ブログ:対立する思いへの対処法

前回は、人は誰でも自分の中に
相反する感情を持っているものだ、
という話をしました。

今回は、個人だけではなく、
会社や組織においても同じことが
生じているという話です。

部署内における課長と部下との対立や
会社内の開発部と営業部との対立などは、
ごく一般的にある対立です。

当然、医療現場でもスタッフ間の対立は
毎日のように起こっています。

例えば、がん患者さんの治療に対して
医者はがんが小さくなる可能性があるので
抗がん剤をするべきだと考える一方、
ナースは患者さんが嫌がっているので、
抗がん剤はしない方がいいと
思っているような場合です。

個人の中の相矛盾する感情と
組織の中の相矛盾する感情は
基本的には同じ形の対立です。

また、感情と思考も
根底ではつながっているので、
この両者はセットで考えても
よいかと思います。

医療現場における
各々の思いの対立への対処法として
信念対立解明アプローチ」があります。

基本的な考え方は前回お話しした
「パラドックス思考」と同じです。

先ずは、お互いの考え方は
異なるものという事実を認め、
その上で、どうしたら
両立できるストーリーが
作れるのかを検討するというものです。

ここで重要になってくる考え方が
「相対可能性」と「連携可能性」です。

言葉は難しそうですが
言っていることは当たり前のことです。

「相対可能性」とは、
自分が当たり前だと思っていることは、
他人にとっての
当たり前ではないという現実を
自覚しましょうということです。

例えば、私にとっては、
風邪症状などがなければ、
十分な酸素を取り入れるためにも
マスクは外して過ごすというのが
当たり前のことです。

一方、ある人は、
感染の可能性がないわけではないので、
今はまだ屋内外を問わず、
マスクは常にしておいた方がいいと
考えています。

お互い自分の考えの方が
正しいと思っているため、
この価値観の違いが
信念対立を生み出す原因となっています。

だからこそ、
誰が正しいか正しくないかではなく、
先ずは、そのような価値観の相違が
誰にでもあるという事実を
自覚することが重要になってきます。

もう一つの「連帯可能性」というのは、
異なる価値観であったとしても、
その違いを認め合ったうえで、
共通の目標を成し遂げるために
できる範囲で協力していくことは
可能だということです。

このように、
信念対立解明アプローチでは、
「相対可能性」と「連携可能性」という
二つの考え方が前提になっています。

では、実際の現場での対立を
解決するためには
どうしたらよいのでしょうか。

先ずは、お互いの価値観の違いを認識し、
それを受け止めつつ、
現在の状況とめざすべき目標を明確にします。

あとは、その目標を達成するためには
どのような方法があるかを考え、
お互いに連携しながら
やれることをやればよいのです。

最初の例で言えば、
医者は抗がん剤をするべきだと考え、
ナースは患者さんの思いを汲んで
やらない方がいいと思っているのですが、
このように、お互いの価値観が異なるのは
当然だと認識することが前提になります。

その上で、共通の目標を考えるのですが、
この場合は、患者さんにとっての幸せです。

医者は抗がん剤をすることが、
ナースはそれをしないことが
患者さんの幸せだと考えています。

ただし、実際には患者さん自身の心も
揺れていることがしばしばです。

また、医療現場では、
医者の意見に対して
ナースが反対意見を
言いにくい雰囲気があります。

そのためナースも
言いたいことが言えずに、
医者の考えに従わざるをえない場合も
少なくありません。

そうであれば、
とりあえず抗がん剤をすることにして、
その間の患者さんの心のフォローを
しっかりとするというかかわり方は
どうでしょうか。

これであれば、
患者さんの幸せという同じ目的に向かって、
各々ができることをしていることになり
医者とナースの対立も解消されます。

また、抗がん剤治療を始めた結果、
ことのほか副作用がひどく、
患者さんがやめたいという思いが
強くなったとしましょう。

そうなれば、
患者さんがそのことを
言い出しにくかったとしても
今度は患者さんと一緒に、
やめたいという旨を
主治医に伝えるということは
できるのではないでしょうか。

要するに価値観が異なったとしても、
それは当然のことだと受け止めた上で、
共通の目標を明確にし、
今の状況でお互いができることをする、
そんな視点が対立の解決には役立ちます。

皆さんの職場や組織においても
価値観に違いにより対立が起こった場合、
今のような視点で考えてみては
いかがでしょうか。

    ブログ:対立する思いへの対処法” に対して2件のコメントがあります。

    1. ゆか より:

      おはようございます

      今日のブログも楽しく読ませて頂きました。

      最後の「要するに〜」以降がとてもわかりやすく、自分にも取り入れやすく書いて頂いてました。

      私の場合は育児と絡めて物事を見ることが多いです

      親子や夫婦でも、家族の共通目標を共有していれば、お互いは違う人間だと思いながら擦り合わせでいけるように思います。

      逆にお互いの目標がずれていると、言い合いとか対立構造になるかなぁとも思います。

      いつもありがとうございます。

    2. holicommu より:

      ゆかさんへ。いつもありがとうございます。

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