急激に高まるのが「バカの山」

それを過ぎると、
自分の知識はほんの一部に過ぎず、
学ぶことがたくさんあると知り、
すっかり自信を失うのが「絶望の谷」

その後、改めて学ぶことで成長し
少し進歩できたという自信を
徐々に取り戻し始めるのが「啓蒙の坂」

さらに学びを深め、
自己を正しく評価できるようになり、
安定した自信がもてるようになるのが
「継続の大地」

みなさんはどの辺にいますか?

5回にわたり橋本之克著、
「世界は行動経済学でできている」をもとに
お話しさせて頂きました。

とても読みやすくためになる本なので
興味のある方はぜひ一読ください。

ブログ:なぜ自分は正しいと思ってしまうのか” に対して1件のコメントがあります。

  1. reiko より:

    ホリスティックコミュニケーションでは、幸いなことに「絶望の谷」だとわかり、少しばかり救われた気持ちになりましたが、「啓蒙の坂道」の上り口に到達するにもまだまだ絶望の谷を歩き続けないといけない予感がします。
    自身の専門分野でさえ、啓蒙の坂道を青息吐息で時には杖も必要になりながら歩き、時たま安定した継続の平地で息を整え、又坂道を上るといった感じです。一体継続の安定した台地にいつ辿り着くのかなあ、、死ぬ時?死ぬ時は継続が終わり、もう一度生まれ直して続きをやる、、?という状況なのです。
    情け無いですね、、、。
    面白そうな本なので、読もうと思います!

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