ブログ:心身医学会総会に参加して
先日、久しぶりに
本格的な学会に足を運びました。
行ってきたのは高松で開催された
心身医学会総会です。
コロナの影響で、
どこもかしこも対面での学会は
しばらく行われませんでしたが、
最近はようやく参加者が集まる学会が
開催されるようになりました。
そうは言っても、
オンデマンド方式を取っていたので、
後日視聴することもできるため、
実際に参加する人は
さほど多くはありませんでした。
私自身、
しばらく心身医学から離れているので、
昔と比べどう変わっているのかを
知りたいという思いもあり、
今回は参加させてもらいました。
先ずは、1日目の朝9時から始まる
「重症神経性やせ症患者の入院治療」という
シンポジウムに顔を出すことにしました。
昔と比べ、摂食障害の治療は
変わってきたところがあるのかが
知りたかったのですが、
話を聞く限り、
昔とあまり変わっていないように思いました。
今でも死亡率は5%ほどあり、
5人のうちの1人は自殺で亡くなるという、
かなり治療が困難な病気であることも
昔と変わりありませんでした。
変わってきたことと言えば、
10年以上の病歴がある患者さが
増えてきたということくらいでしょうか。
それはそうと、
会場に入って驚いたのは、
312人の会場に参加者が2人しか
いなかったことです。
その後、何人か入ってきましたが
結局、10人程度でした。
イス席には一つ置きに、
×印の紙が貼られていましたが、
その貼り紙が何ともわびしく感じられました。
二日間でいろいろな講演やシンポジウムに
参加してきましたが、
どこの会場も多くて40人くらいであり、
たいていは10~20人程度と
何とも寂しい学会でした。
一日目の午後は「ニューロサイエンスと
内受容感覚システム」という
少々硬めなテーマのシンポジウムに
参加してきました。
内容は少々難しいのですが、
要するに、心は心だけの働きではなく、
身体からの情報も
大きく関係しているという話です。
その意味では、心を理解するためには
身体感覚というのも重要だということが
よくわかりました。
1日目を終えて感じたのは、
心身医学会が「身体」医学会に
なってきているなあという思いでした。
私が心療内科医であった頃は、
心理療法関連のシンポジウムや発表が
結構あったのですが、
最近は、心の働きをfMRIなどを使って
身体レベルで解明しようとする動きが
盛んなようで、
心理療法そのものは、
下火である印象を受けました。
これも時代の流れでしょうか。
そんな流れの中でも、2日目の午前中は、
とても興味深いテーマの講演がありました。
「肥満症に対する認知行動療法」
「糖尿病診療におけるカウンセリングと
コーチングの活用」
「糖尿病診療における動機づけ面接の役割」
要するに、患者さんの思いが変わるための
具体的な心理的アプローチについての話です。
私が最も興味のある分野です。
これらの話を聞いて感じたのは、
私が実践している
ホリスティックコミュニケーションと
方向性や考え方は
ほとんど一緒だということでした。
つまり、「どうなりたいのか」という目標を定め、
そこに向かって進むための小さな一歩を
本人から引き出し、
それをサポートするというやり方です。
心身症の患者さんの治療よりも
今は生活習慣病の患者さんへの指導に
応用されていることが多いのだなと思いました。
確かに、心身症のように
多種多様な要因が絡んでおり、
一筋縄ではいかない患者さんよりも、
肥満や糖尿病のように、
ある程度パターンが似通っている患者さんの方が
やりやすいという側面はあると思いました。
最後に、岡田尊司先生の
「愛着関連障害と愛着アプローチ」の講演も
聴いてきました。
岡田先生は作家でもあるので、
小説を読んで、その存在を知りました。
今回は、講演内容に興味があるというよりも
実際に本人に会ってみたいという思いから
講演を聴きに行きました。
岡田先生は精神分析がベースにあるので、
幼少時における両親とのかかわり、
つまり愛着形成が十分できるか否かが
その後の人生に大きな影響を
与えるというような考えを持っています。
私はどうも、
そのような考え方が好きではないので、
話には今ひとつ入り込めませんでした。
でも、本人の顔が見られただけでも
よかったです。
私と同じ年だったことも、
ちょっぴり親しみを感じました。
二日間の学会を通して感じたのは、
私の大好きな心理的アプローチは
今は心身症の患者さんよりも
生活習慣病の患者さんに対して
行われることの方が、
多くなってきたんだなということと、
心身医学も身体に傾きつつ
あるんだなということでした。
この数年、
私も生活習慣病の患者さんへのかかわりに
関心を持つようになったので、
もう少しこの分野に深入りしてもいいなと
思った次第です。