ブログ:少々上から目線?
先日、神戸で開催された
緩和医療学会とサイコオンコロジー学会の
合同大会に参加してきました。
今回は私が一番面白いと思ったのが
「不確かな情報に揺れ動く患者を、
私たちはどう支援すればよいのか?」という
テーマのパネルディスカッションでした。
特に4人いた演者のひとりである
田代志門先生の話が興味深かったです。
がん患者さんは、
通常の治療が困難になると、
他に有効な治療がないものかと
情報を探し求めます。
その際、目にとまるのが
「がんが消えた!」とか
「これで末期がんも治る!」といった類いの
治療法です。
中身は免疫療法やワクチン療法、
サプリメントや代替療法など様々です。
4人の演者のうちの二人は
そのような「不確かな情報」に
惑わされることなく、
いかにして「正しい情報」を
入手するべきかという話しでした。
私は、この話しを聴きながら、
ずいぶんと上から目線で
話しをするものだなと思いました。
そもそも
自分らは「正しい情報」を発信しており、
巷に蔓延っている
「がんは治る!」的な治療法は
正しくない情報なので気をつけてと
言わんばかりの話しっぷりでした。
確かに、
1クール数百万円もするような治療法には
抵抗がありますし、よいとも思いません。
だからといって、
それらの治療法をすべて
「正しくない情報」だと決めつけるのも
どうかと思います。
一連の話しの中で「正しい情報」とは、
確かに有効だという
エビデンス(科学的根拠)がある
治療法を指します。
でもここには、
「心の治癒力」の話しは全く出てきません。
患者さんの期待感や安心感、
医者に対する信頼感によって
治療効果がわかるという視点が
全く含まれていないのです。
さらに、
以前このブログでも紹介した
「あなたが知らない科学の真実」を読み、
科学論文も実際には偽りやごまかしが
たくさんあるという事実を知ってからは、
「エビデンスがある!」と言われても
素直に受け止められなく
なってしまったところがあります。
そんなこともあり、
科学的という言葉を振りかざし、
いかにも自分らが正しいと
言わんばかりの話しを聞かされると、
少々、うんざりしてしまうのです。
多額のお金をふんだくるような治療は
決していいとは言えないまでも、
お金に余裕のある人は、
そこに希望を見出すことで
心の治癒力が高まり、
ときに起こりうる奇跡が期待できるので、
それはそれでよいのではと思っています。
もっとも
そんな高額の治療に頼ることなく、
「心の治癒力」を高める方法は
たくさんあります。
ですから、
エビデンス、エビデンスと言うだけではなく
心の治癒力を高めるという視点に立った
情報提供も、
もっとしてくれたらいいのにと思いました。
さて、田代先生の話に戻ります。
まず、正しい情報か否かを決めるのは
医者の価値観に由来する問題でもあると
言うのです。
例えば丸山ワクチンをしたいという患者が
主治医にお願いすると、
私のように何ら問題なくOKと言って
紹介状を書く医者もいます。
しかし多くの医者は、
あんなもん効かないと言って
紹介状すら書いてくれません。
丸山ワクチンにかかる経費は
月1万円くらいであり、
安全性にも問題はないので、
患者さんが選択する代替療法としては
適切なもののひとつだと思っています。
それで期待感や希望が持て、
心の治癒力が高まるのであれば、
それだけでも十分だと私は思うのです。
田代先生も、
情報が正しいか否かを見極める力よりも、
その患者さんにとって適切か否かを
判断する目の方が
医者には必要だと言っていました。
私も同感です。
さらに、正しい情報か否かを
判断ができないからと言って、
それをすべて患者さんの責任にするのも
問題だと言っていました。
なぜならば、何百万円もする治療を
インターネットなどで宣伝しているのは
れっきとした医者だからです。
いろいろな医者がいますが、
中には利潤追求に走る
医者がいるのも確かです。
ところが今の日本の医療界には
このような医者を取り取り締まる仕組みが
ないのです。
もちろん、
法律に触れるような行為をすれば
逮捕されますが、
法律に触れさえしなければ、
医者が自由診療でどんな治療をしても
全くかまわないことになっています。
一方、弁護士の場合は違うようです。
すべての人が弁護士会に入り、
問題だと思われる弁護士がいれば訴えられ、
弁護士会がその弁護士を
懲戒処分にすることが可能な仕組みに
なっているようです。
しかし日本の医療の世界では、
そのようなことができる組織がないのです。
ですからこのような金儲けに走る医者を
取り締まることができないため、
何千万円ものお金をつぎ込んでしまう人が
出てきてしまうのです。
そんなことにならないように
明らかに不適切だと思われる医者は
処分できるような仕組みを
医学界でも作るべきだと田代先生は
言っていました。
実際には、
何をもって問題だと言うのか、
どこで線引きをするかは
難しいところがありますが‥
私としては、
一般の医者がもう少し
「心の治癒力」の視点に立った治療を
意識するようになってくれたならば、
金儲けに走る医師に引っかかる患者さんも
もう少し少なくなるのではと
思っているのですが‥