ブログ：心が先か、体が先か

前回は「心の治癒力」と「心の悪化力」は
源を同じくする「無意識の力」
だという話をしまいした。

しかし実際はそう単純な話ではありません。

なぜならば、
そこに身体的レベルや
環境レベルでの関与もあるからです。

例えば、
今日は体調がわるいなあと感じたとき、
ハッピーな気分になる人はまずいません。

このことからもわかるように、
体は明らかに心に影響を及ぼします。

体調が悪いと感じるのは、
腸炎による下痢のせいか、
二日酔いのせいか、
生理前だからかは問いません。

要するに、身体的レベルでの異常が
「なんか調子がわるい」という
感覚を生み出すのです。

これは内受容感覚によるメッセージです。
内受容感覚とは、呼吸、体温、心拍、
痛み、胃腸の動きなどの
生理的な状態に関する感覚のことで、
身体内部の感覚です。

五感（視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚）は
よく知られていますが、
人にはそれ以外の感覚もあり、
そのひとつが内受容感覚です。

このように、
体から心に影響を及ぼすという
ルートもあるのです。

身体レベルの話をもう少しすると、
自律神経系やホルモン系、免疫系が
心の状態と密接なつながりがあることは
以前から知られていました。

これらは、身体レベルでの働きであり、
体の治癒力や自然治癒力の
中心的役割を果たしています。

さらに近年では、
脳腸相関も注目されています。

皆さんもご存じのように
腸は第二の脳と言われ、
脳に次いで二番目に神経細胞が
多く存在している臓器です。

そのため、脳の指令とは別に、
腸が自らの判断を下すこともしています。

例えば、食中毒のときには
下痢や嘔吐を起こしますが、
これは、脳からの指令なしに、
腸の神経細胞が独自の判断で行っています。

また、脳と腸の情報交換は一方通行ではなく
腸からも脳にメッセージを発信しています。

これが脳腸相関という
双方向のネットワークです。

さらに腸には、
全身の免疫細胞の6割が集まっていますし、
幸せホルモンと言われる
「セロトニン」の9割は
腸で作られています。

セロトニンは
イライラを起こしにくくするなど、
人の情緒に関係すると同時に、
腸管のぜん動運動を活発にしたり、
自律神経のバランスを整えたりするといった
体に対する作用もあります。

つまり腸の働きは身体のみならず
心にも大きな影響を与えているのです。

腸においてもっと重要なのは
腸内細菌の存在です。

人の細胞は37兆個あると言われていますが、
腸内細菌の数は100兆個であり、
総重量は1.5kgにもなります。

人の細胞数よりの多くの細菌が
外部から腸内に入り込み、
住み着いているのですが、
この腸内細菌がいなければ
人は生きていけません。

つまり腸内細菌とは
互いに利益を与えあう
共生関係にあるのです。

腸内細菌は食事により
その種類が変わってしまいます。

腸内細菌の種類の変化が、
胃腸疾患をはじめ、
アレルギーや自己免疫疾患、
さらには肥満をも引き起こしている
可能性が指摘されています。

つまり、
食事は腸内細菌の種類を左右し、
体のバランスを保つためにも
重要な役割を果たしているのです。

では、よい食事とは何かと言うと、
一言で言えば、腸内細菌の餌になる
食物繊維の多い食事です。

つまり、腸内細菌を整えるためには、
今度は、心をうまくコントロールし、
食習慣を変える必要が
あるということになります。

そう考えると、心が腸内細菌に
影響を与えているとも言えます。

さらに、環境要因も
これらに影響を及ぼします。

最もシンプルは話をすると
雨の日は気分が湿りがちですが、
晴れた日は気持ちが前向きになります。

実際、晴れの日と雨の日における
株価上昇の割合は、
晴れた日の方が上昇する傾向があり
天候と株価は統計的にも相関があることが
わかっています。

これは、晴れていると投資家は、
リスクをとることをいとわなくなり、
多くの株を買い、
雨の日は気分が落ち込むため、
リスクを敬遠して投資を見合わせたり
売り注文を出してしまうからだと
言われています。

まさに自然環境が
心に影響を及ぼす典型例のひとつです。

また、家にお菓子がたくさんあったり、
近くにコンビニがあるという環境にいると、
不健康な食事をする傾向になることは、
容易に理解できると思います。

このように、心と体の関係は、
心から体への影響といった
一方通行の視点ではなく、
体や環境が心にも影響しており、
それらは相互作用的に
影響を及ぼしあっていると言えます。

結局、心が先か、
体が先かという問題には答えがなく、
両者が循環的、相互作用的に
影響し合っているということになるのです。