ブログ:カウンセリングの中の暗示と誘導

暗示や誘導が
日常の中にごく普通に取り込まれ、
宣伝やコマーシャルなど、
様々な場面で利用されていることについては
前回お話しました。

今回は、
カウンセリングの中で使われている
暗示と誘導についてお話させていただきます。

私が定期的に開催している
ホリスティックコミュニケーション
実践セミナーでは、
悩みや問題を解決するための
アプローチを教えています。

しかし、その際に悩みや問題の原因を
追究するようなことはしません。

何をするかというと
悩みや問題を抱えながらも
「できていること」や
「できそうなこと」に焦点を当て、
それを引きだすような質問を多用します。

その結果、
夫とコミュニケーションが
うまく取れないことを悩んでいながらも、
「孫の話は普通にできる」とか
「主人の好きなプロレスの興行が
近所であることを教えてあげると会話がはずむ」
といった答えを引きだすことができます。

本人のこのような
「できていること」の言語化が
実は暗示になるのです。

なぜならば、
こんなことをしたらうまくいくという
日常における具体的な思いが
無意識レベルに刷り込まれるからです。

その結果、
日常におけるちょっとしたきっかけで、
孫やプロレスの話を持ちだすという行動が
自動的に誘導されることになります。

もちろん本人は、
カウンセリングで言語化したことを
覚えている場合もありますが、
たいていの場合は、
知らず知らずのうちに
そのような話をし始めるのです。

つまり、言語化したことが暗示となり、
夫とのコミュニケーションを促すような行動が
自ずと誘導されたことになります。

このようなことを繰り返すことで、
次第に夫への思いや行動に変化が現れ、
夫とのコミュニケーションも
少しずつ取れるように
なっていくというわけです。

私が心療内科医として
患者さんを診ているときも、
このようなアプローチをしていました。

再診時に、よくなったという患者さんに
なぜよくなったのかをたずねると、
自分でもわからないと言う患者さんが
たくさんいました。

これも今思い返すと、
「できている」を言語化してもらうことが暗示となり、
日常生活に変化をもたらすような行動が
誘導された結果だと理解しています。
しかし患者さんはその事実に気づかないのです。

全く逆のパターンもあります。
例えば、自分にネガティブな暗示をかけてしまい
その通りの行動を誘導してしまうというのが
その典型です。

自分はダメだとか、自分は失敗すると
思っている人は、
常に自分にネガティブな暗示を
かけていることになります。

そうであれば当然、
実際に失敗したり、
うまくいかなかったりする行動が
誘導されてしまうのです。

このように人は、
ポジティブにせよネガティブにせよ、
常に自己暗示をかけ、
その通りの行動を誘導しているのです。

他にもカウンセリングの場面でよく使う
暗示や誘導があります。

スケーリングもそのひとつです。
例えば、悩んでいることに対して
最悪のときが0点で、
最高の状態が100点としたら
今何点の状態ですかとたずねます。

人は0点や100点といった
極端な点数は言いづらく、
どんなに悪い状態でも
たいていの場合は10点くらいの
点数を言ってくれます。

これはある意味、誘導です。
あとは
「どんなところから0点ではなくて
10点はあると思うのですか?」と
たずねたらよいのです。

そうすれば、いやでも
10点分のよいところや
できていることを語ってくれます。

例えば、
「旦那と久しぶりに酒を飲んだ」とか
「姑さんを買い物に連れていたたら喜んだ」
といった具合です。

これらの気づきが
実は暗示効果を発揮し、
知らず知らずのうちに、
状況が改善に向かうような行動を
取ってしまうというわけです。

他にもちょっとした声掛けでも
それが暗示として働きます。

「最近変わってきたよね」
「ずいぶんとうまくなったよね」
といった言葉かけをされたら
誰もが嬉しいものです。

他人に言われると、
自分ではそう思っていなくても、
何となく受け入れることが多く、
それが無意識に影響を与え、
少しずつ人を変えることになります。

このように、
カウンセリングの場面でも
暗示と誘導は大いに利用できますし、
また知らず知らずのうちに
使っている場合もしばしばあります。

コミュニケーションの上手な人や
人を惹きつける魅力を持っている人は、
このような暗示や誘導のテクニックを
ごく自然に使っているものです。

皆さんも、
人付き合いやコミュニケーションに役立つ
暗示や誘導のテクニックを身につけてみませんか。

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