皆さんも、
しないといけないことがあると思いながらも、
まあいいか、と思って
つい先延ばししてしまうことは
よくあると思います。

もちろん私も毎日のようにあります。
それなりに時間や労力がかかる仕事は、
そろそろ取りかからないとと思いつつも
ぎりぎりまで手がつきません。

思い返してみれば試験勉強などは、
まさに先延ばしの連続でした。

いつも、これ以上やらないとヤバいと
思ったときからやり始め、
毎回のように、もう少し早くから
余裕をもってやっていればよかったなあと
思うのが常でした。

もちろん、その時はそう思うのですが、
結局、余裕をもって取り組むことなど、
一度もありませんでした。

でも、これも実は自然なことなのです。
多くの人は同じような行動を取るのです。

それを裏付ける研究もたくさんありますが、
ダン・アリエリーらの行った研究が、
彼の書いた「予想どおりの不合理」(早川書房)に
載っていたので紹介させて頂きます。

それは、学生に12週間の学期中に、
3本のレポートを提出させ、
それをもって成績を決めると言った場合、
締め切り期限をどのように決めたときが
最も成績が良かったかを調べた研究です。

先ずは三つのグループに分けます。
ひとつは、3本のレポートの期限を
学生に自主的に決められるグループです。

ですから、自分なりに考えて
各々のレポートの期限を決めてもいいし、
3本とも学期末を期限にしても構いません。

二番目は、学期中は何の締め切りもなく、
最後の講義までにレポートを提出すれば
よいとしたグループです。
このグループが最も自由度が高いと言えます。

三番目は、各々のレポートの締め切りを
第4週、第8週、第12週に
提出するように指示されたグループです。
当然、このグループの学生には
期限を決める自由はありません。

期限の決まっているレポートに関しては、
早く出しても成績には関係ありませんが、
提出が遅れたレポートに関しては、
1日遅れるごとに成績の1%を下げるという
ペナルティが科せられます。

さて、この中でどのグループの成績が
一番よかったでしょうか。

成績が一番よかったのは、
レポートの期限を強制的に決められた
三番目のグループでした。

一方で、学期末までに出せばよいとだけ言われた
一番自由度が高いグループが最も成績が悪く、
自分で締め切りを勝手に決めることができた
最初のグループはその中間でした。

このことから、
ほとんどの人(この場合は学生ですが)は、
自由度が高くなると、
やるべきことを先延ばしにしてしまい、
期限が近づいてくると
慌てて取り組むというパターンがあることが
わかります。

締め切りが学期末とされたグループが
一番成績が悪かったのは、
当然、直前まで何もせず、
期限が迫ってくると焦り始め、
3本のレポートを慌てて一気に
仕上げようとするので、
どうしてもお粗末なレポートしか
書けないからです。

一方、他の二つのグループは、
はっきりと期限が決まっているので、
1本のレポートをそれぞれ、
期限までに書き上げなければならず、
そのため嫌でもレポートを完成させるために
期限までに取り組むことになります。

このことからわかるように、
やるべきことのがそれなりに多い場合は、
ある程度区切り、
各々についての期限を決めた方が、
確実に、かつ質の高い仕事ができるのです。

先日のシンポジウムの
「コミュニケーション医学の挑戦」の講演も
本格的に準備を始めたのは5日前からでした。

当然、期限は明確でしたが、
準備をしなくてはと思いながらも、
その一方で、何とかなるという思いもあり、
直前までなかなか手が付けられませんでした。

ただ、試験勉強と同じで、
ヤバいと思い始めたら
いきなりスイッチが入り、
集中力が高まるため
一気に仕事ははかどります。

そのためスライドの作成も含め、
2日前までには八割方、
前日には九割はできました。

前日はちょっと余裕もできたので、
午後は大阪まで
コンサートを聴きに出かけたくらいです。

あとは当日の朝、
新幹線での移動時間があるので、
そこで最終仕上げをすれば
よいと思っていたのですが、
当日の朝、もう一度全体を見返してみると
全く話が面白くなく、
かつインパクトもないことに気づきました。

これにはちょっと焦りました。
もう一度、原点にもどり、
自分が一番訴えたいのは何なのか、
どこを強調すべきかといったことを自問自答し、
結局、スライド枚数を大幅に削減し、
一部、スライドを手直しし、
最後の言葉を新たに付け加えることにしまいた。

でも今思うと、当日の新幹線の中での作業が
一番集中力が高く、アイデアも浮かび、
仕事もはかどった気がしました。

要するに人は、
ある程度の題材や知識がある場合は、
それをどのようにして
仕上げるかということについては
かなり時間が差し迫っている状況の方が
効率的に、かつ内容的にも
よいものができるのです。

逆に言うと、
切羽詰まっている状況ではないと
余裕があるといつでもできると思っているので、
そこまで集中力が高まりません。

火事場の馬鹿力ではありませんが、
人は追い詰められると、
とてつもなく集中力が高まり、
よい仕事ができるという側面もあるものです。

そういう意味では、
敢えてギリギリまで何もせず、
そこから一気に仕事に取り組むというのも
悪いわけではありません。

これを「生産的先延ばし」といい、
私は、この方が得意です。

皆さんも、生産的先延ばしで、
物事に取り組んでみてはいかがでしょうか。
ただし、それによって仕事が終わらなかったとしても
私としては一切の責任を負いかねます。