ブログ:無料の魔力

無料というのは、
人の判断力を誤らせる
不思議な力を持っています。

それに関する面白い話が
前にも紹介したダン・アリエリー著
「予想どおりに不合理」(早川書房)に
のっているので紹介させて頂きます。

公共の建物の中でテーブルを出し、
そこによく名前の知られた
高級チョコ(リンツのトリュフ)と
普通のチョコ(ハーシーのキス)を置き、
「お一人様、ひとつまで」という貼り紙と
その値段を書いたものを用意しました。

高級チョコは1個15セント(15円)、
普通のチョコは1個1セント(1円)に
値段を設定したところ、
客の73%は高級チョコを買い、
23%は普通のチョコを買いました。

私はチョコレートが嫌いなので食べませんが、
もし食べるとしたら、
やはり高級チョコを選ぶと思います。
だって、15円ですもん。

次に、高級チョコを14セント、
普通のチョコは無料と設定したところ、
1セントのときは23%だったのに、
それが無料になると、
なんと69%が普通のチョコの方を選んだのです。

一方、高級チョコの方は
15セントが14セントになっただけなのに、
これを買った人は、
73%から31%にまで
少なくなってしまいました。

お互い1セントずつ安くしただけなのに、
無料になった瞬間、
いきなり見る目が変わってしまうのです!

なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
著者は、私たちは「失うこと」への
本能的な恐れを持っているからではと
考えています。

当然、無料だと失うものがないので、
人はそちらに目が向くと言うのです。

それもあるでしょうが、
私はタダでもらえることのお得感が、
私たちの判断を変えさせてしまうのではと
思いました。

人間は欲望のかたまりです。
タダと聞くと、すぐさまそこに惹かれてしまい、
14セントで高級チョコが食べられるというのに、
その賢明と思われる判断を
覆してしまう力があるのです。

無料と聞くと、
人は正しい判断ができなくなるというのは
以下のような簡単な実験からもわかります。

皆さん、次の1と2のどちらを選ぶか、
瞬時に答えてみてください。

1、無料で1,000円分の
アマゾンのギフト券がもらえる
2、700円出せば、2,000円分の
アマゾンギフト券がもらえる

いかがだったでしょうか。
アマゾンを利用する人であれば、
当然、2の方が得なことは一目瞭然ですが、
なぜか、無料という言葉に惹かれ、
1を選んだ人も少なからず
いるのではないでしょうか。

このように、無料という言葉には
人の判断を惑わす魔力があるのです。

ではもう一つの無料の魔力を
紹介しましょう。

大学の学生センターの中に
お菓子売り場を設置、
そこにキャラメル1個を
1セント(1円)か無料か、
どちらかの貼り紙をし、
そのときの学生が訪れた人数と、
その際に買う、もしくは持っていった
キャラメルの個数を調べました。

すると1セントのときは
1時間に58人の学生が立ち寄り
キャラメルを買っていったのに対し、
無料の場合は207人が立ち寄り、
キャラメルを持て行きました。

つまり無料の方が1セントのときよりも
3倍以上の学生が立ち寄り、
キャラメルを持って行ったことになります。

これは十分に理解できます。
では、その際、各々が買う、
もしくは持っていったキャラメルの数は、
どちらの方が多かったでしょうか。

これを調べてみると、
1セントのときは一人平均3.5個のキャラメルを
買っていましたが、
無料のときは、平均1.1個しか
持っていきませんでした。

無料の場合は3倍以上の人数が
立ち寄ったにもかかわらず、
実際に持っていったキャラメルの数は
3分の1以下だったのです。

なぜこのようなことが起こったのかは
想像に難くありません。

無料の場合、
いくつでも持っていくことができるのですが、
他者のことも気にかけるようになり、
自分の利己心の追求に抑制がかかるのです。

通常の人は公の場では、
利己主義的な気持ちをコントロールするのです。

さらに面白い実験があります。
今度は、あるビジネス街に露店を設置し、
「お金を無料で差し上げます」という
大きな貼り紙を掲げます。
ただし、お一人様一つだけです。

お金の種類は、その時々により
1ドル(約100円)、5ドル、10ドル、
20ドル、50ドルと異なりますが、
毎回、そのお金をテーブルに積み、
自由に取っていけるようにします。

すると、1ドルのときは、
通りがかった人の1%しか
実際に持っていった人がおらず、
金額が多くなるにつれ、その数は増えましたが
50ドルでも19%の人が、
持っていったに過ぎませんでした。
タダで50ドル(約5千円)が
もらえるにもかかわらずです。

多分、お金をただでくれるなんておかしい、
何か裏があるに違いないと警戒し、
敢えてお金をもっていかなかったということは
考えられます。

こうした公の場で、
タダでお金がもらえるとなると、
何かあるのではないかと、
どうしても疑心暗鬼になってしまうのです。

状況にもよりますが、
いずれも「無料」には、
人の判断や思いを変えてしまう魔力が
あることは間違いないようです。

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