ブログ:「心の治癒力」物語①~自然治癒力じゃない!!

私は学生時代から、
心と身体はつながっており(心身相関)、
病気や症状を治す根本の力は
自然治癒力だという考えを持っていました。

40年経った今でも、
基本的にはその考え方は
変わっていないのですが、
そこに「心の治癒力」という視点を入れたことで、
治療に対する考え方が変わり
物事を見る目も大きく広がりました。

今回はシリーズとして、
「心の治癒力」の誕生から、
その展開や発展、応用について、
しばらくの間、書きたいと思います。

何回シリーズになるかは未定ですが、
お付き合いいただけたら幸いです。

私は医者として3年の研修を終えた後、
心療内科医の道に進みました。

心療内科を始めた当初から、
心へのアプローチに関心のあった私は
患者さんの治療の中心を
コミュニケーションや心理療法に
置いていました。

私のところには、
不安やうつの患者さんも来ましたが、
それに勝るとも劣らず、
ストレスが原因で痛みやめまい、
吐き気といった身体症状を呈し、
それで悩んでいる患者さんも
たくさん来ました。

そのような身体症状をもった患者さんでも
心へのアプローチにより、
ストレスや悩みが軽減すると、
それに伴い身体症状も改善してくるのです。

ここには心身相関の考え方がベースにあります。
つまり心と身体はつながっているので、
ストレスなどで心の状態がネガティブになれば
身体のバランスも崩れるため、
様々な病気や症状が現れてきます。

逆に、心の状態がポジティブなになれば、
身体のバランスも回復してくるため、
自ずと病気や症状も改善してくるというわけです。

この時の、病気を治したり、
身体のバランスを回復させたりする力が、
自然治癒力と呼ばれている力です。

自然治癒力を西洋医学的に表現するならば、
免疫系やホルモン系、自律神経系などが、
相互に作用し合いながら、
体全体のバランスを取ったり、
調整したりする働きであり、
身体が持っている治癒力、回復力のことです。

当初はさほど、気にしていませんでしたが、
そのうち段々と、
この自然治癒力という言葉に違和感を
持つようになってきまいた。

それは、自然治癒力という言葉は
身体寄りの概念であり、
本当の治癒力の姿を
言い表してはいないのではと
思い始めたからです。

自然治癒力の例として
よく引き合いに出されるのが、
ちょっとしたけがや軽い風邪などは
勝手によくなってしまうという事実です。

新型コロナウイルスによる感染でも
ほとんどの人は良くなっていますが、
その原動力となっている力が
まさに自然治癒力です。

このことからもわかるように
自然治癒力という言葉は、
あくまでも身体中心の概念であり、
そこには心の視点が全く加味されていないのです。

確かに風邪やけがのような
一時的なものであれば、
自然治癒力だけで十分に改善します。

しかし、心療内科に来る患者さんは、
慢性的なストレスにさらされ、体調を崩し、
その結果、なかなかよくならない身体症状を
ずっと抱えることになります。

つまり、自然治癒力が
病気を治すと言うものの、
風邪やけがが、
放っておいても自然と治るのとは
わけが違うのです。 

自然治癒力が本来の力を発揮し、
ストレス絡みの病気や症状を
改善させるためには、
ストレスによるネガティブな心の状態を
緩めたり外したりすることが必要不可欠です。

つまり、このような場合は、
心と身体をセットにして
自然治癒力を考える必要があるということです。

そのため、私は自然治癒力という言葉は
身体が持っている治癒力を
言い表すときにだけに使い、
心と身体をセットにして治癒力を考える場合には、
自己治癒力という言葉を使うようになりました。

自己治癒力という言葉には、
自分の力、つまり自分の心と身体の両者の力で
病気を治すという意味合いがあります。

そのため、こちらの方が治癒力の本質を
言い表していると思うのです。
(続く)

    ブログ:「心の治癒力」物語①~自然治癒力じゃない!!” に対して1件のコメントがあります。

    1. 高橋一浩 より:

      おはようございます。いつもありがとうございます。ちょっと知ったかぶりさせてください。西洋医学的にはシステム論です。東洋医学的にも、心身相関でいう心と身体というのは気と血(水)で、心も身体もシステムだと自分は思います。 Input→ブラックボックス→Outputといった生体反応をみていますよね。
      システムは外界とコミュニケーション(物質的にも非物質的にも)をしています(開放系散逸構造)。システムには、システムを維持しようという力があります。それは歪みを生じても元に戻ろうとするしなやかな力(レジリエンス)とか、堅牢性(robustness)とも表現されます。
      先生のおっしゃる違和感というのも分かる気がします。(コロナ禍で、いろいろ考えるモードに入っているみたいです。すみません)

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