コミュニケーション医学の講演

先日、
「コミュニケーション医学の基本を学ぶ」
というテーマで
久しぶりの講演をしました。

コミュニケーション医学に関しては
5年前に初めてこのテーマで講演をして以来
時々話をしています。

当然、話をするにあたり
準備をするのですが、
毎回少しずつ
内容が変化しているのがわかります。

今回の講演内容で
今までとの一番大きな違いは、
医療者が意思決定をするさいの
よりどころになる論文などについても
触れたことです。
(これについては次回お話しします)

前半はコミュニケーション医学の
基本的な考え方を話しました。

かいつまんで説明すると、
その大前提には「心の治癒力」があり、
これが活性化され、
それに伴い自然治癒力が促進することで
症状が改善するという仕組みが、
治療的かかわりには
必ず含まれているということです。

もう少し具体的に言うと、
身体のしんどさを訴える患者さんに
点滴をした場合、それが「きっかけ」となり
心の治癒力のスイッチが入ります。

その結果、
無意識レベルで安心感や期待感が生まれ、
それが自然治癒力を活性化させることで
症状を改善するという側面が
治療には必ずあるということです。

ですから点滴が症状を改善するという
側面に勝るとも劣らず、
心の治癒力が症状を改善させるという側面も
大いにあるのです。

しかし、多くの人は薬や点滴をしたから
症状や病気がよくなったと考えますが
そうではないということを
私はいいたいのです。

これは代替療法でも言えます。
鍼灸でも整体でも、
それらの手技が「きっかけ」となり、
安心感や期待感が生じ、
それが自然治癒力を活性化させ、
症状を改善させる側面が
あるということです。

ですから、デンプンの粉で作った
プラシーボを飲んでも効くというのは
飲むという行為を「きっかけ」に
心の治癒力と自然治癒力が活性化されるので
その結果として症状が改善するのです。

これらはあくまでも医療現場の話ですが、
実際には心の治癒力が活性化されるような
かかわりであれば何でもよいのです。

つまり日常において、
安心感や期待感、喜びといった
ポジティブな感覚が
自ずと湧き上がってくるようなことであれば
何でも治療的な意味合いを
持つということです。

例えば桜を見てきれいだなと感じたり、
鰻を当てに熱燗を飲むとかは(私の場合)、
すべて心の治癒力が活性化するので、
私に言わせれば
「治療的かかわり」なのです。

もっとも病気でない人にとっては
治療というよりは「予防的かかわり」と
言う方が適切かもしれません。

これらの視点の含め、
私はコミュニケーション医学だと
考えています。

一方、患者さんは、
心の治癒力を活性化するために
何をしたらいいのか、
どんな治療が適切なのかを
かなりの部分、医者からの情報に
頼らざるを得ないところもあります。

もちろん、医者にかかると同時に、
食事療法や運動療法、代替療法にも
取り組む人もいるでしょう。

いずれにせよ、
自分の心の治癒力が
アップするようなものであれば
何でもよいのです。

ただし、その治療や取り組みに対して
信頼感や期待感、満足感が
持てるようなものである必要があります。

実際には、たくさんの情報の中から、
心の治癒力が活性化されるようなものを
選ぶことになります。

その際の意思決定において機能するのが
「認知バイアス」です。

私たちはどんなに情報を収集しても
必ずしも正しく有益なものに
たどり着くとは限りません。

そこには限界があります。
そうであれば、最後の決め手は
「直感」ということになります。

この直感の働きを担っているのが
認知バイアスです。

もちろん、その際には
間違った選択をする場合もあります。

例えば抗がん剤治療を受けようと思い、
実際に受けてみたら
ことのほか副作用がきつくて
つらくなったという場合です。

この場合は、抗がん剤治療という選択が
自分にとっては
一番有益だと判断したからこそ
それを受けたのですから、
それはそれでかまいません。

しかし実際に受けてみると
自分が思っていたのと違っていたならば、
この段階でまた「やめる」という
新たな選択をしてもよいのです。

抗がん剤をするもやめるも
いずれにせよ、心の治癒力が上がるような
選択をしていけばよいのです。

なお、良心的な医者であれば、
患者さんの心の治癒力を活性化するような
かかわりをすると思います。

それは雰囲気や態度もそうですし、
説明の仕方にも気を遣うと思います。

さらに、患者さんの思いを大切にした
治療法の提案をするでしょうし、
無理強いをすることもないと思います。

そんな医者であれば、
患者さんは信頼するだろうし、
その医者が提案する治療法であれば
安心して受けるのではないでしょうか。

当然そこには心の治癒力が活性化されますし
そんなかかわりができる医者でありたいと
私は思っています。
(続く)

    コミュニケーション医学の講演” に対して2件のコメントがあります。

    1. 吉田芽生子 より:

      おはようございます。
      いつも楽しみに拝見しています。
      分かりやすく、いつも何かしらヒントをいただいています。ありがとうございます。

    2. holicommu より:

      こちらこそ読んでいただきありがとうございます。
      今後ともよろしくお願い申し上げます。

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