先週から思い(認知)、感情、行動、
環境、時間との関係について
お話をさせて頂いています。

今回はその最終回として、
これらのつながりについて、
私なりの考え方をお話することで
このシリーズのまとめとしたいと思います。

悩みや問題を解決する考え方には
いろいろありますが、
通常は原因志向、
つまり問題の原因を見つけ、
それを取り除くことで
問題を解決するという考え方が一般的です。

原因志向によるアプローチは、
パソコンの不具合のように、
原因が特定でき、それを取り除いたり
交換したりできる場合には有用です。

しかし人間関係の問題や
ちょっとしたことでクヨクヨしてしまうといった
考え方や感情が関与する問題には不向きです。

なぜならば、その問題には
たくさんの要因が関与しており、
原因など特定できない場合が
ほとんどだからです。

さらに、たとえ原因や主要要因が特定できても、
それが考え方や性格、態度であった場合、
パソコンの故障した部品を交換するように
それらをよいものに
変えるというわけにはいきません。

過去にはもう拘らないようにするとか、
ネガティブ思考をポジティブ思考に変えるなど、
理屈ではいくらでも言えますが、
実際にそれを実行するのは
よほどのことがない限り不可能です。

ですから、心や考え方が関わる問題には
原因志向的アプローチだけで対応するのは
甚だ困難なのです。

そうは言っても、
心や感情が絡む問題の場合、
自分の考え方を変えるか、
何かしらの理由で考え方が変わるかしない限り、
問題は解決へと動き出しません。

その際に、一般的に行われているのが
説得や話し合いなどにより
考え方を変えるという方法です。

組織の中で意見が対立する場合などは、
自分の意にそぐわないことでも、
上司命令などでやらざるを得ないことも
あるかかもしれません。

もう少しスマートなやり方としては
対立した価値観の共通項を見つけ出し、
それに基づきお互いが自分の立場で
できることを探していくという方法を
採用している組織もあります。

ただし、これらはそのような
「環境」があるからこそできることであり、
自分一人で考え方や価値観を変えるのは
なかなかできるものではありません。

つまり、問題の解決には
考え方(認知)を変えることが
ポイントになりますが、
それを一人で直接変えようとすると、
どうしても堂々巡りになってしまい、
そう簡単には変えられないのです。

ここで大切になってくるのが「行動」です。
なぜならば人は様々な経験や体験により
ものの見方や考え方が変わっていくからです。

大きな失敗をすれば、
嫌でも自分の考え方を見直さざるをえません。
逆に、たまたまうまくいったことがあれば、
「こう考えればできるんだ」と、
今までとは異なる新たな考え方を
取り入れることになります。

このように人は、いろいろな経験を通して、
ものの見方や考え方が
少しずつ変わっていくのであり、
それが人間的成長にもつながっているのです。

何かしらの行動をすれば、
どこかで何らかの「気づき」があるはずです。
それが、自分の考え方が変わる
きっかけになるのです。

もっとも、小さな気づきはたくさんありますが、
その多くはすぐに脳裏から消え去ります。
でも、それでよいのです。

気づいたことや自分で体験したことは、
いったんは無意識の貯蔵庫にしまわれますが、
その後必要に応じて取り出され、
様々な場面で活用されるからです。

これらの作業のほとんどは
自分が意識することなしに行われています。

ですから、
特に自分を変えようと意識しなくても、
以前と比べると
何か変わった気がするというのは、
無意識に蓄えられた知識や経験を
知らず知らずのうちに活用し、
新たな経験を積み上げていった結果なのです。

考え方が変われば、
自ずと心も穏やかになります。
つまり「感情」にも変化が現れます。

以前ほど怒らなくなったとか、
あまりイライラしなくなったというのは、
自分の考え方や価値観が変わってきた証拠です。

ただし、信念に近いような思い込みや
強烈な感情を伴う体験をした場合、
そこで形成された思いは、
その後たくさんの経験をしたとしても
そう簡単には変わりません。

それらは自分の考え方だけではなく、
自分の置かれた環境や、
持って生まれた性格などが関与するため、
そのような強い思いが形成されてしまうと、
ある意味、自分では
どうすることもできない部分でもあるのです。

だからと言ってあきらめる必要はありません。
自分なりに多くのことを学び、
得意分野で力や持ち味を発揮し、
そこで積み上げられた
数々のポジティブな経験としての「行動」が
相対的にネガティブな思いを
小さくしてくれる可能性があるからです。

あとは「時間」も重要です。
長年の歳月と、
様々な経験の積み重ねにより、
頑なな思いも次第に緩み、
あるちょっとした「きっかけ」で、
一気に融解することもあります。

何事も諸行無常であり、
変わらないものなどないのです。
自分の考え方も不変ではありません。

ですから、すぐには変わらなくても、
いつかは来るであろう「変わる」ときを
待てばよいのです。

無駄にもがいて
自分を変えようとするのではなく、
自然の流れに任せ、
「時間」と「きっかけ」が
自分を変えてくれるのを待つ、
そんな思いも大切だと私は思っています。