ブログ:謝ってはいけない!?

私はどうも「謝る」ということが苦手です。
病棟でも、ナースから言われていた処方を
出し忘れていたということは時々あります。

小さなミスなどは、誰でもあることなので、
そんなことでいちいち謝らなくてもいいだろうと
自分の都合のよいように考えてしまうのです。

ですから、再度ナースから
処方が出されていないことを指摘されたりすると、
「あっ、そうか」「忘れてた」と言うくらいで、
「ごめん」の一言を付け加えることは
あまりありません。

「ごめん」と言うくらい、
大したことではないのですが、
大したことではないと思うからこそ、
つい省略してしまうところもあります。

その背景には、謝るのが恥ずかしい、
照れるという面もあると思います。

もっとも、患者さんに対しては、
処方すると言っていた薬を
処方し忘れていたことに気づいた場合などは
「申し訳なかった!すみません!」と
普通に謝っています。

この場合は、何ら抵抗はありません。
軽いノリで謝り、それで話はすみます。

ところが、ナースや家族など身近な人ほど、
このように軽く謝るということが
できなくなってしまうのです。

一方で、ナースの中には、
足りなくなった薬を
新たに処方してほしいと私に依頼する際に、
「ごめんなさい」を連発する人がいます。

電話でも必ず最初に「ごめんなさい」と言い、
最後は「ごめんなさい」で締めくくります。

このような場合は「ごめんなさい」と
言う必要は全くないのですが、
依頼すること自体に遠慮があるのか、
自分に自信がないのか、
はたまた、「ごめんなさい」が
口癖になっているのか知りませんが、
これは少々ごめんなさいの安売りが
過ぎると思います。

もっとも医療事故の場合は、
以前は、決して患者さんに
謝罪してはいけないと言われていました。

なぜならば、訴訟や裁判になったとき、
謝っていると、
医療者側がミスを認めた証拠になると
言われていたからです。

しかし最近は違ってきています。
患者さんに重大な問題が生じるミスがあった場合、
先ずは謝りましようというようになりました。

患者さんや家族も、
医療者側の謝罪の言葉を
ひとこと聞くだけで、
それで気持ちがだいぶ収まります。

その結果、訴訟に発展するケースが
かなり少なくなることがわかったからです。

それを一言の謝罪もないと、
なぜ謝らない!と相手の怒りを助長してしまい、
その結果、やらなくていい訴訟までも
やるはめになってしまうのです。

このような場合、謝罪するというのは
あまりにも当然のことなのですが、
医療の世界では、
謝罪はしないというのが常識でした。

私も、明らかにこちらのミスで
相手を大きく傷つけたと感じた場合は
ちゃんと謝ります。

以前、心療内科医をしているとき
患者さんに対する個人的な説明を
他の患者さんがいる談話室で
してしまったことがありました。

その患者さんは、
少々訳ありの怖めの人でした。

病室に行ってもほとんどおらず、
また、治療に対しても非協力的だったので、
談話室でその姿を見つけたときに、
ついそこで、治療に関する個人的な話を
あれこれ言ってしまったのです。

その後、その患者さんに
「あれは明らかに守秘義務違反だよな」と言われ、
「それ相応のことをしてくれないと、
ちょっとまずいことになるかもよ」と、
やや脅され気味に言われました。

他の患者さんのいるところで
個人情報に関することを言ってしまったので、
これは明らかに守秘義務違反です。

ですから、
ここは自分が謝罪するのが当然だと思い、
後日、謝罪文をしたためた封筒を持って
その患者さんのところに行って
お詫びをしました。

すると、とてもご機嫌になり
「いいんだそんなことは」と言って
握手をしてくれたのです。

彼の機嫌がよくなったことには驚きましたが、
後日、お歳暮が届いたのには
もっとびっくりしました。

この患者さんの場合も、
下手をすると
訴えられていた可能性がありますが、
私が自分の非を認め、
ちゃんと謝罪したことで、
かえってこちらに好感を持ってくれ、
信頼関係を築くことができたのでは思いました。

緩和ケア医になってからも、
私の誤解により、
ナースを傷つけてしまったことがありました。

カルテに主治医(私)を
責めるような記載が書いてあり、
それを読んだ私は憤慨しまいた。

ですから、そのナースの記載に対する反論を
私も名指しでカルテに記載したのですが、
実は、そのカルテを書いたのが
そのナースではなかったことが
あとで判明しました。

この事件があってから、そのナースは
私を無視するようになっていたのですが、
私が自分の誤解に気づき、
これは申し訳ないことをしたと思い、
そのナースに謝罪しました。

それからはまた普通に話をするようになり、
このナースとは今まで以上に
仲良くなりました。
これも謝罪の効用というものでしょうか。

今後も、明らかに私のミスで
相手を傷つけてしまったような場合は
しっかりと謝罪はすると思います。

でも、日常的な小さなミスに対しては
いちいち謝るのには少々抵抗があります。

まあ、軽い気持ちで
「おっと、ごめん、ごめん」くらいは
言ってもいいと思いますので、
これを機に少し実行…
いやいや、もう少し熟慮というか、
思案をつみ重ねたいというか…
ということで、長くなりすぎたので
この辺で終わりにしたいと思います。

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