先週の12月20日(日)に京都で
第2回コミュニケーション医学研究会を開催、
「腰痛学校」を主宰する伊藤かよこさんと
私が講演をしました。

私の講演テーマは
「コミュニケーション医学の実際と可能性」です。

先月も東京のシンポジウムで
コミュニケーション医学の話をしているので、
内容が重ならないようにと考え、今回は
「心理療法の改善における共通要因」を題材に
話をすることにしました。

コミュニケーション医学における3本柱は
心の治癒力、自然治癒力、治療的自己ですが、
その最も中心的役割を果たしているのが
心の治癒力です。

そして、医療現場において、
いかにして患者さんの悩みや問題に対応し、
希望や可能性を見出してもらえるような
かかわりができるかが、
コミュニケーション医学の
中心テーマになります。

その具体的な方法のヒントが、
すべての心理療法で見られる
改善に関わる共通要因なのです。

詳細は省きますが、
たとえば、治療者要因や信頼関係要因、
治療の一般的要因(説明、期待感、儀式など)
などがそれです。

つまり、どんな心理療法であれ、
患者さんやクライエントが、
「この先生はいいかも」と思うような
そんな要素を持っている治療者による治療は
成績がいいのです。

また、今の治療者要因と
重なるところがありますが、
患者さんと治療者との関係性がよければ
治療効果も上がるのです。

さらには、
患者さんの治療に対する期待感や希望、
治療者の説明による安心感や納得感といった
治療の一般的効果も当然、
症状の改善に関係します。

これらはすべて、
患者さんの「心の治癒力」を引きだし、
その結果として
症状の改善が見られるということです。

ですから、コミュニケーション医学では
いかにこれらの要因を高めることができるかが、
とても大切になってきます。

そこで今回は、
これらの要因をより高めるためには
どうしたらよいのかを中心に
話をすることにしました。

まずは、患者さんが何を悩んでいるのか、
さらには、どうなりたいのかという
目指すべきゴールや方向性を
明確にする必要があります。

そうしないと、せっかくの時間も、
患者さんの望む話とは別のところで
話が進んでしまうことになってしまうからです。

話のゴールや方向性を明確にするために、
「どうなったらいいと思いますか」という質問は
必要不可欠です。

さらに、患者さんによっては
説明や介入、提案をすることも必要になります。

その際に注意することがあります。
それは「正しい説明という暴力」に
なっていないかということです。

治療者は往々にして、
医学的に正しいと
思われていることを言いますが、
それが必ずしも患者さんの思いに
沿っているとは限らないのです。

にもかかわらず、
「正しさ」を振りかざし、
それを患者さんに押し付けようとすることが
医療の世界ではしばしばあります。

以前、未婚の女性が子宮がんになり、
医者に手術が必要と言われました。

彼女が「子供は産めますか?」とたずねると、
「子供と自分の命とどちらが大切なんですか!」
と怒られてしまいました。

以来、彼女は病院には行かなくなり、
結局、最後はうちの病院で亡くなりました。

子宮がんの患者さんが手術を受けるのは
医学的には「正しい」ことです。
しかし、それが必ずしも患者さんの
意向にあうとは限らないのです。

説明の仕方いかんでは手術を受け入れ、
今でも元気でいられたかもしれません。

それにもかかわらず、
患者さんの思いを無視して、
「手術の必要性」を押し付けるのは、
「正しい説明という暴力」以外の
何ものでもないのです。

ですから、説明や提案をする際には、
あくまでも患者さんの
意向や価値観を大切にしつつ、
医療者側とのギャップがあった場合には、
お互いが納得のいく落としどころを
見つけることが大切になってくるのです。

また、ときにモンスターペイシェントと
言われる人と、
かかわらざるを得ないこともあります。

その際に大切になるのが、
悪循環を切り、
良循環を作るための工夫です。

結果として
「思い込み」や「行動」が変わるような
何かしらの介入ができればよいのですが、
その方法や考え方は一人一人異なります。

講演では、何人かの患者さんの例を
お話ししながら説明したのですが、
ここでは長くなりすぎるので
省略させて頂きます。

最後に言語的コミュニケーション以外の
治療的効果についても話をしました。

例えば、治療者の知識や信念、
肩書や資格、知名度なども、
患者さんの無意識に影響を及ぼし、
「心の治癒力」を引きだすことに
大いに役立っています。

また、「儀式」にも
「心の治癒力」を引きだす
大切な役割があります。

例えば点滴です。
西洋医学では
点滴は病気を治すためのひとつの手段であり
「治療行為」です。

もちろんそういう側面もありますが、
コミュニケーション医学の視点からすると、
点滴は「心の治癒力」を引きだすための
ひとつの「道具」であり「儀式」という
見方もできます。

患者さんは点滴をしてもらうことにより、
安心し、これでよくなるという期待感を
自ずと持ちます。

つまり安心感や期待感という
「心の治癒力」を引きだすための
「道具」であると同時に
そんな思いを引きだす「儀式」が
「点滴をする」という行為なのです。

こんなかんじて1時間以上にわたり
いろいろな話をさせていただきました。

実際の講演は後日視聴もできるので、
興味のある方はそちらをご覧ください。
(伊藤かなこさんの講演や質疑応答も聴けます)
→第二回コミュニケーション医学研究会

それでは今年も一年間
本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。