ブログ:久しぶりの講演①

先日、久しぶりに講演をしました。
レディーガガ大学‥ではなく、
レイカディア大学主催の講演で
タイトルは「心の治癒力を引き出す」です。

これはシニア向けの大学ですが
60歳以上の人であれば
誰でも入学できるそうです。

私は現在、緩和ケア医をしているので、
末期がんの患者さんの話しなら
いくらでもできます。

でもこれから第二の人生?を
歩もうとしている参加者の方々に、
死ぬ話しばかりするのもよくないと思い、
みんなにもっと笑ってもらえる
元気の出る話しを心がけました。

いつものように
スライドや資料などはなしで
2時間程おしゃべりをしてきました。

スライドなどを使うと
どうしても真面目な話しになりがちで、
私はあまり好きではありません。

様々なエピソードを交えた
楽しい話しをする場合は、
何もない方がやりやすいのです。

導入の話しは簡単な自己紹介を兼ね、
心療内科医時代は
どんな治療をしていたかという話しから
入りました。

心の治癒力の話しをする場合は、
この導入は大切なのです。

なぜならば、
心の治癒力の概念にたどり着いたのは
まさに心療内科医としての
経験があったからこそだからです。

私はもととも
心と身体のつながりに関心があり、
かつ薬が嫌いでした。

ですから患者さんの治療においても
できるだけ薬を使わずに
治療をしていました。

では薬を使わずに
どうやって治療をするのかと言うと、
それがコミュニケーションなのです。

コミュニケーションと言っても
普通のコミュニケーションとは異なり、
治療的コミュニケーション、
つまり症状を治すことを目的とした、
やや特殊な言語的アプローチです。

私にとっての「言葉」は
内科医の「薬」や外科医の「メス」と同様、
患者さんの病気や症状を治療するための
大切な道具なのです。

そのような言語的かかわりを通して、
結果として患者さんの心の状態が変わり、
少しでも希望や可能性を
持ってもらえるようになれば
心の治癒力にスイッチが入ります。

その結果、
長年苦しんでいた痛みや吐き気、
不安や抑うつといった症状が
改善していくというわけです。

私はそのような経験を通して、
心の治癒力の存在を確信したのでした。

こんな話しを導入とし、
前半は心の治癒力の存在を
実感してもらうために
様々な実例を挙げながら
話しを進めさせていただきました。

一番わかりやすいのが
プラシーボで痛みが取れるという話しです。

プラシーボとは薬効のない、
乳糖やデンプンの粉のことです。

私は心療内科時代、
しばしばプラシーボを処方していました。

なぜならば、うつや不安で
抗うつ剤や抗不安薬を飲んでいる
若い患者さんがたくさんいたからです。

彼女たちも結婚し、
子供が欲しいという時期が来ます。

そんなときに必ず相談されるのが
薬をやめたいが、
やめるのが不安というのが悩みでした。

そういう場合は、
「これは妊娠中でも飲めます」と言って
プラシーボを処方するようにしていました。

またバファリンやノーシン中毒、
ハルシオン中毒の患者さんもいました。

この患者さんらにもうまく話しをして、
それらの薬をプラシーボに
変更していくのです。

プラシーボでも頭痛や不眠が改善されるのは
心の治癒力の存在を示す
何よりの証明になります。

プラシーボ手術(シャム手術)もあります。

手術をした「ふり」だけで、
変形性関節症などの痛みがよくなり、
上れなかった階段も
上がれるようになるのです。

プラシーボの薬にせよ手術にせよ、
これらの行為が「きっかけ」となり、
心の治癒力のスイッチが入るのです。

さらに、心の治癒力で
がんも消えることが
あるという話しもしました。

プラシーボで痛みがなくなるのは
ありうるとしても、
まさか末期がんまでが消えることが
本当に起こるとは
あまり思っていないようです。

でも、私はこの話が大好きです。

そもそもがんの自然寛解(かんかい)や
自然治癒に強い関心があったので
心療内科医になったくらいですから。

また、緩和ケア医としも
20年以上の経験があり、
3,000人以上の患者さんを看取っていますが、
そのうちの少なくとも10人は
がんが小さくなった、もしくは
消えてしまったという患者さんがいます。

ですから講演では、
その患者さんの具体例をあげながら、
実際にこんなことがあったという話しを
面白おかしく話しました。

このブログでも
がんの自然寛解の話しは
何度もしていますので
興味のある方はそちらをお読みください。

がんの自然寛解を考える①
不安感とがんの自然寛解

先ずはこんな感じで、
誰にでも心の治癒力があることを
お話しさせていただきました。
(続く)

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