先日、書店でブルーバックスの本を見ていたら
「認知バイアス」(鈴木宏昭著)
という本が目にとまり、
思わず買ってしまいました。

この本は、私たちが持っている
様々な、間違った思い込みについて、
なぜそのような事が起こるのかという
その背景も含めて書いてあったので、
とても面白かったです。

例えば、第2章の
「リスク認知に潜むバイアス」には
以下のようかことが書いてありました。

よく「犬が人を噛んでもニュースにならないが、
人が犬を噛んだらニュースになる」と言われます。

人は、よくあることは、またかと思い、
あまり興味を示しませんが、
稀なことや珍しいことがあると、
そんなこともあるんだと興味を持ちます。

また、同じことを
くり返し見たり聞いたりしていると、
それが記憶に定着し、
何かのおりにすぐさま思い出すことが
できるようになります。

さらに、すぐさま思い出せるということは、
数や発生頻度も多いと
知らず知らずのうちに思ってしまいます。

このような思考のクセが、
日常におけるわれわれの判断を
大きく誤らせるもとになっています。

例えば、アメリカにおいて、
2002年以降の10年間のデータを元に、
1年間で何が原因で人が亡くなったのかを
調べたデータがあります。

これによるとイスラム過激派による殺害は
芝刈り機による死亡の5分の1であり、
ベッドからの転落による死亡の
70分の1でした。

ところが私たちは、
芝刈り機やベッドからの転落による事故よりも
イスラム過激派による殺害の方が、
死者数が多いような印象を受けるのは
なぜでしょうか。

それはテレビやマスコミの報道に
大きく操作されている側面があります。

マスコミは珍しいことや
目立つ事件や事故は取り上げ、
ごく普通に起こるようなことは
いちいちニュースにはしません。

ですからイスラム過激派により
アメリカ人が殺害されたという
インパクトのあるニュースは当然取り上げ、
またこれを頻回に流します。

一方で、芝刈り機による事故や
ベッドから落ちて亡くなったという事故は、
インパクトもなく、
また日常で十分にあり得ることなので、
あまり興味を引きません。
ですから、当然ニュースにもなりません。

すると、頻回に報道される
イスラム過激派による殺害の方が
死者数が少ないにもかかわらず、
芝刈り機による事故死やベッドから転落死よりも
多くの人が亡くなっているような錯覚を
してしまうのです。

この事実は、日本でこの1年間に、
新型コロナウイルスによって
亡くなった人の数は知っていても、
交通事故やがんによる死亡者数が
何人いたのかについては
ほとんどの人が知らないという事実からも
わかります。
(交通事故は3千人、がんは37万人です)

このように実際の数とは別に、
珍しかったり衝撃的だったりする事件や事故は
ニュースで頻回に取り上げられますが、
がんのように、毎日千人以上の人が
亡くなるような、そんな日常的なことは
ニュースで取り上げられることは
まずありません。

その結果、頻回にニュースになることの方が、
あまりニュースにならないことよいも
頻度が多いような錯覚をしてしまうのです。

これはリスクに対する判断を
誤らせることにもなります。

例えば、心筋梗塞で亡くなる人は
毎年3万5,000人ほどいますが、
特に、冬場の風呂上がりなど、
急激な温度の変化で起こしやすくなります。

明らかにコロナで亡くなる人よりも、
心筋梗塞で死ぬ人の方が多いにもかかわらず、
3密への注意はくり返し言われても、
風呂上がりの温度変化への注意の喚起は
ほとんどされることはありません。

このような報道の回数の違いにより、
われわれはリスク頻度の推定を誤ってしまい、
その結果、心筋梗塞のリスクを
高めることになるのです。

こうした過ちを少しでも減らすためにも、
先ずは、このよう思考のクセが
私たちにはあるということを
知っておくことが大切なのです。