ブログ:心療内科時代との違い

先日、おのころ心平さんと
ホリスティックコミュニケーションについて
1時間ほどの対談をさせて頂きました。

目的は私のセミナーの
宣伝用の動画を撮るためです。

話す内容を考えるにあたり
20年以上前に書いた拙著
「心の治癒力をうまく引き出す」を
読み直してみました。

すると、昔と今とではずいぶんと
視点がわかっていることに気づきました。

心療内科医として
実際に患者さんの治療をしているときは、
思い込みを緩めるための
直接的なアプローチを
積極的に使っていました。

本で紹介している患者さんの例で
簡単に説明しましょう。

「男の子は理系」という
母親の思いに従い、
本当はあまり行きたくなかった
工学部に入学、
しかしやる気が出ず3回の留年を重ね、
今年も留年すると退学になるという危機に
陥っている大学生が来ました。

彼は本当は英語や文学が好きで
そちらに進みたかったのですが、
母親の意向に従って理系に進んだのでした。

私は彼に対してこんなことを言いました。

あなたが留年したことは
いいことだと思います。

なぜならば留年は、
もう母親の思い通りには
ならないという意思表示であり、
それが自分の思いを無視してきた母親への
仕返しにもなっているからです。

ただしもっと違った形で
母親への仕返しをすることは可能です。

例えば、母親が嫌がる文学部に
編入するとかです。

彼はこの話をきっかけに
やる気が出るようになり大学を無事卒業、
文学部にも無事編入することができました。

心療内科では、
こんな治療を普通にやっていましたし、
それが面白かったのです。

しかし、思い込みを変えるための
直接的なアプローチは
実際やるとなると結構難しく、
うまくいかない場合も多々あります。

さらに言うならば
これはパターン化できないため、
その場その場で機転を利かさないと
できないアプローチなので、
初心者向きとは言えません。

ですから私が教えるセミナーでは、
思い込みを緩めるための
直接的なアプローチについては
ほとんど触れていません。

ただし、そうは言っても、
思い込みを緩めるための
アプローチは重要です。

そこで直接的ではなく
間接的に思い込みを緩めるアプローチを
教えるようになりました。

つまり、「できていること」や
「できそうなこと」を質問し、
それに答え、気づきをもたらすことで
思い込みはある程度緩むので、
それでよしとしたのです。

これは痛みが気になるときに、
他のことに意識が向くと
痛みを忘れるのと同じ原理です。

さらに日常の実際の行動を通して
成功体験を重ねていくことで
さらに思い込みは緩み、
最終的には外れるのです。

直接的なアプローチにより、
最初に思い込みを緩める方が
よい場合も多々ありますが、
成功体験を積み重ねてもらう過程の中で
思い込みが緩めばそれでもよいのです。

この考え方の方が教えやすいですし、
初心者も取り組みやすいと思います。

そのためセミナーでは、
直接的に思い込みを変える方法は教えず、
このような間接的に思い込みを
緩める方法に重きを置くようになりました。

また、悩みや問題の違いも
関係していると思います。

心療内科時代は、
身体症状があったり、
こだわりが強く
なかなかそこから離れられない患者さんが
少なからずいました。

ですから先ずはそこにアプローチしないと
前に進みにくいという側面がありました。

一方、セミナーで扱う問題は、
基本的には参加者の皆さんの悩みなので、
問題がそれほど複雑ではなく、
またこだわりもさほど強くない場合が
ほとんどです。

だからこそ、思い込みを緩めるための
直接的なアプローチをしなくても
十分に対応できるというわけです。

もちろん中には、
直接的なアプローチをする必要が
ある場合もあります。

例えば、子供の態度に
ついイライラしてしまうという人に対して、
イライラをコントロールするための
練習の場があるのはよいことだと話します。

この場合、
子供の態度=イライラの原因という
思い込みが前提にありますが、
子供の態度=イライラをコントロールする
練習の場という認識に変更するのです。

もしこの話がうまく入れば、
子供の態度に対するイライラは
それだけでも軽減します。

このように思い込みを緩めた上で
イライラをコントロールするための
様々な方法を試してもらう方が、
ずっと問題に取り組みやすくなるのです。

今回のおのころ心平さんとの対談で、
そんなことに気づけたことは、
私にとっての大きな収穫でした。

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