ブログ:心にアプローチしなくてもいい!?
私は以前から、
多くのカウンセラーや心理師(士)は
クライエントの心の状態には目を向けますが、
その人を取り巻く環境にはあまり目を向けない
傾向にあるのではと思っています。
実を言うと私も以前はそうでした。
多くの心理師は、
相手の悩みや問題を解決するためには
いかにしてその人の思いや考え方を変えるか、
そのためにはどうしたらいいかということに
エネルギーを注ぎます。
このとき、
クライエントの思いや考えにばかり目を向け
その人に影響を及ぼす環境や
他の人との関係性といったことには
あまり注意を払わないのです。
もちろん家庭の問題や
職場での人間関係といった問題の場合、
配偶者や子供、上司や仲間といった
人々にも目を向けますが、
それはあくまでも二の次であり
中心はあくまでも
目の前にいるクライエントの
心のあり方だと思っているのです。
ただしこれはある意味、
仕方のないことでもあるのです。
なぜならば
多くの心理療法は個人療法であり、
目の前のクライエントに
直接アプローチすることで
心に変化をもたらすというのが
中心的な考え方だからです。
一方でシステムズ・アプローチという
心理療法があります。
これは、個人に焦点を当てるのではなく、
その人を取り巻く
環境や相互作用に焦点を当て、
その悪循環をうまく断ち切ることで
問題を打開するというアプローチです。
つまり個人ではなく、
その人とつながっている人たちを
すべてセットとして扱う考え方です。
人の心の状態は、
個人の中で完結するわけではなく、
様々な状況や環境、
人や物とのかかわりから影響を受けながら
変化していくものです。
ただし、人とのかかわりを扱おうとすると
システムやつながり全体を見ながら
問題点に対処するという視点が必要となり
それなりの経験がないと
なかなかうまく対応できません。
私自身、システムズ・アプローチの経験が
あまりないこともあり、
目の前のクライエントを
システムの一員として見る視点が
ありませんでした。
そんなこともあり、
周囲からの様々な影響があることは
重々承知していながらも、
やはり目の前のクライエントの
心の状態をどうしたらよい方向に
向けられるかということにしか
目が向いていませんでした。
これは、どんな環境に置かれようとも
やるのは自分なので、
結局は自分の力で
解決していくしかないという考え方に
つながってしまいます。
世の中には、
家庭内不和や学校や職場でのいじめといった
どうしようもない環境の中で、
やっていかなくてはいけない場合も
たくさんあります。
もちろんいろいろな人に
相談はするでしょうが、
最終的には自分で対処するしかないという
結論になってしまうことがしばしばです。
つまり、
文句や不平不満を言っていても仕方ないので
前向きな思いを持って立ち向かえるように
自分の心を変えるしかないと
考えてしまうのです。
私はこの考え方に
疑問を持つようになりました。
そうではなく、
クライエントが楽になるのであれば、
どんなものでも利用したら
よいのではと思うようになったのです。
その人の思いや考えを
変えようとするのではなく、
状況や環境から受ける影響により、
思いに変化が生まれたのであれば、
それも立派な心理療法だと
思うようになったのです。
さらに様々な「道具」を利用するというのも
よい方法だと思うようになりました。
ここで言う「道具」とは、
その人の心に
変化をもたらすものすべてです。
例えば、薬や点滴は典型的な「道具」です。
お腹が痛くて不安や苦痛がある場合、
薬を飲んだり点滴をしてもらったりすれば、
それだけでホッとしますし
安心感が生まれます。
つまり、不安という心の状態を
薬や点滴という「道具」を使うことで
安心感に変えることができるのです。
これと同様で、
自分の考え方を変えようと
努めるばかりではなく、
アロマセラピーを受けるとか
森林浴をするといった
道具や環境をうまく取り入れることで
一時的であれ、
心の状態を変えることはできます。
そのような機会を作り、
その瞬間、心を解放してあげることで、
また違ったつながりも生まれやすくなり、
そこから問題解決につながるヒントが
見つかる可能性も高くなるのです。
直接、相手の心に
アプローチするのも大切ですが、
それに勝るとも劣らず、
環境や道具を使って
心にアプローチするというのも大切だと
今は思っています。