ブログ:自分の考えを再考する

最近、また面白い本を読みました。
アダム・グラント著、
THINK AGAIN
~発想を変える、思い込みを手放す」
(三笠書房)です。

ここに書かれているのは、
「考える」ことよりも、
「考え直す」ことの方が
重要だということです。

ところがこれが、
なかなか難しいのです。

当たり前のことですが、
人は誰でも自分が正しいと思っていることが
正しいと思っています。

しかし実際には、
自分の思いや考えは
多くの思い込みにより成り立っています。

また時代や状況、文化によって
その考えは大きく影響を受けます。

ですから自分の正しいと思っていることが
正しいという保証は
実は何もありません。

ところがそれを正しいと
思い込ませてしまうものがあります。
その代表が確証バイアスです。

これは自分にとって都合のよい情報は
積極的に取り入れ、
自分の意に反する情報は
スルーしてしまうという心のクセです。

これにより、
自分の中にある過信サイクルが起動され、
偏った思考を形成していきます。

私たちはどうも、
このような心のクセにより
物事を見る目が曇らされ、
公平な判断が妨げられているのです。

さらにその思い込みを強化しいているのが
ダニング・クルーガー効果です。

これは、
人は、ある特定の分野における能力が
低ければ低いほど、
同分野での自分の能力を
過大評価する傾向にあるというものです。

要するに、
物事をちょっと知った程度の人は、
自分はたくさん知っていると
勘違いするということです。

素人が野球やクラシック音楽に
詳しいと思っていても、
その専門家や研究家からすると
ほとんど知らないも同然です。

にもかかわらず、
本を少々かじったくらいで
得た知識などをもとに
うんちくを垂れるのです。

本当に知っている人や
物事を極めている人は、
その奥深さに驚嘆し、
いかに自分が何も知らないかを
思い知らされ、逆に謙虚になります。

まさに知れば知るほど
わからないことが多いことに気づき、
自分は「何も知らなかった」と感じるのが
「知っている」人の感覚なのです。

しかし、ド素人からワンステップ進み、
アマチュア程度になると、
みんなダニング・クルーガー効果の
罠にはまります。

すると謙虚さを失い、自信過剰となり、
「優越の錯覚」に陥っていることにすら
気づかなくなります。

私も医者になり、
研修医3年くらいになったとき、
それなりの知識と経験があると思い、
なんか、できる気になっていました。

また、心療内科医のときも同じで、
5年くらい経験を積み、
結構自信がついてきた頃が、
まさにこの罠に陥っていたと思います。

今思い返すと恥ずかしいばかりですが、
壁にぶつかり、
再び自分を振り返ることが
できるようになってからは、
多少はましになった気がします。

では、このような確証バイアスや
ダニング・クルーガー効果の罠から抜け出し
正しい判断ができるようになるためには
どうしたらよいのでしょうか。

それには科学者の思考モード、
つまり、謙虚になって
自分の考えに疑いを持ち、
好奇心をもって再考するという
態度が必要になってきます。

また、自分の信念をいったん脇に置き、
客観的な視点に立って、
物事を見つめ直す視点とも言えます。

それにより、
自分の考えに固執することなく、
新たな発見ができるようになるわけです。

たま、自分に自信を持つことも大切ですが、
自信と謙虚さの均衡を
いかに保つかという方がもっと重要です。

なぜならば、
自信はしばしば自信過剰に
つながるからです。

その意味では、
自分を過小評価してしまう、
少々自信のない人というのも
決して悪くはありません。

そのような人には
謙虚さが備わっているので、
自分の意見と相反する見解にも目を向け、
それについて学ぶことができるのです。

この謙虚さが、
確証バイアスの罠から逃れ、
自分の考えを客観的、多角的に
見直すことができる原動力となり、
そこから、よりよいアイデアや見解を
見出す可能性が高くなるのです。

みなさんは確証バイアスや
ダニング・クルーガー効果の罠に
はまっていませんか?

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