前回は、無意識へのアプローチとして
感情や感覚を通しての働きかけについて
お話をさせて頂きました。

今回は、認知や思考、
つまり文字や言葉による
思いへのアプローチについて
お話をさせて頂きます。

私たちは人との会話においては
通常、言葉を使ってコミュニケーションを
とっています。

その際、相手の話を聴きながら、
いろいろなことを考えたりイメージしたり、
ふと過去のことを思い出したり、
突然、よいアイデアがひらめいたりします。

実は、これらすべてが
無意識の働きによるものなのです。

つまり、知らず知らずのうちに
浮かび上がってきてしまう
思いなのです。

例えば、店員がお客さんに
「このサプリを飲むと疲れがとれますよ」
と言うのと、
「このサプリを飲むと疲れが取れると
先ほどの方も言っていました」と言うのでは
相手に与える印象は全く違います。

人は、目の前の相手の言うことよりも、
第三者の人の評価の方が
信じやすい傾向にあります。

「先ほどの方も言っていました」と
付け加えるだけで、
「先ほどの方」がすごく喜んで、
「いや~よかった!」などと言っている光景を
勝手に思い浮かべてしまうのです。

そのため、そのサプリに対して
よりよい印象を持つことになります。

そうなれば、
当然、目の前のお客さんは
そのサプリを買ってくれる可能性が
高くなるというわけです。

このような例は枚挙にいとまがありませんが、
コロナの報道などはその最たるものです。

報道番組では、
事実を客観的で公正に伝えるというよりも、
いかに人々の無意識に働きかけ、
視聴率を稼ぐかということの方が重要です。

人が関心を持つのは、
不安や恐怖をあおるような事実や
希少でインパクトのある事件や事柄です。

逆に、安心感を抱いたり、
よくあることだと思われるようなことには
あまり関心を示しません。

これは、人間に備わっている
無意識の働きのひとつです。

ですから、報道の仕方いかんで
視聴者に与えるインパクトは
大きく変わります。

例えば、日本全国で
168万人もの感染者数を
記録しましたとは言いますが、
すでに160万人は回復しているというような
安心感を与えるような事実は言わないのです。

また、
感染者数は168万人とは言いますが、
「全体の1.3%に達しました」とは
言いません。
これではインパクトが弱すぎるからです。

さらに、
志村けんのような有名人が亡くなれば
大々的に報道されますが、
一般の人が1万人亡くなっても、
当然数字だけしか報道されません。

実際には、コロナで亡くなる人よりも
脳卒中9万人、心筋梗塞4万人の方が
はるかに多いのですが、
そのようなよくある病気による死者数などは
ほとんど報道されることはありません。

このように、ありきたりのことは
たとえ死者数が多かったとしても
与える印象が弱いので
スルーされてしまうのです。

また、報道番組では
どこかの大学の教授や医者などが
よく呼ばれます。

これは「権威」ある人の話は
信用してしまうという
無意識の働きを利用して
説得力を持たせるという典型的な手法です。

このように、数字の見せ方や
どこを切り取って報道するかによって
無意識の反応の仕方は全く異なるのです。

また、無意識が持っているクセを利用し
そこに働きかけるという方法も
しばしば用いられています。

いま述べた数字の見せ方や
「権威」を使う方法は、
まさに私たちの無意識のクセを
うまく利用した方法です。

カウンセリングの場合だと
「同意」というテクニックを使えば、
カウンセラーに対して
この人は信頼できるという思いに
させることは容易にできます。

この場合、
人は自分の思いに同意してくれる人に
安心感や信頼感を持つという
無意識のクセを利用しています。

だからこそカウンセラーは
「そうですよね」
「それは大変ですよね」
「そんなこと言われたらショックですよね」
などといった同意のメッセージを
よく口にするのです。

このように、言語的なかかわりにより、
相手の無意識に働きかけ、
思いに変化をもたらすことは
様々な場面で、
ごく一般的に行われています。

ただ、一般の人は、
知らず知らずのうちに
そう思ってしまうので、
それが無意識への働きかけによるものだとは
思っていないだけなのです。

これが相手の思いに対する
無意識へのアプローチの
すごいところでもあり、
怖いところでもあるのです。